妊娠5ヶ月の話。

ドキドキしながら5ヶ月検診に行った。

赤ちゃんはどんな状態なんだろう、苦しんではいないだろうか。

しかし予想とは裏腹に、エコーにうつった赤ちゃんは元気いっぱいだった。

わたしが見ている前で足をびーんと伸ばし、腕をパタパタさせていた。

足のサイズが測れそうだね、と言われて測ったら2cmだった。

2cmの足。そんな靴はあるだろうか。

小さな命が確実にわたしの腹の中で成長していた。

「元気ですね、順調です」と言われて、安心してまた泣いた。


妊娠5ヶ月といえば安定期なのだが、ちっとも元気じゃなかった。

相変わらず気持ちが悪いし、なにより精神的に元気じゃなかった。

赤ちゃんを守ってやれない自分。

家事も満足にできない自分。

夫の支えになれていない自分。


泣いたほうがいいと思って、聞くと必ず泣く曲を聞いて泣いた。

大好きな小説を読んで心を落ちつかせた。

それでもメソメソしていたら、おなかがボコン!といった。

蹴られた。

今蹴った?今蹴ったよね!?とおなかに向かって聞いた。

ポコポコポコ。

蹴ってる!

たしかにわたしの体の中に、新しい命がいるのだ。

これはもう信じなくてはいけない。

わたしとは別の生き物がここにいる。

わたしを選んでやってきてくれたのだ。

神秘的だった。

妊娠は神秘、人体の不思議、奇跡だ、とひとりでブツブツつぶやいた。

おなかからポコポコと反応があった。

夫にはまだわからない、わたしと赤ん坊だけの、秘密のコミュニケーションだ。


おしまい。

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