10年くらい前のインターネットのパズル①

日本でインターネットが普及し始めたのは1990年代後半。日本におけるオンラインのペンシルパズルコミュニティは、@NIFTY(パソコン通信)のフォーラムを先駆として、90年代終わりにかけて発達していったと聞きます。

自分がインターネットのパズルに初めて触れたのは2004年のこと。それから15年にわたって変化を見てきました。当時のことを知らない人も増えてきたので、今のうちに当時の状況を書き残しておこうと思います。

当時あったページの多くはもう残っていません。現存するものについてはリンクを張りますが、それ以外については公開は控えることにします。

パズルのおもちゃ箱

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状況:2010年消滅(インフォシーク終了)

まずはここでしょう。世界文化社系の投稿者でもあった、たぁさんによるパズルサイト。FLASHを使って画面上で解くパズルサイトで、パズルの種類ごとにクリア登録ができました。

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全75回のクリア登録パズル。読者投稿も多数

画面で解く形式とはいえ、問題は本格派のペンシルパズル(紙に書き写して解いた方がいいと思う……)。しかもパズルの種類も、ここにしかないユニークなものが多数ありました。

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日本語ヒントが衝撃的な、「気になるお隣さん」

中でも印象深いパズルがガコ2。とにかく巨大、難解、異常に深い場合分けも必要という難攻不落の一問で、5年間正解者が一人も現れなかった伝説のパズルです。

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正解者が出たのは2010年10月30日。インフォシークの撤退によって、ページが消える1日前のことでした。解いたのはパズル界の有名ソルバー、焼きもうふ氏です。

2000年代、ノ・ウサギ川端みえ氏、消滅)、Logic Puzzle斎藤貴彦氏、現役!!!)、パズルにチャレンジ!!YokoyaMac氏、現存)など、世界文化社系のコミュニティを中心に、クリア登録ができるサイトが多数ありました。多くは事前に出題日を予告するか、定期的な更新日を設けるなどして、早解きを競えるようになっていました。今のtwitterパズルコンテストによく似ているでしょうか。

パズルの館 かものはし

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状況:現存/更新休止

パズル作家さゆり西山ゆかり)さんのホームページ。パズルのおもちゃ箱と同様にクリア登録できるパズルサイトですが、それらの中でも群を抜いて難しいパズルを出題していました。

難問パズルと称して毎月1回土曜日の23:00に出題されるのですが、一位(世界パズル選手権日本代表クラス)のタイムが一時間を越える回もざらで、中にはまる一日かかってようやく正解者が出るような問題すらありました。

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ルールからして難しいに決まってるオリジナルパズル三種類
滅法難しく滅法面白い。

さらに12月には、もっと難しいパズルが出題される記念パズルが開催され、上位5名に記念品が贈られます。記念パズルに挑戦するには、その年のパズルを1問解くごとに手に入るパスワードを集め、秘密の言葉を導かねばなりません(1問ごとに少しずつヒントが増えていく形式なので、全部集めなくてもよい)。

自分も何度か記念品をいただいたことがありますが、京都のおかきの詰め合わせやフリクションカラーのセットなど、無料で遊ばせてもらっているのが申し訳ないくらいのものでした。

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全109問の難問パズルと9問の記念パズル。全問制覇はわずか6名。

かものはしのパズルは2019年現在でもこれより難しいパズルはそう多くないだろうと思えるほどで、いまなお難問パズルサイトの最高峰に位置しています。どの問題も理詰めを基本としていますので、解ける力がある人には、挑戦することを強くおすすめしたいです。

オススメ
第15回 西再度・推理するミニミニクロスナンバー
かものはし名物その1クロスナンバー(超難問多数)に推理パズル要素を組み合わせた作品。比較的解きやすく、オチもあって良品。
第65回 ナンプレ入り連続サムクロス
2ルールの合体ものですが、3x3枠が両方の役割を兼ねる美しさが素敵。これが解けたら、名物その2覆面サムクロスシリーズにも挑戦を。
える
かものはし名物その3。西山ゆかりさんにはオリジナルパズルも多いが、その中でも親しみやすさではトップクラス。難問ページには巨大サイズあり。

青竹踏まず

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状況:現存(まとめは消滅)

mixiのパズルコミュニティで育った、珍しいパズルです。原作者はさんという方で、どちらかというとニコリ系のコミュニティのようです。まとめには2005年分として、数人の作者の手で作られた102問の問題が収められていました。

青竹というオリジナルアイテムを使い、白マスに分断と連結両方の制約があるというルールは極めてユニークです。派生パズルとして青竹踏まじも発表されています(こちらもさん作のようです)。

PQRST

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状況:2017年頃消滅

トルコのベテランパズル作家、Cihan Altayが運営していたパズルコンテスト。PQRSTPuzzles Quarterly Rate Solve Tenの略で、3ヶ月に一回開催され、10問のパズルを解いて総合得点を競います。2002年4月の第1回から2005年11月の第15回まで開催されました。

参加者は100人~150人程度。トップページの右端が有志による翻訳の一覧で、いかに多くの国から集まっていたかが分かります(実際にあるのは赤字のみ)。

PQRSTはパズルコンテストと言っても、現在一般的な制限時間30分や2時間のオンラインコンテストではありません。予告された土曜日に問題ファイルがアップされ、その後の一週間をフルに使って問題を解きます。当時メジャーだった形式で、俗に一週間コンテストと呼ばれています。

一週間かけて解くだけあって問題はどれも難しく、一時間以上かかるような問題も含まれています。

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PQRST12)今ではおなじみのパズルだが、当時は出たばかり。
今ならそこまで難しくないかな。

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PQRST13)ペンシルパズルのイメージがまだ固まっていない時期でもあり、マス目を使わないパズルも散見される。

とはいえそれだけなら当然のように全問正解するのが上位陣。真に差がつくのはラスト3問のOptimizer(最適化パズル)です。Optimizerでは一般的なペンシルパズルと異なり、条件を満たす解がひとつではありません。代わりに解答盤面のスコアが計算され、なるべく高いスコアを目指すことになります。

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PQRST12)ブラックジャックをモチーフにした最適化パズル。
終了後に全員の回答が公開される。
出題者の予想を超えた高スコアになることも。

Optimizerで高いスコアを出すことは非常に難しく、差がつきやすい性質があります。こういうコンテストでは、とにかく前半の唯一解問題を早いうちに終わらせて、最適化パズルに時間をかけるのが基本戦法でした。

最近のパズルコンテストは中ランクの問題を短時間で解く能力が重視されますが、一週間コンテストでは、長めの開催期間の中で難問と最適化パズルを解く能力が試されます。上位陣も今の早解き界とはかなり違うようです。


今回はこんなところで。不定期に書いていきたいと思います。記憶違いやこんなこともあったよ、という話があったら、ぜひコメント欄やtwitterアカウントへコメントください。

実は自分も、@NIFTYやニコリ系のホームページはあまり詳しくありません。もし当時を覚えているという人がいましたら、ぜひ記事を書いてください!


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