EV三輪車の試乗:電気系統編

つい先日(2021年10月27日)、「EV BOSCO」という名前の側車付軽二輪に分類されるEV三輪車に乗ってきた。日本ではすっかりマイナーな乗り物になってしまった側車付軽二輪に分類される三輪車は高速道路を走ることができるほか、後部座席があれば人を乗せて走ることもできる上に、車検も車庫証明も不要という、超・便利な乗り物である。
どのような経緯で私がEV三輪車を買おうと決めたのかは、私の書いた最初の記事を読めばご理解いただけると思う。今回は、私が購入するEV三輪車の試乗とオーダーをするために販売元の「ガレージ・ボスコ」の担当者さんとやりとりした内容の中から、電気系統に関する話を書く。

そもそもEV三輪車って走れるの?

今回の記事の最初からEV BOSCOの話をしても良いのだが、先に「そもそもEV三輪車って走れるの?」という話をしたい。というのも、どうもEV三輪車というとピザ屋のバイクだったりサポカーだったりと、側車付軽二輪ではない乗り物を連想されてしまうので。

前振りに書いた通り、側車付軽二輪は高速道路や自動車専用レーンを走行できる。高速道路における側車付軽二輪の最高速度は80km/hに制限されている。
私はEV三輪車を購入するにあたり、全部で10車種ほど側車付軽二輪としてのEV三輪車を調べた。その結果、一般的なEV三輪車の最高速度は50km/h程度である。中には40
km/hという車種もいくつか存在する。
ちょっとイメージしてもらいたいのだが、もし高速道路に時速40km/h程度で走る車がいたら、どうだろうか。ものすごくヒンシュクを買うこと間違いないだろう。追突など事故の原因にだってなりうる。いくら法律的に高速道路を走ることができるからと言って、そんなスピードの出ない車で高速道路は乗るべきではない。交通量の多い国道だって、走ってもらっては困る。

では私の購入するBOSCOはどうかと言うと、最高速度は60km/hということになっている。スピードメーターは80km/hオーバーまで刻まれている(まぁ、これは平坦な道ではなく下り坂を走る時のためだろう)。
参考までに、「BOSCO」「芦屋」「坂」と検索すると、芦屋の坂道をBOSCOで登ってゆく動画を見つけられる。運転手の他に撮影のためのスタッフが乗った状態で、坂道を60km/hでスムーズに走っているのがわかる。

どのEVも電気系統は悩みどころ

あえてどこのメーカーの何という車種かは伏せておくが、本当にスペック表というものは、きちんと読み込む必要がある。
例えば、軽トラの荷台にに乗せられるコンパクトなオフロードEV車(これは三輪車ではなく、タイヤが4個あるミニカーなのだが)が人気だという。それで調べてみると、なるほど、このオフロード車は最高速度50km/hをうたっている。しかし、そのスペック表の欄外の備考に、実に小さな文字で「乗員55kg場合」ということが書かれている。これは私のようなデブは乗るなと言うことか?!

かなりマニアックなことで申し訳ないのだが、『国民健康・栄養調査』によると2018年の20歳以上の日本人男性は、平均67.3kg前後とのことである(なお、この調査はサンプリング調査で、全日本人男性の体重のデータを使って平均を計算したのではないため、アバウトな表現になってしまう)。
車の免許は18歳にならないと取れないため、とりあえず20歳以上の男性のデータを拾ってみた…私はデータサイエンティストとしてのマーケティングリサーチャーなので、このテのデータを探すのも得意だ。女性のデータは、それを見た女性が色々とショックを受けて過剰なダイエットなどして欲しくないので、あえてここには書かないでおく。ともかく、病気の影響で10kgほど増えたとはいえ、体重72kgの私というのは、まぁ平均から3σは離れていないだろう、標準の範囲内のちょいデブということだ。

話が少しそれたが、こんな数値情報もあるという話を、もう1個だけ示しておきたい。
工業製品の規格を定めるJIS規格といものがある。そのJIS規格によると、車に乗る人の体重は65kgであると仮定して製品の耐久性などを定めている。
免許更新の時に見せられるビデオなどに、シートベルトをしないで後部座席に座らされた人形が、衝突と同時に投げ出されるようなのがある。そういう人形の重さは、このJIS規格に合わせてあるはずなので65kgである。

以前も書いたが、そこを55kgとしてスペック表を作るなんて、不誠実ではないか。そういう不誠実なことを行うメーカーの製品を信じられるかというと、私には難しい。
ただ、メーカーとしては、そうでもしないと実用的なEVを100万円を大きく下回るようなお手軽なお値段でリリースするのは難しいのだろう。きっと、この「乗員55kg」というのは、苦肉の策だったのだろう…どこのメーカーも苦労している。
しかし、忘れないで欲しい。安かろう悪かろうでは困るのだ。乗ってから困るよりも、乗る前に困るほうが断然良い。さぁ、バッテリーはどうなっている?

EV BOSCOのバッテリーは配置が良い

私の購入するEV BOSCOの場合、バッテリーは運転席のほぼ真下に収まっている。あくまでもこれは普通の軽自動車よりも全長が90cmほど短い三輪車のことのため、車体全体で見ると、ほぼ中央の下側にバッテリーが位置することになる。
念のため、ここでもう一度EV BOSCOのスペックを確認しておく。車長は2499mmで、ピックアップの場合の荷台の前後方向の長さは1180mmである。その差は1319mmということだから、運転席のほぼ真下に置かれたバッテリーは車全体で見ると、やはりほぼ中央に位置していることがわかる。
このことは、走行時のバランスの良さにもつながるのだろう。しばしばトランクルームにバッテリーを詰めたようなEVがあるが、それだと後ろが重たい。下手をすると坂道を登りづらくなるかもしれない。

デフォルトのタイヤが10インチ(30cmくらい)のEV BOSCOなのだが、タイヤの高さのほぼ中央に床面の高さが来ている。その床面にバッテリーが置かれるため、車高が1820mmもあるピックアップというトラックに似たモデルの場合でも重心を低く保つことができる。
余談だが、建築基準法では、小学校の階段の1段あたりの高さを15cmと定めている。運転席に子供が乗り込むことはないものの、ピックアップのようなタイプでも地上から運転席の床面までの高さがそんなに高くないというのは、運転席に乗り込みやすいということにつながる。

前後のバランスからみても、重心の低さからみても、EV BOSCOは良い配置をしていると思う。

EV BOSCOでも電気系統は悩みどころ

坂道でも60km/hを出せて1回3時間のフル充電で75kmを走ることのできるEV BOSCOであるだけに、バッテリーはそれなりにサイズがある。車の幅1300mmに対して7割くらいバッテリーが占めているため、バッテリーはおよそ1mくらいの長さがある。恐らく、このバッテリー1本で10kg近くあるのだろう。
このように大きなバッテリーを積んでいるため、バッテリーを引っこ抜いて家の中で充電するということは、できなくはないものの大変かもしれない。できることなら、防犯上の観点からもバッテリーを引っこ抜いて家の中で充電というのは助かるのだが…。

バッテリーが置かれている場所には少し余裕がある。もちろんバッテリーが温まってしまうと性能が落ちてしまうため、適度なスペースは必要である。
ただ、このスペースに小さくても構わないから予備のバッテリーを積めないか…ということはガレージ・ボスコさんも現地とやり取りしていると言う。
ソーラーパネルからの給電で走り続けることが無理でも、予備のバッテリーがソーラーパネルからの給電で充電されているのなら、バッテリーの入れ替えで走り続けることは可能だ。イメージとしては1時間ほど走行してバッテリーがなくなったら、コーヒーでも飲んで一休みしてからバッテリーの配線を切り替えて再び走り出すという感じ。
それができれば、日本でもこのEV三輪車に乗りたいという人は増えると思うのだが…。

まとめと次回予告

今回はEV BOSCOの電気系統の話を書いた。それなりに性能の良いEV BOSCOではあるものの、やはり他のEV同様、バッテリーの悩みは避けて通れない。
次回からは、私がEVに乗りたいと思った木村氏の軽トラとは別の、もう1つ気になっているEVを紹介しつつ、私のEV BOSCOの改造方針を書こうと思う。

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