子どもを授かるまでの道のりは簡単ではない。ヒキタさん!ご懐妊ですよ。

「不妊」という言葉は、ここ数年で身近に感じるようになった。時代は昭和から平成、そして令和へ変わった。家族のあり方や結婚観も大きく変化している。
「30歳までに出産を」、「35歳では高齢出産」と聞いたことがある。私はいま30歳で、配偶者は4歳年上だ。平成31年4月、令和になる前に結婚し、結婚式が来春。子どもはそれから、と話をしている。2人とも4月生まれ。初婚年齢が30代が増えてきているが「早いのに越したことはないのでは」と焦りや不安に思うこともある。 

「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」は、49歳の作家・ヒキタクニオと、一回り年下で33歳の妻・サチが不妊治療を経てご懐妊に至るまでの紆余曲折を描く。もともと二人は子どもは作らないと決めていたが、親になった友人と話していたサチは「ヒキタさんの子どもに会いたい」と打ち明ける。驚くヒキタだったが、愛する妻の願いということもあり妊活に取り組む。初めは月経周期に合わせる「タイミング法」で一年ほど取り組んでいたが成果は出ず、サチはクリニックに通い始める。医者の指導に従いながら妊活を続けたが結果は変わらず、夫も検査することになる。そこでヒキタは女医から「精子が20%しか動いていない」と、原因が自分にあることが告げられる。ショックを受けたヒキタは夫婦そろって別の病院で再検査をするも、結果は同じだった。 

クリニックでの検査項目は、圧倒的に女性の方が多い。男性は精子を調べるくらいで、検査台で身体に負担のかかる治療を受けるのは、異常が少なくてもほとんどは女性だ。不妊の原因は女性の場合がほとんどだと思っていたが、男性だけに問題がある場合は男女ともに問題がある場合と同じ24%と言われている。妊活未経験だが、人ごとではないと身につまされる。
ヒキタは精子の活動力を高めるために、酒やタバコ、大好きなサウナをやめたり、生活の中に運動を取り入れたり精巣を温め過ぎないようにする(睾丸へ冷えピタシートを貼る)など、自身の生活を見直していく。なかには、迷信ともいわれる「桃の缶詰」を食べ続けるなどもした。私は自分に原因があったとしても、ここまで必死にできるのだろうか・・・。自分のライフスタイルを犠牲にしてまで必要なのか、その時がきたら自問自答することになりそうだ。 

妊活に悩むヒキタの周囲には、様々な人間が登場する。編集社に勤める杉浦は何人もの子宝に、浮気相手までも妊娠する。デザイナーの河野は年齢も若い夫婦でありながら子どもを持たずに生きていく選択をしている。どちらも現実には存在するし、妊活中でなかなか子宝に恵まれないヒキタには杉浦は羨ましく、妊娠する可能性が大いになる河野には複雑な気持ちを抱く。ラーメン屋の店主は、サチにはお嬢さん、ヒキタには「おとうさん」と声をかけてラーメンを渡す。年の差を感じる男女を「親子」と思い込むのも、生きた時代の違いを感じた。
さらに大学教授のサチの父は、そもそもヒキタとの年の差婚に大反対で、さらに妊活中で原因はヒキタにあると知り大激怒。昭和の男そのもののような亭主関白な態度は、平成生まれの私が最も苦手とする人間そのものだった。自分たちがこどもを欲しいかは夫婦の問題で親は関係ないというヒキタ。健康で異常のない大事な娘が検査台で身体が傷つけられるのはおかしいという父。どちらの意見もわかるから、苦しい。 

不妊治療をめぐる問題は体質や考え方だけではない。お金の問題が大きく関わってくる。人工授精が2〜3万、体外受精が40〜50万、顕微授精が50〜60万とかかる。一度だけではない。何度も繰り返していく。身体的にも経済的にも負担になる。
また、知識が十分にない人からは「試験管ベビー」と言われたり、サチの父のように「不妊治療なんてみっともない・恥ずかしい」と思われることもある。これらの情報を知ると、命が誕生するのは奇跡なんだと再確認させられる。 

サチは一度妊娠するが、途中でダメになる。つらい思いをして授かった命がなくなったと想像したら、いまの私は絶えられない。最終的にヒキタとサチはぶつかり合いながらも不妊治療に取り組み、サチの父からも理解と金銭的な援助(父から一方的な厚意)もあり、安定期を迎えて映画は終わるまで。 

結婚前に生殖能力を事前に調べるカップルがいると聞いたことがある。人の数だけ考え方はあるので正解も間違いもないが、周りの口出しは不要だと思う。結婚=数年後に妻が妊娠、という数年前の固定観念は無くなってほしい。それと同じくらい、20代後半から30代へ「結婚は?」も。
進学、就職、結婚、妊娠・・・生き方は人それぞれ。口出ししても、決めるのはその人自身。子どもがいてもいなくても、毎日幸せに生きていきたい。 

この映画は、不妊治療の一部であるが実情を取り上げることで多くの人に知識を与えられたと思う。私は多くの男性にこの映画を見て欲しい。また、不妊治療にかかる費用をはじめ負担になるものに対して制度がいま以上整ってくれればと願う。
私が妊活に向けて今からできること。それは健康な生活を心がけることだ。不摂生や運動不足など、心当たりのあることは今うちに改善していきたい。そして、子どもに恵まれなかったとしても、自分らしく楽しく生きていきたい。

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