妊娠2ヶ月の話。
恋に落ちたとき、この人のこどもが産みたいと思った。
ずっとこどもがほしかった。
でもこどもなんてできっこないと思っていた。理由は言わない。
夫もできっこないと思っていた。だからできたときはびっくりした。
ちょうど自分の人生を前向きに考え始めて、
車を買っておしゃれなカフェでの仕事も決まって、
5ヶ月くらい働いて仕事にも慣れてきて、
毎日が楽しくなってきたときだった。
陽性のあの縦線を見たときは、飛び上がって喜んで、夫に連絡し、母にも電話した。
生理予定日の1週間くらい前から調子が悪かった。
吐くに吐けず、ただただ気持ち悪くて、
もしかしてつわり?まさかそんなわけが、でもなー、と思いながら過ごした。
内科に行くのは妊娠検査薬を使ってからにしようと思い、
検査薬が使えるようになるまでヘロヘロになりながら仕事をした。
やっと検査薬を使い、濃くでてきた陽性反応をみて泣いて喜んだ。
と同時に検査薬を疑った。病院に行くまで信じてやるもんかと思った。
陽性反応が出てから4日後、病院に行った。
小さな命はもう心臓が動いていて、そこで確かに生きていた。
それでもまだ信じられなかった。おなかが大きくなるまで信じてやるもんかと思った。
「ほんとうにおまえはそこにいるのかい?」とおなかを撫でながら何度も聞いた。
返事はまだない。
次は3週間後、と言われた検診が、とても待ち遠しかった。
おしゃれなカフェでの仕事は辞めた。
つわりが気になること、やっと授かった命を「仕事が楽しいから」という理由でもしなくすことになったら後悔しかないと思ったこと、
買ったばかりの車のローンや、これからの生活のことを考えてたくさん悩んだけれど、
夫の「辞めなさい」に背中をおされ、辞めることにした。
予定していた岩手沿岸旅行もキャンセルして、来年3人で行こうねと約束した。
つわりはまだまだ続くことになる。
おしまい。
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