見出し画像

20世紀コギャル雑誌アーカイヴ

プロローグ

(展覧会とかで入ってすぐに書いてある文章風に)

本日は「20世紀コギャル雑誌展」にお集まりいただきありがとうございます。本展は主に20世紀、とくに1990年代を中心に発行されていたコギャルを読者対象とする雑誌を蒐集・展示し、その歴史的/現代的意義を検討するものです。

コギャルとは1990年代に流行したある種の女子高生を示す俗称です。もとはディスコに通う女子大生を「イケイケギャル」と呼んでいたのに対して、ディスコに入場できない年齢の、格好だけ(イケイケ)ギャルの女子高生に対して、ディスコの入り口に立つ黒服が使っていた隠語でした。「カッコ・ギャル」略して「コギャル」と言われましたが、のち「高校生ギャル」「子ギャル」「小ギャル」と説明されるようにもなり由来がはっきりしません。いずれにしても大人の「ギャル」と未成熟な「コギャル」という対比であることは変わりません。彼女たちが読んでいた、彼女たちを取り上げる雑誌。それを本展では「コギャル雑誌」と総称します。彼女たちはコギャルを自称せず、自らを単にギャルと呼びましたが、コギャルという言葉に染み付いた1990年代の時代性を考慮し、ここではあえてコギャルと呼ぶことをご了承下さい。

20世紀の終わり、1990年代は、雑誌が文化を先導できた最後の時代です。4月に出るのに5月号。来月の、つまり未来の情報が載っている。次の流行を知るには雑誌をチェックしなくてはいけない。雑誌はそんな印刷物だった、と説いたのは山崎浩一ですが、とくにコギャル雑誌においては流行をチェックする機能に加えて、雑誌に自分の写真が掲載されることは大変なステータスであり、雑誌に載れば特別な人になれるのであり、雑誌に載っている噂話はリアルである……そんな共同幻想が信じられていました。誰もがとにかく雑誌に載りたかったのです。

しかし90年代が終わる頃、インターネットやケータイ電話が大衆化し、人々の情報入手経路が変わっていくことで、共同幻想は霧散していきました。注目すべき人やアイテムを知るために人々が雑誌を後追いしていた時代は終わり、雑誌が人々の流行を後追いする時代がやってきます。

本展は決して、すばらしい雑誌ばかりだったと言うつもりはありません。創刊時は読者が作る雑誌という意識が強くとも、号を重ねるごとに記事はどんどんファッションブランドの記事広告に汚染され、また読者も最新アイテムやショップ情報を安易に求めたために、読者のリアルよりも業界のリアルが反映されていくだけになりました。路上スナップ写真も、雑誌が載せたいと思うような人ではなく、雑誌に載りたいと思うような人が集まるようになり、縮小再生産の道を歩むようになります。結局のところコギャルのリアルとは“最新”や“流行”を求めるよう飼いならされた“賢い消費者”でしかなかったのでしょうか。

本展に並べられたコギャル雑誌の多くは、国会図書館に所蔵されておらず、また、アーカイヴという意識が希薄な読者層/出版社に支えられていたために、現存数が少なく、古書価格が高騰し、歴史を辿ることは年々困難になっています。本展が再検証のきっかけの一つとなれば幸いです。

***

……などとマジメに書こうと思っていたが、ようは1990年代のコギャル雑誌/高校生雑誌が貯まってきたからちょっと記事にしてみたわい、ということである。最近人にコギャル雑誌が結構集まったという話をしたら、「じゃあどっか小さいギャラリー借りてギャル展やったら?」と言われたのがきっかけだ。残念ながらそんな展示をやるほどの量ではないが、もしギャル展なんてやってたら絶対見に行きたい系の展示なので、需要はあるんじゃないかとは思う。なので下記はギャル展をやるならこの辺は展示されてるだろうなーというコギャル雑誌の一覧だと思ってほしい(18禁はありません)。

コギャル雑誌/高校生雑誌は超有名雑誌を除いて基本的に短命なものが多く、しかも「読者層があまり雑誌を残しておくタイプではない」「国会図書館にマメに入れるような出版社から出てない(多くはエロ本出版社から出ていた)」「古本屋側もこうした文化をあまり好きではないため買取査定額が低く市場に出回らない」という三重苦のために、入手どころか閲覧さえ難しいものが多い。この中には10年以上捜し続けたものもある。載ってるのは本当に時代の空気としか言いようのないもので、何か特別な情報があるかといえば、ない。自分は渋谷系研究の一環で、90年代の渋谷の空気を思い出すために集めていた。

「日本新語・流行語大賞」に「援助交際」「ルーズソックス」「チョベリバ/チョベリグ」「アムラー」が選ばれた1996年前後から始まる、女子高生が先端だったあの時代。80年代のおニャン子クラブみたいな女子高生像とも、“美白”が流行した2000年代以降のスマートな女子高生像とも違う、90年代だけに存在した「茶髪にメッシュ」「日焼け」「短いスカート」「ルーズソックス」のいずれかを特徴とする彼女たち固有のムード。忘れたくても思い出せない、そんなコギャル雑誌/高校生雑誌の時代を振り返りまSHOW!!

***

続きをみるには

残り 10,846字 / 21画像

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?