妊娠6ヶ月の話。

6ヶ月検診で切迫流産気味だね、と言われた。

子宮頚管が少し短めだったので、まだ切迫流産ではないけれど、無理をすると入院になるよ、とのことだった。

わたしの安定期はいつ来るの?と思った。


この頃やっとマタニティウェアを買ったのだけれど、

このマタニティウェアが大当たりで、楽すぎてどうしてもっと早く買わなかったんだと後悔した。

自覚はなかったけれど苦しかったのかもしれないし、赤ちゃんはもっと苦しかったのかもしれない。

またひとつ、赤ちゃんに謝ることが増える。


ところで、わたしの性質のひとつに「人に影響されやすい」というものがある。

誰かがつまらないと言ったものはつまらなく感じてしまうし、

誰かがこれを好きだと言ったら好きになってしまう。

わたしは芯のない人間だ、と頻繁に思う。

一番影響を受けるのは家族の発言なのだが、今回これが悪い方向へ行ってしまう。


胎動も少し大きくなってきたかな、と思ったので、

夫の手をお腹にあてがい、「どう?わかる?」と聞くことが増えていた。

初めのころはわからなかったが、ある時「あ、今のかな?」と夫にもわかる強いキックがあった。

その時の夫の反応が「ふーん」だった。

この瞬間、「胎動=幸せを感じるもの」だったわたしの気持ちが、

「胎動=大したことのないもの」に変わってしまったのだ。

胎動はとくに嬉しくもないし幸せでもない、「ふーん」ですむものに変わってしまった。

夫からしたらこの時のキックはまだまだ弱く、「まだこんなもんかぁ、もっと強くなったら楽しいだろうなぁ」という気持ちだったらしいが、

そんなこととはつゆ知らず、わたしは無意識に「胎動=喜び」という式を否定してしまっていた。


それまで蹴られるたびお腹に向かって話しかけていたが、気づいたらやめていた。

胎動があっても何も感じなくなってしまった。

「今日は少し暑いな」と同じテンションで「あ、動いているな」と思う程度になった。

昼間はテレビもつけず音楽もかけない日が多かったので、わたしの声が突然消えて、赤ん坊の世界は無音になってしまっただろう。

あとになって知るが、この後妊娠7ヶ月や8ヶ月でできる胎児とのコミュニケーションが、わたしには取れなくなっていた。

誰のせいでもない、悲しい出来事。


おしまい。

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