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Netflix「レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件」

2004年、韓国を震撼させた連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの犯罪を検証するドキュメンタリーシリーズを観ました。
ときめいたものを書くといってnote始めたはずが、ここに来てまさかのクライム系ネタ。いろんな意味で衝撃を受けたものを書く場所ということにしておきます・・

こちらの作品は新着で出た時からマイリストに追加したまま、私の頭の中からすっかり忘れさられておりました。Netflix興味そそられるのが多くて一向に消化できぬ。

偶然この事件を取り上げているYouTubeのまとめ動画を観てもっと知りたいと思いGoogle先生にお尋ねしたところ、Netflixにドキュメンタリーシリーズがあるとのこと。ああ、そういえばマイリストに入れておいたアレか!と。
Netflixはクライム系のドキュメンタリーも質が高くて素晴らしいので好きです・・・

2003年から2004年にわたる1年弱の間に、ユ・ヨンチョルはソウル市内の各地で計20人を殺害。標的となったのは、裕福な高齢者や風俗店従業員、若い女性たちでした。彼が命を奪った被害者の驚くべき数、殺しに用いた冷酷な手法、遺体を無残に切断するところまで、前例のない残虐さでした。
「レインコートキラー: ソウル20人連続殺人事件」は、ユ・ヨンチョルによる蛮行と、その計り知れない衝撃を記録。アーカイブ映像や、事件に直接関わった人々への膨大なインタビューによって、一連の殺人をこれまでにない角度から検証し、事件を間近で見てきた人々の証言をもとに、この事件に迫ります。

被害者の家族、ソウル地方警察庁で捜査を指揮した責任者、刑事、取調官、検察官、弁護士たち、また韓国初の革新的なプロファイラーでユ・ヨンチョルと直接対峙したクォン・イルヨンや、イ・スジョン、ペ・サンフンといったその他プロファイラーたちの胸に焼き付いた記憶に焦点を当てながら、本作はユ・ヨンチョルの事件を徹底的に掘り下げ、また彼を逮捕するために尽力した人々について描くことで、全体像を明らかにしています。

この犯罪を裁くために闘った人々の物語と、連続殺人鬼ユ・ヨンチョルが引き起こした悲劇によって韓国社会に永遠に刻まれた、消えるのことない痛みを描いています。

引用:Netflix

全3話構成になっていてサクッと観れるはずでしたが、1話見終わるたびに重い気分になるので2日にかけて観ました(無理すんなよ)
決して良い気分になることはないのに、わざわざこういった類のドキュメンタリーを観ることに興味を持つのは、犯罪者の頭の中を覗いてみたいという好奇心からでしょうか。到底理解できるわけがないんだけど・・・同じ人間として知りたいと思ってしまうんだよね。

犯罪を起こすには様々な理由や動機があるわけですが、ヨンチョルの場合はまさに韓国社会の闇が生んだ怪物と言えると思います。
韓国は第二次世界大戦での日本による植民地時代を経て朝鮮戦争が勃発し、その後経済は崩壊。1963年〜1980年にかけては奇跡的な経済成長を遂げたにも関わらず、2000年代初頭は再び経済的に厳しい状態になったそうです。
そんな中で恩恵を受けながら生き残っていく人とそうでない人との差が大きくなっていき・・・社会的に大きくなる貧富の差。韓国社会における貧富の差というのは、よく映画の題材になっていたりするくらい深刻な問題で課題ですよね。もちろん日本や諸外国にも言えることだけど、特に韓国の場合は急激に変化を起こした国でもあるから顕著なのかな・・?

社会の保護もなく淘汰された人々は行き場を失い、だんだんと「この世は間違っている」「社会の一員となる機会を奪われた」「社会から排除された」と感じるようになる。そして殺人を犯しても罪悪感など抱く必要はない、といった心理になるとプロファイラーの方はおっしゃっていました。

関係者の方々が語る事件についてのディテールは生々しく、想像することは容易でした。グロテスクになってしまうのでここには書けませんが・・

あと、被害者の身元を特定するために全力を尽くす科学捜査班長の女性の話には思わず涙してしまいました。遺体の損傷があまりにも激しいので、指紋をとるのが難しかったそうで。周囲も無理だ、やめておけと言っていたそうですが絶対に諦めなかったと。
字幕では「被害者」と表記されているけれど、(聞き間違いでなければ)被害者女性達のことを「オンニ」と呼んでいたんですよね。「お姉さん」という意味になりますが、ニュアンス的には親しみを持って言う感じ。それだけでも、この方がどれだけこの事件に深く追悼の念を持って捜査していたか分かる気がしました。


さて。事件について調べていると、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作である「チェイサー」が、この事件を元に映画化されたのだと知りました。

私は「哭声」を観てから興味をもった監督で、それから「哀しき獣」は観たのですがこちらは観たことがありませんでした。ちょうど先日友人のU-NEXTアカウントに居候させてもらい出したところなので、観てみることにしました。(Netflixにはないのよね)
映像で観ると現実とリンクして恐怖が倍増してしまいます・・。あと、映画の方でも韓国警察の無能さが結構描かれていますね。ドキュメンタリーの方でも当事者が「当時の韓国警察は汚職が多くてレベルも低かった」と語っています。実際、ヨンチョルの捜査には手間取りましたし逮捕が遅れたうえに更なる被害者が出てしまいました。
インタビューに答えている警察や検事らが自らの失態や隠蔽を赤裸々に語ってくれたからこそ、このドキュメンタリーはリアルで面白いのだけど。

この事件をきっかけに、韓国警察ではシステムが見直され社会制度も変わったらしいです。現在に生かしていくためにも、このように悲惨な実態を全世界に語るべきとしているのだろうか・・・当時の映像や資料等も多く、とてもよく出来た作品だったと思います。

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