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聞いた話

まずは、Aさんという20代の女性から聞いた話。
以前、彼女が通っていた料理教室で、よくいっしょに調理実習をしていたY子さん。
ある日、警察に逮捕された。
夜中に包丁を持って近所をうろついていたところを、パトロールしていた警察官が発見したのだという。
聞くところによると、自宅で料理をしていて急にむしゃくしゃして、誰でもいいから人を刺したくなったと供述したらしい。
Aさんが料理教室でいっしょだった、その日の夜のことだった。

         *

次に、これはBさんという中年の女性から聞いた話。
彼女の近所に、とある一家が住んでいた。
夫は単身赴任中、子供はおらず、家には嫁と姑のふたりきり。
嫁と姑の仲はあまり良くなく、嫁は趣味の園芸でその鬱憤を晴らしているようだった。
イチイ、キョウチクトウ、アセビ、ピラカンサ、スズラン、スイセン、グロリオサ、チョウセンアサガオなど、庭にはさまざまな草木が植えられていた。
そんなある日、姑が突然亡くなった。
葬儀の日、嫁はどこかほっとしたような穏やかな表情をしていたという。
それからしばらくの間、近所ではこんな噂が囁かれていたのだとか。
「そういえばあの嫁さんが育てていたのって、毒のある草木ばかりだったよね…」

         *

最後に、C君という30代の男性から聞いた話。
彼が高校生のころ、幼なじみで同じ高校に通うMちゃんという女の子からこんな相談を受けた。
近くのコンビニでバイトをしているMちゃん。
最近ひとりの中年男性につきまとわれているのだという。
その男性、最初はふつうの客として来ていたそうだが、しだいにコンビニの前で待ち伏せしていたり、帰宅する彼女のあとをつけて来るようになったのだという。
その話を聞いて、C君はボディーガードとして、Mちゃんの帰宅時間に迎えに行っていっしょに帰ることにしたのだそうだ。

いっしょに帰ってみると、確かに細身の中年の男性が、電柱の陰などに見え隠れしながらあとをつけてくるようだった。
しかし、柔道部で、ゴリラとあだ名がつくほどの体格のC君を目にして怖気づいたのか、やがて男性のストーキングはなくなっていった。

そして、それからしばらくして、今度はC君が女性につきまとわれるようになったのだという。
学校への行き帰りや家の近くで、物陰にかくれてC君をじっと見ている女性の姿を何度も目撃するようになったそうだ。

最初は無視していたC君だったが、あまりのしつこさに耐えきれず、ある日思い切って女性に声をかけてみた。
女性は走って逃げ出したが、すぐに追いついたC君が前に回り込んで見たところ、その女性は以前にMさんにつきまとっていたあの中年男性が女装した姿だったという。

初出:You Tubeチャンネル 星野しづく「不思議の館」
恐怖体験受付け窓口 人怖報告回 十二夜目
2023.5.6

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