英語の日本詞 Mitski Pink in the night

みんなはどのくらい音楽を聴くとき歌詞を気にしているだろう
邦楽は特に歌詞における比重が大きい音楽圏だとかなんとか
実際日本で親しまれている曲は音楽的なところよりも、共感(想像)出来る歌詞かどうかの方に理由がありそうな気もする。

バンドで言えばなんだろう
back numberとかmy hair is badなんかは良い例なんじゃないだろうか
楽曲の面白さや引っ掛かりよりも、歌詞にその真意があり、メロディーと共にイメージを施すような音楽
時折こういう日本的嗜好に物申したがる音楽評論垢も目にするけれど、歌詞やメロディーは音楽の一部分であるし、そこに魅力が生まれるのも邦楽のいいところではないかと思う
僕もそういう音楽は好きだ
だからこそ近年米津玄師が世を席巻していることは本当に面白い
彼の音楽は広い音楽的背景から彼自身の強すぎる個性で形作られていて、歌詞についてはとても聴いただけでその意味するところを知るなんて不可能だ
パプリカの歌詞について2011年の大震災へのメッセージではないかという解釈がTwitterで拡散されていたが、その内容が完全だとは言えなくとも、そう言った隠した意図があることは間違いないと思う
そのくらい本意が隠されている
これを聴いて意味が分からずとも各々自分の想像の中で好きになったりする、そんな不思議な状況が生まれている訳だ
とても素敵なことだと思う

洋楽の歌詞が薄っぺらくて聴く価値がないと言っているわけではない
歌詞の素晴らしい音楽なんて世界中にあると思うし、あくまで傾向や偏向でそうではないかと思うだけだ

しかし、明確に歌詞の表現については違いがあると思う
端的に言えば洋楽の歌詞は直接的に言葉にされる
これはもう言語レベルで生まれている違いだろう
文章が直接的なのだ
例えば僕が最近よく聴くこの曲

一番の歌詞を載せよう(長いので読み飛ばしても可)

Used to be vulnerable
Used to be dumb
I used to give it all, mm
Hot like a Firestone
One hundred degrees
Oh but now I’m so cold when they kiss me, they touch me, they freeze
They say

Why’d you never trust
Why’d you never love
Why’d you never let ‘em in?
Why’d you wake up
With somebody in your bed again?
And say you love them till you leave
Why you out so late
Dancing with your fake friends
Getting in a state?
When the good guys come why’d you run away?
Why’d you hurt them?
Well I’ll tell you

When you’re young and you get your heartbroken
And he leaves, leaves the scars open
When you can’t believe it’s over
That’s when you get a little colder
Yeah, when your heart’s broken
And he leaves, leaves the scars open
Drunk cry-crying on his shoulder
That’s when you get a little colder

すっごく簡単に言えば、
「人に『すぐに誰かと寝るくせに、真摯に人を愛さないのはなぜ?』と言われる。昔すべてを捧げて愛した人がいたけど、失恋の傷から人を信じられなくなって私は心が冷たくなってしまった」
みたいな曲

歌詞がすごくナイーブなことを取り上げているのに、歌詞の一文一文がとても直接的じゃないだろうか
これがうまい例えかは分からないが、洋楽特にアメリカの音楽にはそういった印象を受けることが多い
それもめちゃくちゃ好きだけど、文化圏のちがいだなあと思うことは多々ある
(他文化の人間が住む以上、そういった伝え方になっていったとも言えるかも)

本題に入ろう
一年ほど前、英語で書かれているのに日本の歌詞を歌っていると衝撃を受けた曲がある
MitskiのPink in the nightという曲だ

彼女はニューヨークで活動している日系アメリカ人で、国籍的には日本とのハーフ
その影響もあるだろうが、70年代の邦楽を好んで聴いていたらしい
この曲の歌詞がとても洋楽らしくなく、美しい
短い曲なので一度聴いてみて欲しい
以下が歌詞だ

I glow pink in the night in my room
I've been blossoming alone over you
And I hear my heart breaking tonight
I hear my heart breaking tonight
Do you hear it too?
It's like a summer shower
With every drop of rain singing

"I love you, I love you, I love you
I love you, I love you, I love you
I love you, I love you, I love you!"

I could stare at your back all day
I could stare at your back all day
And I know I've kissed you before, but
I didn't do it right

Can I try again, try again, try again
Try again, and again, and again
And again, and again, and again?

とても簡単な言葉だけを使っているのに、一文一文が間接的で、聴き手の想像に委ねられる
僕のこの曲に対するイメージで訳すとこうなる

夜の部屋で朱に染まる
あなたを慕って咲いている
今夜失恋をしたの
崩れ落ちる音が聴こえた?
それは夕立のように降り落ち
雨粒となって歌っている
貴方が好き、貴方が好き、貴方が好き
貴方が好き、貴方が好き、貴方が好き
貴方が好き、貴方が好き、貴方が好きと
貴方の背中をずっと眺めていたい
貴方に口づけをしたけれど
ちゃんと出来てなかったみたいだから
もう一度試させてくれない?
もう一度、もう一度、もう一度
もう一度、もう一度、もう一度

簡単な言葉からたどり着いた意味自体に含みがある
夜自室で誰かを想い朱に染まること
あなたを想って咲いているという発想
夏の夕立のイメージ
失恋してバラバラになった心が雨粒のように砕け落ちて、その一粒一粒が愛していると歌っている、という描写
ずっと背中を見ていたくなる誰か

とてもシンプルな歌詞なのにその切なさが伝わってくる
一文から想像されるイメージが身に迫る
言葉以上の感覚が伝わる
本当に素晴らしい歌詞だと思う
同時にこの表現は洋楽であまり聴かない表現で、なんとなく最近の宇多田ヒカルを想起させる

「バラバラになった心の破片が、それでも愛していると歌っている」
その一文だけでもこの人がどれだけ人を愛したかわかってしまう
辛い
素晴らしい歌詞だ
是非聴いて、イメージを膨らませて欲しい

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