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棄てる者と棄てられる者 —村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』を読んでー

 『猫を棄てる 父親について語るとき』(以下『猫を棄てる』)でとりわけ印象的なのは、冒頭と最終盤で語られる猫のエピソードだ。いずれも村上春樹の実体験なのだが、それぞれが、本書の重要なテーマを暗示してもいる。  ここでは特に、冒頭のエピソードが暗示しているテーマ、「棄てる者と棄てられる者」について書こうと思う。  本書は、村上春樹の父・千秋が、当時飼っていた猫を棄てに、幼い春樹と近くの海辺に出かけるエピソードから始まる。  このとき、父と春樹は「棄てる者」で、猫は「棄てられる

    棄てる者と棄てられる者 —村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』を読んでー