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掲示板文化の今後(2002年7月『2ちゃんねる中毒』)

草の根通信からインターネットにわたって存在した掲示板
その誕生から現在までを解説

ここでは日本における掲示板の歴史を見ていこうと思う。ひとまずその舞台である、パソコン通信とインターネットの違いから簡単に説明しておこう。

パソコン通信とインターネットの違い

パソコン通信(以下パソ通)は、ある一つのコンピューター(ホスト)に他のパソコンを繋いでネットワークを作る、一極集中型のコミュニティである。電話回線を利用して直接ホストに接続するため、ホストが遠くにあればあるほど電話代がかさむ。「当時はみかか(NTTの俗称……かな入力で「NTT」と打ってみて下さい)に月ん万円払ったよ」という話をする古株を見たことはないだろうか。それ故、普通は自宅地域周辺のホストに繋ぐことになり、結果、地域ごとの閉鎖的な雰囲気を生んでいた。

対してインターネットは、世界中のコンピューター(サーバー)が互いにつながっている分散型のネットワークである。われわれはそのネットワークの入口(プロパイダー)につなぐだけで世界中あらゆる場所の情報を引き出せるので、電話代・距離・地域を意識する必要はなくなった。

パソ通のホストという役目は、別に特殊な才能がいる訳ではなく、ホストプログラムさえあれば個人でも運営できる。ならば実際に運営しようとする人聞が現れてもおかしくはないだろう。そうした、ニフティサーブ(現@nifty。以下ニフティと略す)やPC-VAN(現BIGLOBE)等の大手商用ネットとは違う、個人運営の小規模なパソ通ネットを「草の根BBS」と呼ぶ。このBBSを運営するためのホストプログラムと呼ばれる専用ソフトウェアが、現在のインターネットにおけるブラウザー・掲示板CGIだと考えて頂きたい。

草の根通信石器時代

まず九〇年代前半までの「草の根BBS」時代、使用されたホストプログラムにも流行があり、初期は「WWIV」「KTBBS」に代表される時系列表示のシンプルなものが主だったが、次第に「BIGMODEL」やアスキーネットの「ハイパーノーツ」、「mmm」に代表される、階層構造形式が主流になっていく。

それまでのホストでは、アニメの話も野球の話も地域の話もすべて同じ場所で並行して行われていたが(2ちゃんねるの全住人が、一枚の板で話を続けるようなものである)、階層構造を持つことにより、ジャンルごとに話題の細分化が可能になった。イメージとしては現在のYahoo!掲示板が近いかもしれない。

また「絵理香K版」というホストは、他の「投稿は一件ずつ表示」タイプと違って、レスが親記事の下に追加され、読むときはそれらがまとめて表示される、スレッド型掲示板の先駆けとも言えるものであった。

ニフティ時代の騒乱

ここら辺で話をニフティに移す。ニフティの掲示板には、文通コーナー・売ります買いますといったよくあるジャンルが並んでいたが、その中の8番(通称BBS8)の「スピリッツ(こころ)のコーナー」はシスオペ(今で言う管理人)が前に出ない、悪く言えば管理がされていない場所であったため、差別ネタや宗教ネタが多く飛び交う無法状態の掲示板であったという。

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