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ダボス・アジェンダ2021 -- Day 4 (Part II)

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでは、ダボス・アジェンダ(1月25日 - 29日)の会期中、4月6-7日に開催されるグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)につながる議論をnote発信しています。

Day 4(Part I)はこちら⇩

■Accelerating Digital Inclusion in a Post-COVID World

パンデミックの影響で、インターネット利用量は70%も急増しました。何億人もの人々がオンラインで参加できるようになった一方で、世界人口の47%の人々はその手段を持たず、デジタル格差(デジタル・デバイド)による社会的リスクが増大しています。この社会課題の解決には、どのような政策、実践、パートナーシップが必要なのでしょうか?

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デジタル・デバイドは、社会の分断を拡大するーーー 冒頭、Hans Vestberg(Verizon Communications)は、デジタル・デバイド解決への迅速な行動を行う理由に「社会分断リスク」を挙げ、デジタル・デバイド解消のための国際官民プラットフォーム「Edison Alliance」の設立をアナウンスしました。

Edison Allianceに参加するナイジェリアICT大臣であるPaula Ingablreは、デジタル・デバイド解消は国民に対する社会契約として政府が取り組むべき問題とし、光ファイバーや4Gネットワークなどのインフラがすでに国内95%をカバーしていることを共有。一方で、カバー率と普及率には大きな差があり、そのためにも官民連携でローカルコンテンツの作成やデジタルスキルのためのトレーニングに注力していると報告しました。

米国内での取り組みを行うRobert Smith氏(Vista Equity Partners)からは、ラストマイル・アクセスとしてブロードバンドネットワーク確保に注力しいる現状と、こうした取り組みが若者の「雇用」につながることを強調。さらに金融サービスを巻き込んで債権を発行して投資資金を確保するなど、Walk the Talk(有言実行)によるインパクトの必要性を情熱的に訴えました。

■Fostering Responsible AI Leadership

AIは社会に著しい進歩をもたらしている一方で、実装にあたって偏見や差別といった倫理的な問題にも直面しています。責任あるAIのための倫理規定と社会への適応について議論が行われました。

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インドのHCL TechnologiesのCEO、C. Vijayakumar氏は「最優先(Overriding)となる規則」として4つの原則をあげました。

『Ethics(倫理)』データが偏見なく活用されるための平等性の確保
『Explainable AI(説明可能なAI)』透明性のあるシステムでユーザーの理解を保証
『Secure(安全)』システムやソフトウェアが最大限のセキュリティスタンダードに準拠
『Accountability and Governance(説明責任とガバナンス)』説明責任の所在、偏見のないデータ処理のためのガバナンス設計

ロシア商業銀行SberbankのCEO、Herman Gref氏は「誰が開発側で責任を負うのか」「何が顧客にとって『安全』なのか」という2つの問いを提示しました。2000人規模のデータサイエンティストを抱える企業として、研究者の「間違い(Mistake)」に備えるべきだと言及し、開発段階で積極的に間違いを検証して実装段階での機能保証が必要だとコメント。PepsiCoのAthina Kanioura氏は、自社が「プレーブック(Playbook)」を用意していることを紹介し、バリューチェーンプロセスにおける各ステップでの責任所在を明示することで、顧客への透明性と可視性を確保していると語りました。

清華大学のYa-Qin Zhang教授は、ビジネスとアカデミアの観点から『Responsive』『Resilient』『Responsible』なAI活用を訴える3Rプリンシプルを紹介。AI活用のためのツールボックスを提言した白書(発行:世界経済フォーラム⇩)を紹介しました。

Responsible Limits on Facial Recognition Use Case(2020年12月14日)


■Shaping Empowered Data Societies

データに基づくサービスへの期待が高まる一方で、私たちの社会はプライバシー侵害を警戒し、データ利用に対する不安を拭い切れていません。「活力あるデータ社会の形成」のためのこのセッションでは、政府・ビジネス・市民の観点からデータ規制に関する議論が行われました。

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「トラストバロメーター」で知られるEdelmanのRichard W. Edelman氏は、政府に対する信頼が低下する一方で企業への期待が高まっていると述べ、社会にとっての「情報の質」を回復するためにも、企業側による自己規制と政府によるルール整備の必要性を訴えました。

UAEデジタル経済・AI担当大臣のOmar bin Sultan Al Olama氏は、「どのデータが」「何の目的で」「いかなる保護の下で」「どのようなリターンがあって」収集・利用されるかについて、透明性と説明責任を確保することが市民の信頼を取り戻すうえで重要と力説しました。

Digital Rights FoundationのNighat Dad氏は、発展途上国ではプライバシーが権利として認識すらされていないことを指摘。また、国境を簡単に超えるというデータの本質を踏まえれば、データ規制こそグローバルな対話によって国際的なルールへと昇華させるべく、今こそ一歩踏み出すべきだと主張しました。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴(インターン)
松下雄飛(インターン)


Day 5はこちら⇩


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