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統計力学メモ②~ミクロカノニカルアンサンブルと温度の定義~

統計力学についてまとめてます。前回の記事を読んでない人はこちらからどうぞ。

よーし、それじゃあ統計力学について本格的に学んでいくぞー!
まずここにミクロカノニカルアンサンブルを用意します(ミクロカノニカルアンサンブルって?という人は前回の記事を読もう)。
このアンサンブルの扱いに慣れるついでに今回は温度の定義もしてしまおうか。益川さんもそういう流れで進んでるしね!

粒子と状態

と、ここでいきなり急ブレーキ。一旦細かい言葉の表現について整理しておこう。
前回私は統計力学を粒子の数を見るという表現をしたと思う。これは古典力学が粒子(点)の動きを追う学問である、という説明をしたためにそれと対応させたからだ。実際そこまで間違った説明ではない。
しかし統計力学の場合は粒子の他に、状態と言う表現をよく使う。この2つは何が違うのだろうか。

粒子とは想像がつく通り気体分子などの細かい粒一つ一つである。
対して状態とはここでは粒子が持つ速度や位置やエネルギーなどの性質のことである。

「一つの粒子を見る」と言った時、その粒子は時間が経つとあっちに行ったりこっちに行ったり、速さも変化するイメージがある。
「一つの状態を見る」と言った時、その状態自体はいくら時間が経っても動かない。時間とともに粒子がその状態になったりならなかったりする訳だ。イメージするならば状態という器があった時に粒子がその中に入ったり出て行ったりするという感じだろう。状態とは絶対的なのである。

紛らわしいわホンマ

統計力学においては大体の場合粒子を取り出して見るというより、この状態に粒子が入っているかを覗くというイメージが強いので状態という言葉をよく使うんだと思う。そして同じ大きさの状態の器には全て同じ割合に粒子が入っている、というのが等重率の原理である。

気を付けて欲しいのがこの状態の器の大きさ(状態を見分ける精度)も我々人間がどこまで厳密に考えるかに依るということである。それを割り切って考えなければ筆者のようにドツボに落ちることになるかもしれない。

日本語的に明らかに粒子を使った方がいいだろう、とか状態の方がいいだろうという時はある。それは分かると思う。ただ筆者は統計力学では状態か、粒子かを正しく区分けできていない時期があったため、そこを補填したのだ(「粒子の状態」とか「状態の粒子」とか分かりづらい)。細かくてごめんね。正直まだ分かってないかも。もっと整理できたらこの記事修正するかも。

温度の導入

さて、話の腰を折ってしまったが、ついに統計力学に足を踏み入れていく。

まず温度の定義から始めよう。温度というのは熱エネルギーの移動がある場合にのみ定義される必要がある。私たちも今日は30℃を超えるから暑いとか0℃を下回るから寒いとか温度を気にしていると思うがそれは外部との熱エネルギーの受け渡しがあるからである。

少しだけ深い話になるが、温度というのは「AとB,BとCが熱平衡であればAとCは熱平衡である」という法則(これを熱力学第0法則という)から定義されている。つまり温度計Bによって系Aと系Cが平衡になっているかを調べられるってこと。熱平衡っていう熱エネルギーの受け渡しによるつり合いは温度によって判別できるんだね!

平衡を司るのが温度


↓ここから温度を定義するよ


では早速ミクロカノニカルアンサンブルを用意するぞ!まずエネルギー$${E}$$をもつ状態の数を

$$
\begin{array}{} W(E)\end{array}
$$

とする。これはエネルギー$${E}$$の状態数と呼ばれている。系のエネルギーによって取れる粒子の速さなど(状態)は自ずと決まってくれるので、これは系の大きさを固定した時Eの関数になってくれるだろう。

2つの孤立系AとBがあり、そのエネルギーが$${E_A,E_B}$$で与えられるとすると2つの系を組み合わせた時のエネルギーは$${E=E_A+E_B}$$となる。

この時系Aと系Bが取りうる状態の組の数は

$$
\begin{array}{} W(E_A)W(E_B)\end{array}
$$

になる。また、組み合わせて$${E}$$になるエネルギーの組は一つじゃない。その組み合わせを全て考えるために$${E_A}$$を変数とみて$${E=E_A+E_B}$$から$${W(E_A),W(E-E_A)}$$という状態数の組を考えよう。こうして$${E_A}$$を動かしていけば全てのエネルギーの組を考えられるはずだ。

つまり系Aと系Bの合成系がエネルギー$${E}$$を持っていた時にそれぞれの状態の組み合わせの数は

$$
\begin{array}{} \sum_{E_A}W(E_A)W(E-E_A)\end{array}
$$

となるだろう。

図で感じろ!

これまでの議論からエネルギー$${E}$$となっている合成系において系Aと系Bのエネルギーがそれぞれ$${E_A}$$と$${E-E_A}$$となっている確率$${p_A}$$は

$$
\begin{array}{}p_A(E_A)=\frac{W(E_A)W(E-E_A)}{\sum_{E_A'}W(E_A')W(E-E_A')}\end{array}
$$

となる。粒子の数が減る、ということは考えられないから$${W(E)}$$は$${E}$$を固定すると$${W(E_A)+W(E-E_A)=const}$$を満たすような関数系であることに注意しよう。

このように単に状態の数のみによって確率を考えることができるのが等重率の原理の嬉しいところである。いつも感謝を忘れないようにしよう。

ここで熱平衡について確率の観点から考えると、最も分配される可能性が高いエネルギーの組$${(E_A,E-E_A)}$$の状態が熱平衡であるとできるため、凸性はあるだろうと仮定して(ここ雑)

$$
\begin{array}{} \frac{dp_A}{dE_A}=0\end{array}
$$

となる時を熱平衡であるとできる。これを実際に計算していくとこんな感じになる。

$$
\begin{array}{} \frac{d}{dE_A}\frac{W(E_A)W(E-E_A)}{\sum_{E_A'}W(E_A')W(E-E_A')}=0 \\ \frac{dW(E_A)}{dE_A}W(E-E_A)-W(E_A)\frac{dW(E-E_A)}{d(E-E_A)}=0 \\ \frac{dW(E_A)}{dE_A}W(E_B) =W(E_A)\frac{dW(E_B)}{d(E_B)}\\\frac{1}{W(E_A)}\frac{dW(E_A)}{dE_A} =\frac{1}{W(E_B)}\frac{dW(E_B)}{dE_B)}\\ \frac
{dInW(E_A)}{dE_A}=\frac{dInW(E_B)}{dE_B}\end{array}
$$

となる。途中$${E_B=E-E_A}$$を代入させてもらった。

熱平衡という条件から$${E_A}$$と$${E_B}$$に関して釣り合う量が出てきた!これを新しい変数の温度で定義してやろう。

$$
\begin{array}{}\frac{dInW(E)}{dE}=\frac{1}{f(T)}\end{array}
$$

ここで$${f(T)}$$は単調増加関数だとすると都合がいい。
エネルギーが大きくなるほど粒子が動き回り、取れる状態が多くなり、逆にエネルギーが小さいほど粒子は止まり、状態数は少なくなることは想像できるだろうか。そのため$${W(E)}$$も単調増加関数だろう。

すると$${InW(E)}$$は$${E}$$が大きいほど変化が小さく、小さいほど大きくなる。つまり$${\frac{dInW(E)}{dE}}$$は逆にそれぞれ小さく、大きくなる。

式の形から結論を予測する

結論この式($${\frac{dInW(E)}{dE}=\frac{1}{f(T)}}$$)は
エネルギーが高いほど左辺が小さくなる→右辺の温度は高くなる
エネルギーが低いほど左辺が大きくなる→右辺の温度は低くなる
ということになる。
温度が高ければエネルギーは高くなりそうなので直観に一致!

というわけで温度が定義できた。このような方法で出された温度は統計力学的温度と言われる。

さて、前回短くなると言ったはずだが、いつの間にかさらに長くなってしまった。正直あまり進んでいない。次回からはもう少し直観的な話を多めにして短めにしようかな。本当にやるかは知らんけど。
あ、そうだ。次回は理想気体で温度を決定してみよう。


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