見出し画像

デジタル時代のトラストとは?「Rebuilding Trust and Governance」白書、発行!

世界経済フォーラム、日立製作所、経済産業省が協働で執筆した、新しいデジタル時代のトラスト(信頼)のありかたを提言する白書「Rebuilding Trust and Governance :Towards Date Free Flow with Trust(DFFT)」(仮訳:トラストとガバナンスの再構築:DFFTへ)がついに発行されました!今回の記事では、この白書の概要を皆様にご紹介いたします。

なぜ今、トラストの再定義が必要なのでしょうか。近代化以降の複雑化した社会を円滑に機能させるために、トラストは社会に必要不可欠な役割を果たしてきました。つまりこれまでの私たちの信頼とは、会ったことのある人だったり、政府や大企業が管理しているのだから間違いない、きっと大丈夫だろうという気持ちであり、そんな信頼が社会を築き上げてきたわけです。しかし、サイバー空間・ネット上の空間においては、そもそも向き合う相手が実在するかどうかも不明瞭です。デジタル時代を迎え、あらゆる活動がデータ化され、その活用に基づいた新たな価値が創出される一方、社会はより複雑かつ不透明になり、結果として社会を円滑に機能させるトラストのありかたも大きな変化を迫られることになりました。

「信頼が強く意識されるのは、それが壊われ、失われつつあるときだ」

フェイクニュースをきっかけに報道への信頼性が揺らいできたのはその一例です。今までは情報を発信できる主体には限りがあり、多くの情報は人々が信頼できると考える媒体を通して発信されてきました。翻って現代では、あらゆる人がサイバー空間を通じて情報発信できるようになり、情報の発信者と受信者の垣根が低くなったことによるメリットを享受する一方、悪意を持った情報発信主体も増え、フェイクニュースが世間を揺らがし、情報に対する信頼の毀損が蔓延しています。

人々が新しいサービス・製品を信頼できるか判断することも難しくなっています。
デジタル社会への移行が急速に進行するなか、私たちは、トラストを再構築し、維持し続けるため仕組みの社会実装という緊迫した課題に直面しているのです。

「トラスト・ガバナンス・フレームワーク」

本白書では、デジタル時代に必要となるトラストとガバナンスの関係を「トラスト・ガバナンス・フレームワーク」として整理しました。

図:「トラスト・ガバナンス・フレームワーク」

スクリーンショット 2021-04-01 14.52.05

このフレームワークでは、信頼/Trust(信頼できるという主観的な感覚)と信頼性/Trustworhiness(証拠や実績に裏付けられた、信頼に値する客観的な性質)を区別しています。技術やサービスは、信頼に値する事実をガバナンスによって蓄積する必要があります。その上で、その事実があることをユーザーや市民に共有し、理解してもらうことではじめて、彼らの信頼を得ることが可能になるのです。同様に、ガバナンスそのものも信頼を得る必要があり、そのための努力を不断に行なっていく必要があります。

重要となるトラストアンカーの存在

トラスト・トラストワージネス・ガバナンスという3要素が連なり合う連鎖によってトラストは担保されます。一方でテクノロジーによる変化は、サイバー空間を通じて政府・大企業に限らない、さまざまな主体が存在感を発揮しつつあるがゆえに、この連鎖を長大なものにし、個人の判断コスト・社会全体のコスト増に繋がっています。

図:トラストの連鎖構造(トラスト・チェーン)

信頼の連鎖

こうした負担の連鎖を断つためには、トラストワージネスの存在を証明するトラストアンカーの存在が大きな焦点になります。例えば、今まで政府はトラストアンカーとして大きな役割を果たし、法律や条例といったルールを定めることで、互いに互いを信頼するための基盤を作りあげてきました。しかし現代においては、既存のプロセスだけではもう変化に追いついていけず、企業や市民社会がトラストアンカーとしての役割を果たす必要性が日に日に増しています。

アジャイルな信頼構築プロセス

変化スピードが加速するデジタル時代には、トラスト担保のためのアジャイルなガバナンスも求められます。

図:アジャイルなトラスト構築のプロセス

アジャイルな信頼獲得の方法

上図のプロセスは、複数のレイヤーでマルスステークホルダーが相互に連携しながら、アジャイルにガバナンスを実施し、継続的に信頼を構築し続けるためのプロセスを表しています。複数のガバナンスが互いに有機的に作用し、社会全体におけるトラストを構築するためには、相互の調整・連携が欠かせません。

まとめ

4月6-7日に開催予定のグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)でも、デジタル時代のトラストは大きな議題のひとつです。特に、日本時間4月7日(火)07:30-08:30に開かれる「Building Trust into Technology」においては、日立製作所執行役常務の鈴木教洋様を始め世界各国からさまざまなリーダーをお迎えし、デジタル時代におけるテクノロジーへのトラスト回復に必要となる、トラスト・トラストワージネス・ガバナンスの関係性について議論を行う予定です。

本セッションもインターネット配信されるので、是非そちらも視聴ください。セッションでの議論はnoteでもレポートする予定です。今後の発信もお見逃しなく!

Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 伊藤龍(インターン)
Contributors:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?