見出し画像

GTGSアジェンダブログ(6):ICTを通した価値創造の”New Normal”

グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)の開催にあたり、NEC遠藤信博会長が執筆されたアジェンダブログが世界経済フォーラム公式サイトにて公開されました。

ICTの価値創造:「場所」と「時間」の制約からの解放

人が分散した状態でも価値創造をできるようになったことが、スペイン風邪の流行と今回のパンデミックの違いだーーー冒頭、遠藤会長はICT(Information & Communication Technology、情報通信技術)が発揮した力についてこのように指摘しました。

人間社会は、ICTの進化で、「場所」と「時間」の制約から解放され、リモートワーク、リモートヘルスケア、リモート教育等の価値創造が可能となり、これらの価値は、インクルーシブの観点でも高い評価ができる。

その上で、”New Normal”の社会では価値創造にICTを積極的に利用することが不可欠であるとし、そのポイントについてアジェンダブログの中で提起しました。

なお、New Normalについては、下記で議論されています。

リアルタイム、リモート、ダイナミック

ICTの重要な3機能として、遠藤会長は「リアルタイム」「リモート」「ダイナミック」を挙げました。

ICTのコンポーネントの進化は、「リアルタイム」、「リモート」、「ダイナミック」と言う重要な3機能を作り出したと考えている。ここで、「ダイナミック」とは、データは単体では価値を持たないが、大量に集めたデータを、AI等のソフトで瞬時に処理することで、ダイナミカリーに新しい価値に変換できる機能を示す。

中でも「ダイナミック」の機能は、以下に続くようにビッグデータを利用し社会の「全体最適解」を導くために不可欠であるとしています。

ビッグデータを利用し、部分最適から全体最適へ

従来は処理能力の限界という制約のうえで、大量データの一部のみを利用して価値創造を行っていたため、生み出される価値も部分最適でした。ところが現在は、大量のデータを瞬時に処理することが可能になり、より全体最適に近いソリューションを提供することができるようになりました。

情報は、(中略)大量に存在するデータの部分集合を元に価値を創出する。それ故、その価値も部分最適、或いは個別最適のソリューションとなる。一方、今や、人間社会はICTの進化により、大量のデータを瞬時に集め、瞬時に処理できる能力を持った事で、データを価値源泉として直接扱えるようになり、データから帰納法的に直接価値を創出する事が可能となった。

全体最適解の価値創造を実現するために

地球全体に関わる人類にとっての課題など、巨大な問題に対処するには行動主体間の協力が不可欠となります。そのための全体最適解となる価値創造を達成するステップとして(1)価値観を共有するバリューチェーン形成、(2)KGI(Key Goal Indicator: 最終目標値)の設定、の2点があげられました。

「人間社会の豊かさ」に対して議論を深め、価値観を共有する事が重要で、共有できる人々、或いはグループが、価値創造のためのバリューチェーンを形成する必要がある。(中略)このバリューチェーンにて、人間社会の皆が受け入れられる目指すべき全体最適の社会像を、環境、医療等の各領域で描く事が必要である。それには、KPIと言うより、多くの人に享受される、より大きな目標KGI(Key Goal Indicator)を創る事が必須であろう。

ICTはデータを利用し全体最適解を導くことが出来ますが、”全体”の範囲と”最適”の定義を定めるのは人間であり、導かれる全体最適解もそれを定めた主体の理想に沿ったものになります。そのため、理想を共有するグループでなければ実現に向け動き出すことができず、またその理想が社会の通念に沿ったものでなければ社会に受け入れられることもありません。

全体最適価値の創造におけるバリューチェーンと言うフォーメーションも、KGIの創造と、これに対するコンセンサスを取るというプロセスもNew Normalの基本的で重要なポイントだと考える。

テクノロジー企業のトップだからこそ、技術やプロセスの可能性を論じるのではなく、最終目標の設定とその社会的なコンセンサスの重要性を明瞭に断言した遠藤会長の主張が、非常に印象的でした。

遠藤会長の登壇セッション「ヒトの移動に関する信頼の再構築」

遠藤会長は、GTGS2日目に開催された「ヒトの移動に関する信頼の再構築(Rebuilding the Trust to Travel)」のセッションにも登壇し、デジタルID利用におけるトラストの重要性・テクノロジーガバナンスにおける相互運用性について発言しています。セッションは下記からオンデマンドで視聴可能です!

執筆                                   世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター               ティルグナー順子                             佐藤良磨(インターン)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?