皇居の電線は俺が張ったんだ、と祖父は語った
祖父が亡くなったのは2年前の年明け間もないときだった。
唐突な報せだったが、年の瀬にあいさつした際に随分苦しそうに呼吸をしていたので、予感はあった。コロナ禍の最中だったので、病院に搬送されてからすぐに隔離されてしまった。そのせいで死に目に会えなかったと、未だ健在な祖母がたまに恨み言をする。
息を引き取った祖父の寝姿はとても安らかだった。その様子を見て、もう何年、何十何年も祖父の穏やかな顔を見ていなかったことに気づいた。祖父の印象には、厳めしい顔で苦しそうに咳き込んでいる