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仏像と私~私の好きな仏像編③~

「私の好きな仏像編」3回目です。

今回ご紹介するのは、奈良県奈良市は「法華寺」のご本尊・秘仏「十一面観音立像」です。

お寺の名前やこの仏像については、仏像好き界隈(?)には結構有名です。ちなみに、お姿についても割と資料集などに掲載されているので、仏像に興味のない方でも「ああ、見たことあるある!」と思われるのではないでしょうか。

それでは、旅の思い出を振り返りつつ、ご紹介していきます♪

1、「法華寺」のこと
2、なぜ、「法華寺」? 
3、十一面観音像の魅力を知る
4、出会いを終えて


1、「法華寺」のこと

「法華寺」は、聖武天皇の后・光明皇后の発願によって建立された由緒あるお寺です。光明皇后といえば、かの藤原氏の礎を築いた藤原不比等の娘。光明子とも呼ばれています。らい病(ハンセン病)患者の膿を自ら吸いだしたところ、それが阿閦如来の化身であったなどの逸話や、貧しい人々のための「悲田院」「施薬院」を作るなど慈善活動でも知られています。

正式名称は「法華滅罪之寺(ほっけめつざいのてら)」と言います。古い時代の仏教の中には、女性は「五障」を持つため、男性にならないと成仏できないという説がありました(法華経の中にもそれに由来した一説がありますが、本来の仏教にはそれを明言する教えはないそうです)。

しかし、仏教を篤く信仰していた光明皇后は、この場所を「総国分尼寺」として女性のための仏教の根本道場と位置づけ、仏教を信仰したい女性に場を開いたといわれています。

皇后自身もここで一心に研鑽を積み、「女人成仏」にお手本となったということです。


2、なぜ、「法華寺」?

仏像マニアのご多分に漏れず、私もまた、いとうせいこうさんとみうらじゅんさん(「M・J」と言えばマイケル・ジャクソンではなくみうらじゅん。仏像マニア界の常識ですね!)の大ファンでして。名著「見仏記」も全巻揃えております。(ただ、はまったのは自己流の「仏旅」を始めただいぶ後になってからなのですが…)

その「見仏記4」の中で、お2人が法華寺を訪ね、十一面観音立像についてその魅力を語った場面があるのですね。そこで、この仏像をぜひとも生で見てみようじゃないかと、訪ねて行ったわけなのです。


3、十一面観音の魅力を知る

この旅でも京都に宿を取り奈良と合わせて回ったので、京都駅から近鉄奈良線を利用。降り立ったのは「大和西大寺」駅です。地図を見ると、お寺まではほとんど一本道。せっかくだから散策しながら行くべしというわけで、およそ2kmの道のりをてくてくと歩きました。

秘仏「十千面観音立像」の御開帳(毎年3月20日~4月7日、6月5~8日、10月25日~11月10日)に合わせ、訪れたのは11月初旬。気候も良く、秋の日差しを浴びながらの道のりはとても和やかでした。

到着しました「法華寺」。もとは不比等の邸宅であり、光明皇后の「皇后宮」として使われていた場所に建立されたとのこと。広大な境内ではありませんが、すっきりと解放感にあふれています。

ちょうど花の時期ではありませんでしたが、こちらのお寺は、境内の西には「国史跡名勝庭園」という江戸時代に作庭された回遊式庭園、そして東には「華楽園」という四季折々の花が楽しめる庭園を備えています。

ぜひ花の時期にも訪れてみたいものです。

いよいよ、本尊「十一面観音立像」とのご対面です。

本堂の中央にある厨子の中に安置された木造の「十一面観音立像」。榧の一木造で像高は100㎝ほど。光明皇后をモデルに作られたというこの仏像の特徴は、どこか異国情緒を思わせるお顔に、大きくてしっとりとした瞳、そしてふっくりと赤い唇ではないでしょうか。厨子に納めれているせいか彩色もわりによく残っていて、天平時代の伸びやかな風をも感じられます。

それと、もう一つ特徴的なのが、光背です。仏の体を守るように光背から伸びる蓮。つぼみと花が入り交じり、生命の躍動感を感じられます。これは、私はほかの作風には見たことがない表現で、この仏像を特別なもの足らしめている理由の一つではないかと思っています。

この日のこの時間はほかに拝観者もいらっしゃらなくて、私は思う存分、十一面観音像と向き合いました。

実はそれまでは、十一面観音像そのものの魅力をそこまで追究しようとしていませんでした。

しかし、みうらじゅんさんといとうせいこうさんはわりかし「十一面観音像」がお好きなようで、各巻を通して十一面観音への言に割かれているページが多いような気がします。

もちろん、著書の中身については触れられませんが(ネタバレもいいところですもんね💦)、お2人はよく、観音様が持つ特有の雰囲気を「艶やかさ」や「なまめかしさ」、「セクシー」などの女性性を強く感じさせる表現で説明します(一般に、観音像は女性をモデルに作られていると言われています。馬頭観音像など一部はのぞきます)。それなのにいやらしさが全くなく、さっぱりとした愛情を感じさせるのです。

その表現で十一面観音像を見てみると、逆にだんだんと女性性は薄れ、厳かな仏性を見出せてくるのです。不思議ですよね…。

今では十一面観音像も大好きになりました。

十一面観音の慈愛に包まれ、その魅力を理解できた幸せをしっかりとかみしめて、お寺を後にしました。


4、出会いを終えて

そういったわけで、十一面観音という新たなターゲットを「仏旅」の中に位置づけた私。

その後は、積極的に十一面観音を含めた観音像を追っていくことになります。

ところで、この法華寺の近くには、「海龍王寺」というお寺があり、実はそこにも「十一面観音」がいらっしゃいます。この旅に合わせて行ってきたのですが、これはまた後日にご紹介しますね。

そして、これまた近くにかの大仏様がおわす「東大寺」などもあるわけですが、それはまた別の日に訪れております。こちらは「好きな仏像」シリーズとは別に、出会いの思い出を振り返りたいと思います。

では。

まだ恒例にはなっておりませんが、お土産もののご紹介。

「法華寺」では、こちらでしか手に入らない「お守り犬」というかわいらしい犬の形のお守りを授かることができます。厄除け、長寿、安産などのご利益があるそうです。光明皇后御自ら犬のお守りを作り、無病息災を祈願して人々に授けられたのが起源。護摩堂の灰と土とを練って作られており、精進潔斎した門主と尼僧のみが作ることを許される特別なお守りだそうで、私は祖父母に健康と長寿を願って買って帰りました。

お寺の様子や仏像のお姿、「お守り犬」の値段など、お寺の公式ホームページよりご覧下さい♪

ではではまた、次回の仏旅にて。

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