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技術士試験の解答において意識すべき2つのポイント【技術士・建設部門向け】

 技術士二次試験の解答では、いずれの問題でも共通して意識すべきポイントが2つあります。

2つのポイント
・直近に検討されている課題認識や対策を把握すること
ソフト対策とハード対策の組み合わせを意識すること

 これらのポイントは試験対策に限らず、今後技術者として活躍する上で大変重要な視点です。今日は、これら2つの視点について説明したいと思います。

はじめに:技術士二次試験の問題の流れ

 ポイントの紹介に入る前に、技術士二次試験の問題の流れを紹介します。技術士試験で出題される問題の流れは共通点が多く、2つのポイントはどの出題にも対応できます。

 例えば、令和元年度試験では必須科目で自然災害に関する出題がありました。大まかな問題の流れは、以下の通りです。

①近年多発する、ハード整備の想定を超える災害に関する課題の抽出

②抽出した課題に対する解決策の提案

③提案した解決策を実行する上の留意点

 ここから紹介するポイントの1つ目は①と②に関する内容、2つ目は②と③に関する内容です。

1つ目のポイント:直近に検討されている課題認識や対策を踏まえること【課題抽出・解決策】

 1つ目のポイントとして、直近の政策や協議会の基本方針を意識した解答が望ましいです。これは、採点者に解答内容を納得してもらうためです。

 例えば、東日本大震災を踏まえた「津波発生時における鉄道旅客の安全確保に関する協議会」では、安全確保という課題に対する対応方針を検討しています。

 この協議会では、対応方針を「津波からの避難」としています。

 ちょっと待ってください。他にも対策として、津波を防ぐ堤防の設置などが考えられますよね? しかし、技術士試験で津波対策が出題された場合、協議会で提案された「避難」を軸にした解答が望ましいのです。

 これは、試験では採点者に解答内容を納得してもらう必要があるからです。協議会の検討結果や政策の内容は、自然災害の調査結果や技術動向が踏まえられており、現段階では合理的です。採点者はこれらの検討内容を把握しているので、解答もこれらの検討結果を踏まえていることが望ましいのです。

 もちろん、先の津波対策として「大きな防波堤」も1つの提案となります。しかし、それを納得してもらうためには協議会の内容を超える説得力のある説明をしなければならず、試験時間内には難しいと思います。

2つ目のポイント:ソフト対策とハード対策の組み合わせを意識すること【解決策・留意点】

 2つ目のポイントとして、解決策の提案ではソフト対策とハード対策の双方を述べることが望ましいです。

 まず、対策には必ず弱点があります。この弱点は、留意点や要件として試験問題で述べさせられることが多いです。

 試験では、これらの弱点を踏まえハードとソフト双方の対策を組み合わせ弱点を補うことが求められます。以下では、自然災害への対策を例に説明します。

 ハード対策の一つである構造物の整備では、外力の回避など被害を軽減する直接的な効果があります。しかし、災害を引き起こす外力の大きさは際限がなく、一般的にハード対策では限界があります。ハード対策には、外力を抑えきれない弱点があるということです。
 一方で、避難訓練の実施や避難情報の発信など構造物に頼らない対策があります。これらはソフト対策と呼ばれ、限界のあるハード対策の弱点を補います。しかし、ソフト対策の効果は利用者の意識に左右されるという弱点があります。避難訓練は参加しないと意味がありませんからね。

 対策それぞれには必ず弱点があるため、ソフト対策とハード対策を組み合わせて弱点を補うことで、より良い解決策となります。この視点の広さは、技術士試験でも評価ポイントとなります。

 人によっては、いずれかの対策の提案が苦手な方もいるかと思います。しかし、試験対策では必ず両方とも解答できるよう準備しておきましょう。

おわりに:これらの考え方は、技術者としての成長につながる

 ここで紹介した2つのポイントは、試験での答案の書き方のような試験でしか通用しないものではなく、日常業務でも重要な視点です。業務に立ちはだかる課題について最新の動向を押さえ、また複数の対策を検討することは業務品質の向上につながります。

 技術士試験だけでなく今後技術者として日々成長するためにも、ここで紹介したポイントを意識してみてください。

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