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エレクトリック・オカルティズムの時代(『STUDIO VOICE』2008年12月号)

70年代末から80年代にかけて『タオ自然学』をはじめとする多くの精神世界/ニューエイジ関連書籍の翻訳が出版され、数年遅れのシュタイナーやグルジェフのブームが到来した頃、LSDのアイコンことティモシー・リアリーは自作ソフト「マインド・ミラー」を片手にコンピュータにカウンター・カルチャーの最終形態を見出した。元ヒッピーのジョブスとウォズニアックがパーソナル・コンピュータMacintoshを発表し、60年代末に出た巨大カタログ『Whole Earth Catalog』の編集長スチュワート・ブランドが大規模通信ネット「WELL NET」を立ち上げたのは、偶然にもジョージ・オーウェルが警笛を鳴らした「1984年」のこと(*註)。翌年には60年代のサイケデリック・イベントのことだった「マルチメディア」を冠したラボがサンフランシスコに設立され、ジャロン・ラニアーが「ヴァーチャル・リアリティ」を提唱し、インタラクティヴの重要性を打ち出す。ドラッグが担っていた自己改革・身体拡張への幻想はコンピュータへ受け継がれ、60年代に敗北したかに見えたヒッピー達は、デジタルという武器をひっさげて逆襲しにきたのである。

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