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「にぎって!プクミー」新発売!ここ19年を振り返る。

バイバイワールド代表の髙橋征資です。2024年7月6日にバイバイワールドが開発に関わらせていただいた新感覚おもちゃ「にぎって!プクミー」のブルーノとピンキー、そして「にぎって!プクミー ミニオン ボブ」がバンダイさんから発売されます。

このおもちゃの商品化は、2020年4月にバンダイさんに簡易試作を提案したことがきっかけで始まりました。担当のIさんを中心に、企画の見直しや試作の作り直しが何度も行われ、そこまでやるのか!というほど綿密なコスト計算、マーケティング戦略の数々…
我ながらおもしろい仕組みのおもちゃができたぞ、という手応えは持っていましたが、実際に現在の形に落ち着き、商品化に至ったのはIさんの情熱とバンダイのプロフェッショナルな方々のご協力があったからこそです。

そんな「にぎって!プクミー」ですが、ベースとなる「にぎって操作する」という面白さを発見したのは、ボクがまだ大学の学部3年生だった頃、19年前の2005年まで遡ります。

「にぎって操作する楽器」の開発

大学生の頃のボクは、果敢にもロックスターになることを夢見ていました。バンドサークルや電子音楽のサークルに所属しオリジナル楽曲制作に取り掛かるも、自分の才能のなさに絶望し暗く悶々とした日々を過ごしていました。

しかしその頃、マイコンを使った電子工作の授業に出会い、幼少期からものづくりが大好きだった自分を再発見します。音楽への情熱を捨てきれなかったボクは、自作の楽器を作り始めました。当時はウェブで見つけたテルミンの回路を参考に、秋葉原で電子部品を漁り、見よう見まねでユニバーサル基板に実装して演奏を楽しんだものです。

自作テルミンを電子音楽のサークルの人たちに見せて満足していたところ、先輩の魚住さんが「テルミンはええけど、もっと新しい演奏方法の楽器作った方がええやろ。にぎって演奏したらおもろいんちゃう?」とアドバイスをくれました。いいなそれ!と思って作ったのがこれです。

にぎって演奏するコントローラー(2005年)

この楽器は、圧力センサー(FSR)を内蔵したスポンジボールを握ると、音がグニャ〜っと変化する「にぎって演奏する楽器」です。にぎった瞬間にグニャ〜っと音を生成したり、音楽を再生中にぎゅっとにぎると同時に再生速度を下げ時空を歪ませたり。レコードプレイヤーを指で触ってグニャ〜となるあの感じです。この奏法で、一青窈の楽曲再生中に玉をぎゅっと握ると…あれ!?平井堅になっちゃった!というネタをよく披露していました。

そんなこんなでしばらくこの「にぎる楽器」を楽しんでいましたが、そもそも「やわらかい装置」自体がおもしろいんじゃないか?と考えるようになりました。やわらかい特徴を持った装置は滑稽であり、艶かしく、そして怪しい魅力があります。想像の膨らんだボクは、これらの特徴を前面に出したよりディープな装置の開発に取り掛かります。

「やわらか音響生命体bogs」の開発

にぎる楽器がより艶かしく怪しく、妖怪のような存在感を持って生まれ変わったのがこちらの音響生命体bogsです。玉をにぎると、フォルマント合成で生成されたうめき声が生成されます。

はい、超絶不気味です。
こちらデンマークで開催されたコンピュータミュージックの国際会議でパフォーマンスした時の映像です。パフォーマーは当時のバンドメンバーです。艶かしく怪しい肉の生命体なので半裸ですが、そこはお相撲さん的な見方で捉えていただけますと幸いです…
仕組みを説明しますと、人肌のゲルで成形したやわらかい中空のオブジェに空気圧センサーが内蔵されており、にぎった際の内部の空気圧の変化を読み取ってうめき声をコンピューターで生成しています。また、加速度センサーも内蔵しておりブインブイン振り回すと音が高くなったりします。

これが、なぜか海外でウケ、SIGGRAPH 2007 Art Gallery、NIME 2007、ICMC 2007と国際学会で研究成果を得ました。想像力はとどまることを知らず、新種も増えていきます。

ディープすぎるので一部モザイクかけてます。

そして、吉本興業の主催する世界初の笑えるロボットコンテスト「バカロボカップ2007」に出場しました。審査員に明和電機の土佐社長と、当時電気通信大学の教授だった稲見先生(現東京大学教授)がいたので張り切りました。ちなみにこの出会いがきっかけで、1年後に土佐社長に声をかけていただき明和電機さんで制作アシスタントとして働き、2年後に慶應義塾大学の稲見研究室に博士課程の学生として所属することになります。

修士論文もこれで書きました。「人工筋肉・人工皮膚・人工音声を組み合わせた動的・触覚的インタフェースに関する研究」です。

といった具合で研究成果・アート作品として一定の評価は得たものの、なんか自分の思ってた方向と違う気がしてきました。何より暗い。暗すぎる。金もない、未来も見えない、自分が何者かもわからない苦悶が沸騰して吹きこぼれています。

ここまでやりきって、徐々にこんな気持ちが芽生えました。「苦笑いじゃなくて普通に笑顔になるものが作りたい…」

そこで、大学院修士課程に在籍中、吉本興業のお笑い養成所NSCの作家コースに通い出します。また、前途の通り明和電機さんで制作アシスタントとして働き始めます。

ということで、気持ちを切り替えるべく、bogsシリーズは自分の中で封印しましたとさ。

「にぎってあそぶ玩具」を検討

その後、博士課程にて拍手マシンを研究開発し単位取得退学した2012年、無職(よく言えばフリーランス)になりました。なんとか生きていかなければとオリジナル玩具の開発に取り掛かりました。パチパチクラッピーの試作はこのとき完成しましたが、実は同時に「にぎってあそぶ玩具」の試作も進めていました。

いろいろとやってみたものの、マイコンでの音響生成ソフトウェアの実装、ゴム成型、中空設計などなど自分には困難で断念…そのままお蔵入りとなっていました。

2020年になって「にぎってあそぶ玩具」の簡易試作が完成!

その後、Pepperやらビッグクラッピーやら、なんやかんやあって2020年にもなるとバイバイワールドにはエキセントリックな仲間が増えました。ちょうど新型コロナで暇になったので「にぎってあそぶ玩具」の試作をまた作ってみることにしました。これがうちのマッドエンジニアのおかげですぐに完成!

なんじゃこれ、めちゃくちゃおもしろいじゃん!
ということでどうにか商品化できないか検討を進めます。

思い切ってバンダイさんに提案

この「にぎってあそぶ玩具」の試作、ソフトウェアの課題はクリアしましたが、ゴム部の成形と密閉構造といったハードの設計がとにかく困難です。また、玩具としての売り方も我々は疎いところです。これは玩具メーカーさんに提案し製造販売してもらう必要があるな…ということで思い切って、かねてよりお付き合いのあったバンダイさんに提案してみました。

そもそも幼少期のボクはコロコロコミックだいすき少年です。ハイパーヨーヨーは地元で誰よりも早くすべての技をクリアしたプロスピナーです。幕張で行われたハイパーヨーヨーの全国大会に中学校を休んで前日入りで出場し、あっけなく予選敗退したレベルです。(担任の先生に技を見せつけたら、すごいから学校は休んでいいって言ってくれました。)それだけにバンダイさんとのお仕事は熱が入るというものです。

常に財布にいれてます。

以前からバンダイのIさんから世界で売れる玩具の企画あったらぜひと話がありましたので、こんなん作ってみたんですよ〜とこの簡易試作をひっさげ提案したところ、反応良好。Iさんの情熱とバンダイのプロフェッショナルな方々のおかげで、なんだかんだで4年かかって発売までこぎつけました。もみくちゃにしちゃって!というコンセプト、ゲームモードの追加など共同開発によってあそびの幅がさらに広がりました。

©︎BANDAI・BBW ※BBWはBYE BYE WORLDの略
ですよ!感無量ですわ。

「にぎって!プクミー」が広く長く愛される商品になるよう、バンダイさんとじっくり育てていきたいと思います。