近況報告

前回までのあらすじ(書いてない)
酒浸りのまま返答のしようのない言葉を投げかけ続ける父親、ろくに会話することもなく何を考えているかすらわからない弟、ときどき自分が某国の暗殺者に命を狙われていると真顔で告げる母親と一緒の空間にいることに精神的に疲れ果てた折、ひどい頭痛に襲われて職場を早退している間にスイッチが入り、家族に懇願して実家からの転出を決意した。
自分の収入や資産を考慮しつつ今よりマシな環境を求めて新居を探す。いい暮らしをしようという欲が湧いてきた翌日にはいやだいぶ生活が厳しいなと不安になる。綯い交ぜになった心に急かされ盲目的に一人暮らし向け情報サイトを指で弾いて消費していき、何も頭に残らないまま、気が付いたら朝を迎えていた。
それでも前進は続けていた。賃貸契約関係はおよそひと月でどうにかなかった。一段落して振り返る。毎週遠出するエネルギーがまだ自分に残っていたことに素直に驚いた。

忙しさの合間を縫って、対面式の婚活に一度行き、マッチングアプリで知り合った方とお会いした。どちらも次に繋がるようなものではなかった。普段曖昧に捉えている自分の姿を表現することに疲れた。
相手のことを知るのに家族について質問をすることは多々あった。自分も当然家族のことを聞かれた。
「仲いいんですか」
「どんな人なんですか」
聞かれるたびに適当な言葉ではぐらかしていた。自分の感じていることをストレートに表現したらただの悪口になってしまう。それはしたくないと、30年来の頭痛を耐え忍んできた身体が訴えてくる。
家族以外の話題でも、結局僕は自分のことを話し続けることにひどく抵抗があり、気が付いたら相手を質問攻めにしていた。気が付いたところでやめられなかった。

マイナンバーカードを作っておいたおかげで、転出の手続きに地元の市役所に行く必要はなくなったらしい。欠陥だらけのシステムが見直しに入らないうちに利用させてもらいたい。
期待と不安はもちろんまだ混ざっていて、それでも今は期待の方が大きい。やりたいことなどはないけど今よりはいい生活をしたい。
そんな具体性のない期待にすがってでも、まだエネルギーが出せる今のうちに、自分を救いたくなった。

落ち着いたらまた報告します。

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