満ち足りたわたしの空洞

        


 

 わたしには空洞がある。わたしの中は空っぽだ。空っぽの中に感情が ふわふわと飛び交っている。怒りはとげの形をして内部を引っ掻くし、 悲しみは内部をかびさせる。外界が、影響して、わたしの中身は振動する。空洞があるから、大きな音が鳴る。音に怯えて、平静を保てないことが良くある。

 わたしの空洞の名前は、「自閉症スペクトラム」だ。わたしの空洞の中には、もっと良いものも含まれている。例えば、世界への探究心や、勉強熱心さ、文章を書きたいと思う気持ち、さみしさを愛好する気持ち、など。喜びも悲しさも、人と接したいと願う気持ちも、全部、この空洞の中にはある。  でも、ここではわかりやすいように、わたしの空洞を、自閉症スペク トラムと名付けよう。わたしは、社会生活を送るのに支障がある障害を持っている。  感覚過敏や、世の中の仕組みを理解できないこと、人と接するとき、相手の気持ちを表情を読んで理解することが難しいこと、冗談を本気としか受け取れないこと、言葉を言葉通りにとってしまうこと、などがある。

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