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飯塚被告は本当に「上級国民だから国に守られてる」と言えるのだろうか?

始めに

皆さんは池袋暴走事故をご存知でしょうか。
知ってる人の方が多いでしょう。アクセルとブレーキを間違えた老人が若者2人を轢き殺した、悲惨な事故です。

悲惨なのは勿論、おそらくこれは防げた事故でもあると思います。高齢であり交通機関の発達した都会に住み、立場的にも金銭的にも不自由はそうないであろう被告。だというのになぜ免許を返納しなかったのか。誰も被告を止められなかったのか。議論の余地があるでしょう。

しかし最近は、いやかなり初期から、批判の仕方があまりにも的外れであると感じることが多々あります。よく言われている「上級国民だから国に守られてる!」というあれのほとんどです。はっきり言ってあれは陰謀論に近いとさえ感じます。

ここでは「上級国民だから」と片付けられがちな、よく見かける不満や疑問をQ&A方式で説明します。自分自身、大学で法学や倫理に少し触れている程度の素人で、中にはネットで調べた知識もあるので間違いがあったら指摘していただきたいです。


・なんで逮捕されないの?

→これはよく見かけた疑問ですが、逮捕せずに起訴し、判決を下すことが可能だからです。世の中には意外と逮捕されない事例も多いのです。

そもそも逮捕とは逃亡や証拠隠滅を防ぐためまだ起訴されてない被疑者の身柄を拘束するもの。

起訴とは正式に検察が事件を裁判所に訴える(これにより裁判が始まる)ものです。

被疑者が入院中ならば逃げることも隠蔽することもできないので逮捕無しに起訴されるのは妥当です。

・事件後、一部のネット百科で編集制限がかかったのはなぜ?

→世間を騒がせる事件や問題が起こると誰でも編集できるネット百科は荒らされる傾向にあります。荒らしに対しサイトの関係者や管理者が制限をかける事自体は珍しくありません。(被告および関係者からの要請があったかどうかは不明ですが)


・なぜ「さん」付けで報道してるの?

→これも事件直後によく言われたことですが、飯塚氏はあの時点では容疑者でも被告でもないためです。

被疑者…起訴されていないが、事件への関与が疑われている人間のこと。逮捕前のものも含む。
被告人…正式に起訴された人間のこと。
容疑者…マスコミ用語。基本的に被疑者と似ているが、基本的に逮捕前の人は当てはまらない。
を指します。

三者に共通するのはまだ犯人とは確定していない人間ということです。そして逮捕も起訴もされていない時点ではマスコミ的には基本「疑わしい一般人」なのです。

逆に言うとそんな時点で実名や地位を報道しているのは見方によっては過熱報道とも言えます。報道面に関してだけ言えば、上級国民だから守られている〜というのは現状とは真逆なのです。

実際裁判が始まってからは飯塚被告と呼ばれています。これはネットで叩かれたから呼び方を変えたためではなく氏が起訴されたからです。

※全然関係ありませんが、基本的に被害者は「男性」「女性」と、被疑者や容疑者は「男」「女」と報道されます。(昔これを知らずに「女性を殴った犯人の男は〜」というのを男性差別だ!と言っていた人がいたので)


・なんで無期懲役や死刑にならないの?

→ 過失運転致死傷の法定刑は「7年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金」です。

要は被告に求刑された禁錮7年は過失で交通事故を起こした犯人に課せられる禁錮の中では最も重い罰なのです。

世間を騒がせた、被告が気に入らない、被告の態度が悪い、被害者が可哀想といった理由で法定刑を超える判決を下せるのであれば司法は絵に描いた餅となってしまいます。

逆にいうと禁錮7年ではなくより重い懲役7年にすべきではないか、という意見ならば理にはかなっていることになります。

※補足ですが、危険運転致死傷罪ではありません。アクセルとブレーキを間違えるような高齢者がプリウス運転している時点で確かに危険ではあるのですが、これは主に無免許や違法薬物を使う等“その状態で運転している時点で法に引っかかる”ケースや、故意で事故を起こしたケース等が当てはまります。詳しくは調べてみてください。

追記:9/2 最終的に実刑判決は禁錮7年ではなく5年となりました。


・こんな奴に弁護士をつける必要はない!時間をかけすぎださっさと有罪にしろ!

→日本では事件がどんなに悪質だろうと被告がどんなにクズだろうと弁護を行う権利が保証されています。弁護士を雇えない人ですら国選弁護人をつける事ができます。当然検察側はそれに対して反論、批判することができます。

有罪率99.9%と言われる日本ですが、それでも「疑わしきは罰せず」が原則です。時間をかけて数多の証拠を照らし合わせ様々な立場から審議した上で罪を裁くのです。

それが無くなれば公正な裁判ができなくなってしまいます。法と人権については割愛しますが、納得がいかない方にはひとまず恐怖政治や魔女裁判を想像していただきたいです。


最後に

ここに書いた事は義務教育では習わない事もあります。これが大して興味が無い人であれば知らないのも妥当です。
しかし、本気にこの事件に怒りを感じるならば、憶測で騒ぎたてて混乱を煽る前に最低限の法制度くらいは調べるべきではないでしょうか。そもそもの基準を知らなければ善悪の判断もできません。

自分は飯塚被告の起こした事故そのものを擁護する気はありません。しかし、批判するにしてもやり方というものがあると感じました。この件に限らず「批判する前によく考える」「おかしいと思ったら調べる」という事は大切だと、自戒も込めて言っておきます。

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