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浦島太郎現代編シリーズ

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自作小説、浦島太郎現代編シリーズです。 一話一話の長さはそんなにないです。
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2022年7月の記事一覧

浦島太郎.1

若い頃に輝いて見えたことが、年を取ってからそんなにきれいなものではないと思わされる、なんてことは珍しくない──

今や一息つこうにも一々周りに配慮しないといけなくなった状況と、最近益々ひどくなってきた五十肩を重ね合わせつつ、紙巻きたばこに火をつける。この銘柄でもう4代目だ。どうも自分の好きになる銘柄は、採算が合わずリストから削られやすい。

「ふぃ~、若宮さん、お疲れ様です。」
「おう、木村、お疲

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浦島太郎.2

1はこちらから↑

(以下続き)

亡き妻、幸と最初に出会ったのは大学の頃であった。
新歓の時期に、その日の飯のために適当に参加したサークルの飲み会で、明日の飯をどうしようか、などといったことを考えていた。
当時、私は浪人しており既に酒が飲める質だったので、先輩にいい具合に目を付けられ酒をいつも以上に飲んでしまい、少々風に当たりたくなっていたことを覚えている。
「先輩、すみません、ちょっとトイレと

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