その「特別」は、勘違いで思い込み

新型ウイルスは猛威をふるっている。
政府からイベントの開催自粛期間を、当初の予定からさらに10日ほど延期するよう要請があった。
多くのスポーツ、文化活動が取りやめを決めたなか、センバツ高校野球大会は無観客での実施を3月4日、発表した。記者会見をした毎日新聞社や高野連の発言で印象に残り、同時に違和感を覚えた言葉は「球児たちの夢を叶えてやりたい」だった。

高校野球。
夏にある選手権大会は夏の風物詩で、多くの人がテレビに釘付けになっているだろう。野球に詳しくない私も、試合結果で点差が開いていたり、よく名前を聞く学校が序盤に姿を消したりすると衝撃をうける。
高校野球が好きか嫌いかと聞かれたら、どちらでもない。ただ、最も違和感を覚えるスポーツ及び部活動は野球部、特に高校野球だ。
センバツ高校野球の開催を巡っては政府からの要請、感染者の増加、安全面などから史上初の中止が決まった。報道では「かわいそう」や「なんとかして実施できないのか」という意見もあった。

野球だけ特別なのだろうか。
サッカーも、バスケットボールも、剣道も、どのスポーツにおいても大きな大会があり、そこを目指して日々練習に励む部員は多いはずだ。文化部も同じだ。私が所属していた吹奏楽部もコンクール以外にアンサンブルコンテストやマーチングコンテストがあり、どれも全国大会までつながる。
政府からの休校要請を受け、全日本吹奏楽連盟はアンサンブルコンテストの全国大会を中止にした。私は無観客で、出演者の3〜8名だけ演奏して審査してもらえないのか、トンボ帰りでもいいから演奏させてあげられないのかと思った。
連盟の判断は、新型ウイルスの影響のほかに、「部活動は学校教育の一貫であるから休校中に大会の実施は難しい」とのことだった(と思う)。
納得できた。部活動をメインに考える学校生活を送っていたが、本来は逆だ。学校の行事のなかの、部活動。

高校野球も、学校教育の一環だ。
だから、休校要請を受けて多くの部活動の大会が中止になり、大人・プロのスポーツ大会や演奏会の開催自粛・延期・中止を決めるなか、高校野球だけ無観客でも実施、理由が「球児の夢を叶えてあげたい」は違和感を抱かずにはいられなかった。

「野球部=特別」。これは私が高校生の時からずっと感じていること。
夏の大会前になると、吹奏楽部は自分たちにとって大切なコンクールを目前に控えるなか、野球応援の練習が始まる。応援団とチアリーディングとの合わせや、攻撃と守備のときの曲の練習など。7月末のコンクール前に7月中旬から不定期に野球応援に時間が取られる。野球場までバスで1時間、試合は2時間前後、片付けて学校に帰るのに1時間以上。炎天下…思い返すと楽しい思い出が多いが、当時は体力的にも精神的にも限界寸前だった。

そもそも、なぜ野球部の応援には全校生徒で参加するのだろうか。
私の母校だけかもしれないが、夏の高校野球初戦は1年生全員、2回戦に進めると2年生、その後は希望者が応援に行くことになっていた。(吹奏楽部と生徒会は全てに参加)
部活動はたくさんあるが、全校生徒で応援に行くのは、夏の高校野球だけ。
学校教育が「野球部=特別」を実施しているように感じていた。

センバツ開催を巡って、元球児の上司と話をしていた。「開催してほしいけど、休校中で他の部活、イベントが中止するなか野球だけってのはね」で一致していた。
3月4日の無観客での実施に向けて準備を進める報道を聞き、私は上司に違和感を訴えた。
・球児の夢を叶えたいっておかしくないですか?
・なんか、ただやりたいだけって印象を与える会見
報道と私の意見を聞いて上司は言った。
「まあ、高校野球・野球部は特別だからね〜!」

たぶんそれ、勘違い。
野球に関わりが少ない人の多くは「は?なんでやるの?」って思う人が多そう。
上司はよく時間を守らない。お願いしていることを忘れる。自分に非があることも「おかしくない?せこくない?」という。
特別扱いされた結果かな、と、このとき合点がいった。

センバツが決まっていた人は気持ちを切り替えるのに時間がかかるかもしれない。
吹奏楽も同じで、予選から勝ち抜いた20校しか出場できなう。
みんな辛くて、ぶつけようのない感情で戸惑っていると思う。
夏、最後の舞台で後悔しないように、いまを乗り越えてほしい。

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