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疑問:カルピスバターは何故白い?

こんにちは。段々と暑くなってきて、なんとなくケーキが重く感じてくる季節がやってきました。梅雨が近づくとケーキ屋さんにとっては更に面倒になってくるのではないでしょうか。今回は、そのケーキ作りには勿論普段の料理にも欠かせないバターについて書きます。

カルピスバター

さて、皆さんは”カルピスバター”というバターをご存知でしょうか。文字通りカルピスが出しているバターですが、特徴的なのはその色です。普段見かけるバターは黄色ですが、カルピスバターは白に近いです。色だけで高級感があります。またお値段がとても高いです。450gで¥1500〜¥2000くらいですかね、場所によってはもう少しするかもしれませんが、いずれにせよ業務用でなければ一般的なものの2倍以上は確実でしょう。ネットで検索すると”成城石井”や”どこで”などの関連ワードが出てくるくらいなかなか目にすることができないことから、”幻のバター”とも呼ばれているそうです。

以前パイ生地を扱った記事でもご紹介した『お菓子「こつ」の科学』には、当然製造方法を含めたバターについての記述もあります。そしてその中の1つのコラムの中で以下のような問題提起がなされています:「牛乳は白いのに、牛乳から作った『バター』はなぜ黄色いのでしょう」。これについて本書に書かれている内容をまとめつつ、カルピスバターの色について考えます。

バターの製造方法

そもそもバターとは、牛乳の中の脂肪分を固めたものです。脂質が占める割合は、牛乳で4%弱、バターで80%程度です。つまり約20倍の濃縮度合い。バター100gの製造に牛乳が2L必要という計算になります。まず生乳を遠心分離機にかけて乳脂肪分を濃縮します。生クリームになります。殺菌等の工程を経たクリームを激しく撹拌して乳脂肪の固まり(バター粒)と水分(バターミルク)に分離し、前者を練り上げてバターにします。これが製造方法

疑問への答え

何故牛乳とバターは色が違うのか

さてここからは上記の疑問について。まず読んでいて驚きだったのは、乳脂肪は元々黄色だということです。牧草に含まれるカロテノイド系色素(カロテンなど)によるもので、これが乳脂肪に溶けているらしいです。牛乳の中ではこの乳脂肪が膜に覆われていてそれらが光を散乱させるために白く見えるが、バターは攪拌等の製造の過程で膜の多くが壊れて乳脂肪がむき出しになりその色が現れる、という説明がなされています。

カルピスバター

カルピス社のHPを見てみると、「カルピス社のバターは、100年以上飲み継がれてきた乳酸菌飲料『カルピス』をつくる工程で、生乳から乳脂肪を分離する時にできる脂肪分(クリーム分)からうまれたのが始まりです」とあります。残りの脱脂乳にカルピス菌を加えて飲料水カルピスができます。つまり、製造方法だけ見れば普通のバターと何も変わりません。従って、上記の説明のみ参考にするならば「カルピスバターは何故白いの?」に対し「カルピスの製造過程で作られるから」という答えは適切ではないと言えます。何故なら飲料水カルピスの白い色とバターの色は全く関係ないからです。むしろ「バターの製造過程で余ったものを使いカルピスを作った」と表記した方が正しい理解な気もします。

ではなぜカルピスバターは白いのでしょうか。とても上質な生乳を使用しているとのことですが、それはこのバターに限った話ではないでしょう。本にはこうも書かれています:「新鮮な牧草を食べられる夏場の牛乳から作られたバターは色が濃い」。つまり、単に餌の違いによるものだということになります。いつの牧草を食べたかで乳脂肪の色が変わり、それがそのままバターに表れているのでしょう。また当然ですがそれぞれのバターに含まれている乳脂肪分の比率によっても色の濃さは違います。なので黄色いから、もしくは白いから良いバターという訳ではないみたいです。それにしてもカルピスバターは白いですが。それが高いのは餌の管理もそうですがブランドの力も大きいのかなーとも少し思いました。色々試して好みのバターを見つけましょう。今の私の知識ではこのような単純な結論しか出せませんが、普段見ているものの裏、今回で言えば科学的な側面を少しでも知ると、また見方が変わって本当に興味深いです。

終わりに

バターは色々な使い道があって便利です。ただ高い。乳製品は値段が高い。少し前牛乳が大量に余ってしまい、消費を促進するためにどこかの老舗のお菓子屋さんがプリンのレシピを公開したというニュースを見ました。それなら牛乳を沢山使ってバターや生クリームを作れば良いのではと思いましたが、どうやらそう簡単でもないみたいです。詳しくは分からないです。消費が増えて頑張っている農家さんたちが報われると良いですね。

今回は以上です。ここまで読んでくださった方がいらっしゃれば、感謝します。


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