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好きなネタの話『イッセー尾形さんの「幸せ家族」』

「自分のネタの話か他の人のネタの話しかしないのかこいつは」と思われそうですが、そうです。はい。すみません。

でも、こういうことを語る場所って芸人同士でも意外とないんですよね。最近のネタならまだしも、昔のネタの話ってわざわざしませんから。
(もしかしたら自分以外の芸人さんは飲みに行ってワイワイそんな話をしてるかもしれませんが、一旦目を逸らしておきましょう。向き合うべきじゃない現実もありますから。) 

そんなわけで「自分の好きなネタは何かな〜?」と考えるときに、いつも最初に出てくるのがイッセー尾形さんの「幸せ家族」です。

どれぐらい好きかというと、好きすぎてノートに台本を一から書き出したことがあるほど!好きなのです!
見たことのない人は、なんとかtubeとかホニャララ動画とかにあるかもしれないので見てみてください!ちょっと長いネタですが関係ありません!見ましょう!
知り合いのお笑いファンに好きなネタ聞かれて、このネタ答えたらドヤれますから!
もし「そういうんじゃないんだけどな…」って空気になったときは、うん、まぁ、その、残念でしたね。

だいぶ古いネタなのでここからはネタバレとか気にせず書いていきます。
それがイヤな人は見てから戻ってきてくださいね。


しかし、これ一体いつごろのネタ何でしょうかね?
たぶん1990年代のネタだと思うんですが、何なんでしょうかこの完成度!
今この令和でも、ライブでこんなネタやってる人いたら一瞬で注目されますよ!この尺のネタやるライブがあるかはわかりませんが。

人力舎の養成所に入る前から好きだったんですが、自分でネタ作り出してから改めてすげー!と思いましたねー、ええ。
養成所で「どんなネタやりたいの?」と講師の人に聞かれたときにこのネタを挙げたら、「1年じゃ無理だと思うからもうちょっと手っ取り早いのをやろう」と言われて、ちぇ!っと思いましたが今思えば正しい判断でした。
こんなん1年目の演技力でウケるわけありません。というか、今でも無理です。はい。

どうやったら「家族旅行でちょっとテンション高い父親」というだけの設定でこんなにいいネタになるんでしょうか。
どれだけの演技力とどれだけのディテールを詰め込めばいいのでしょうか。
ただのおじさんを、なんでこんなにも魅力的に描けるんでしょうか。
あぁ、もう、勘弁してください。

ここからはひたすら「ここのディテールいいよねー」というのを書き連ねていきます。付いてきてくださいね。



  • 夕日に感動して「うわぁ、すげぇ!」の言い方1つでこのおじさんの可愛らしさを出せるのすごい!何でもないセリフでもこういう目立たせ方が出来るんですねー。

  • その後急に性格悪いとこやら決めつける感じ出てきてキャラクターが奥深くなる!「変な人だね」のいやらしい言い方マネしたい!

  • 妙に仲居さんに話しかけるオジサンの感じ!オジサンの余計なコミュニケーション能力の高さ!

  • 子煩悩なんだろうなーっていうのが伝わってくる色んなディテール!「んふー!」っていう笑い方いいなぁ。

  • 「天つゆが後でね」とかこういう必須じゃないセリフ好きなんですよねー、ネタに入れたくなる!そして何にも伝わらない空気になることがよくあります。すみません。

  • 子どもに飲みたいもの聞いて「ポカリスエット?せっかく旅行にきたんだからさ、ジュース飲めばいいのに」っていうポカリをジュースに含まないなんかちょっとズレたオジサン感!それともこの時代はポカリはジュースじゃない感じが一般的だったんですかねぇ?

  • 「お前もご苦労さん」のセリフで母親の言ったことを想像させるのは1人コントならではの見せ方だなー。劇団ひとりさんの「オーディション」のネタの「ジャニーさんですか?」のセリフ一発で設定を伝えるやり方にも通ずるものがあって好きです。

  • 子どもに頭良くなるから銀杏食べなさいって言うのが面白くなるのは、すでにキャラクターが伝わってるからですね。あぁ、凄い。いやだいやだ。

  • 茶碗蒸し食べて「ちょっとぬるいけど美味い」っていう旅館のご飯のディテールなんなんでしょうかね。わかるけど言わなくていいよっていう何でもないセリフ。あぁ、素晴らしい何でもないセリフ。

  • 昼に食べたのが「菓子パン1個だもんな」ってセリフも別にボケてないのに面白いなぁ。旅行のあるあるといえばあるあるだけど、何でだよ!ともなる絶妙なところ。

  • このネタで自分が一番好きなセリフが次のセリフ!「おいしいよ、だってカニだもん!」こんな小市民なセリフがあるでしょうか!食べ方も行儀悪いけど美味しそうで、後でこのネタを思い出したときに頭の中ではイッセー尾形さんが本当にカニ食べてるんですよね。いやー、美味しそうなカニだ。

  • 会社でのオジサンと家族といるときのオジサンの違いが出る電話のシーン。リアリティがあってすごいなぁ。意外と会社では頼られてる感があるのが人間ってこうだよなー、いろんな面あるよなーと。「はぁ、はぁ、はぁ、へーへーへー。」の相槌の打ち方もリズムが気持ちよくてやりたくなります。

  • 「なんで電話してくるかなぁ」のセリフ繰り返しながらだんだんイライラしてくる感じ!この後のしっかりテンション落とすのもネタでやるには意外と勇気いるから見習いたいけど、ただやると盛り下がるだけで危険なので皆さん気をつけましょう。

  • エビのグラタンの皿が熱くないんだよなー。やっぱりこういう笑い声が上がらない面白さって好きだなー。茶碗蒸しのときもそうだったし、火をつけるときもそうだったけど、このオジサンの気にする部分がとことん外れてて愛らしいなぁ。

  • 「幸せ家族が映ってる」っていうオジサンのダサさ!あー、かわいい。

  • 基本的に起きてることは「旅館の飯が多い」ってだけですよ。そんな小さなことでもこんなに面白く描けるんだから、まったくもう。

  • 「たっくんソース、下から〜」って何でもないことなのに!このオジサン過ぎる!ここも個人的に相当好きなくだりです。

  • 口の中確認するときな下品なマイムが、もう!人間がいる!と思わされます。見せ方で面白くなるんだなー。

  • バタバタバタっていう違和感のある動き方なんなんですかね?初見は急にどうした?と思うんですけど、思い返したときに良い意味で引っかかるシーン。こういう変さを自分たちのネタにも取り入れたい!

  • トンカツの中に足突っ込んだ絵が見えるんだよなー。千切りキャベツのとこだろうなー。

  • 「置いときましょうよ〜」の言い方で、サラリーマンだなーこの人って感じ出すのが、また!こういうその人の中のいろんな面が混ざっちゃうことってあるなー。ネタで伝えるの難しいのにサラッとやってるのが恐ろしいですね。

  • もう一回バタバタ動いてお腹が痛くなるくだり。余計なことするから!お腹痛くなるきっかけとしてはそんなに自然じゃないはずなのに、動きに違和感があるからすんなり飲み込める不思議。

  • この辺からこれまでの要素の畳み掛けになってくる構成の素晴らしさ!今どきのコントにも通ずる終盤の盛り上げ方の基本さえ押さえてるという恐ろしさ。こんなネタなら地味にしっとり終わってくれてもいいのに。終盤の畳み掛けまでやるんかい!という、ね。正しすぎて困りますね全く。

  • バタバタしながら挟み込まれる「おいしいねー」「楽しいねー」というセリフが哀し面白さ!必死にそう思い込もうとしているオジサンの哀愁が詰まってるセリフだなー。



とまぁ、こんな感じで、このネタが好きということ以上でも以下でもない話でした。
我々のネタで一見すると必要ないセリフがあるときは、大体このネタの影響です。伝わらないことが多いのはわかってます。すみません。
でも、好きなものへの憧れをやめない為に今後も続けると思います。いつか伝えられますように!

それでは、また。
バイオニの松元でした。



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