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仏像と私~私の好きな仏像編⑤~

こんばんは。

久方ぶりにお送りする「私の好きな仏像編」。

これまで京都・奈良を中心に関西の仏像をご紹介していますが、

今回は、ちょっと場所を移して九州・福岡県へ。

お目当ての仏像はこちら!

太宰府市・「観世音寺」におわします、「馬頭観世音菩薩立像」であります。

※トップの画像は「ヘンリー3世」さんによる写真ACからの写真です

1、そも、馬頭観世音菩薩とは?
2、「観世音寺」はどんなお寺?
3、馬頭観音様と私
4、旅のきっかけから出会いまで
5、偶然への感謝


1、そも、馬頭観世音菩薩とは?

「馬頭観世音菩薩」(この後は「馬頭観音」と表記します)は、「観世音菩薩」(同じく「観音菩薩」と表記します)の変化身の中の一尊です。

観音菩薩は、祈りを捧げる人々の性格や願いによって形容を変える仏様としても知られています。つまり、馬頭観音は激しい怒りをまとって衆生の悩みや諸々の悪魔を粉砕し、馬が草を食べるように煩悩を食べ尽くして災難を取り除いてくれる仏様を、との人々の願いを聞き届けた観音が、その願いを叶えようとしているお姿というわけです。

馬頭観音は畜産の守り仏として畜産関係の家や会社などに祀られているほか、「旅」の守り仏(馬は旅の道中の大切な移動手段だったため)として道のほとりに祀られています。意外に身近な存在なのですが、その「怒り」の表情から、「観音」の一つだとは思われていないかもしれません。

実際に、そういった役割の側面から「明王部」に分類され、「馬頭明王」として祀られている例もあります。

目尻を吊り上げ、髪を逆立て、牙を剥き出した憤怒相を持って「悪」を滅せんとするパワフルな仏様なのです。

また、六観音(聖観音、十一面観音、千手観音、馬頭観音、如意輪観音、准胝観音※天台系では准胝観音の代わりに不空羂索観音が入ります)の一尊としても知られており、六道輪廻の考え方の中では畜生道を司っています。


2、「観世音寺」はどんなお寺?

福岡県太宰府市にある「観世音寺」。

実はその歴史は古く、天智天皇が亡くなった母・斉明天皇の冥福を祈りたいと発願したのが始まりと伝わります。しかし、天智天皇はその完成を見ることができず、造営が完了したのは発願から約80年経った、聖武天皇治世ぼ746年のこととされています。

その後、761年に、あの!鑑真和上によって戒壇院が設けらました。それまでは遠く都に行かなければ、僧になるための「受戒」を受けることができませんでしたが、これによって僧侶を志す多くの人々に「仏道」への道を拓いたと言われています。

現代では仏像マニアや地元の人以外にはあまりその存在を知られていないかもしれませんが、とても由緒正しいお寺なのです。


3、馬頭観音様と私

ここで、「馬頭観音」様と私のご縁についてもちょっとお話ししてみたいと思います。

私はどちらかというと「神道」が盛んな地域の出身ではありますが、母方は仏教です。

ほんの偶然ではあったのですが、たまたま神道の父の実家も、仏教の母の実家も初詣に出掛ける神社が同じ神社で、そこが神仏習合の神社でした。

そこには、「馬頭観音」廟があったのです。

なかなか子どもに恵まれなかった両親と両祖父母は、初詣以外にもよくこの神社を訪れ、お参りしていたそうなのですが、母方の祖父は毎回、この馬頭観音廟にも立ち寄り、孫の誕生を祈っていたそうです。

そうして、やっとのことで生まれたのが私(なんだかこんな書き方をすると恥ずかしいですね…)。

その後も、祖父は事あるごとに私の幸福を祈って、馬頭観音廟に足を運び続けたのだそうです。

祖父は私が高校生の時に亡くなりましたが、その感謝を込めて、私もこの「馬頭観音」廟には必ず立ち寄り、お祈りしています。

そんなわけで、祖父が結んでくれたご縁が、私と馬頭観音様にはあるのですね。


4、旅のきっかけから出会いまで

実はこの時の仏旅、はじめは「観世音寺」と「馬頭観世音立像」が目的ではなかったのです。

覚えておられる方もいらっしゃるかと思いますが、一世を風靡したあの「興福寺創建1300年記念 国宝 阿修羅展」が太宰府市にある九州国立博物館で開かれておったのです。

ええ、もちろん。本家本元の興福寺そのものを訪ねている私は、ほぼすべての展示物を拝観済みですよ。阿修羅だって。そもそも、阿修羅が私の、今でいうなら「推し」仏(笑)ではありませんよ。

しかし、そのころ仕事が忙しく、なかなか仏旅に行けずにいた私は、悶々とした「仏欲」(笑)を持て余しておりました。いやさ、皆さまがせっかく九州まではるばるお越しになったのだもの。観ずばおくまい!

というわけで、この「阿修羅展」を観に、またもや無謀な日帰り弾丸仏旅を敢行したというわけです。

東京、福岡(この九国展のことです)、そして興福寺と3カ所でのべ190万人の人出を記録したこの展覧会。関連グッズなども相当数発売され、「イケメン仏」を巡る仏ガールたちを多数生み出しました。それはもう開催前から始まっており、展覧会が始まってからはニュースでも「今日の『阿修羅展』の人出は〇万人」と報道されるようなお祭り騒ぎ。人出は容易に予想されます。

人混みが好きではなく、かつ本物をすでに観ている私ですから、本来足を運ぶ理由はございません。

しかし湧き上がる「仏欲」が、私を太宰府駅に降り立たせたのです…!

時はちょうど午後12時を少し回ったところ。行列覚悟なので少しお腹を満たしてから行くべきか、このまま勢いに乗って行ってしまうべきか。しばし考えていた、その時。

「『阿修羅展』にお越しのお客様に申し上げます。ただ今の入館待ち時間は、およそ5時間となっております」

駅構内に響き渡ったアナウンスに、耳を疑いました。

5時間…!

そんなの、帰りのバスに間に合わない!そもそも開館時間終わるじゃないか!…つまり観られないってことじゃないか!

火の玉のごとくここまで突進してきた私は、一瞬ふらつくほどにショックを受けました。

そのまま約15分ほど、駅をうろつきながら(怪しい(笑))考えました。

行ってみたら案外、スムーズに列が進むかも?と希望を持ってもみましたが、やはり明日も仕事。バスに間に合わないなど許されません。

しかもまだお会いしたことのない仏たちならまだしも、今回は「興福寺」の仏たち。

うむむむ。諦めて、バスを早めに繰り上げるべく肩を落として歩き始めたその瞬間。

「あ!大宰府ってことは、『観世音寺』があるじゃないか!」

我ながらよくぞ思い出しました。

私は九州に住んではおりますが、福岡県はやはり遠い地。ましてや大宰府市となると、もう少し時間を使わなくては行けない場所なので、かの「馬頭観世音菩薩立像」にはずっと以前から憧れ、お会いしたい思いは持ちつつも、なかなか訪ねられずにいました。ご縁を持つ仏様でもあり、また「馬頭観世音立像」としての作例は、全国でも極めて少ないのです。

そうなったら早いもので、早速観世音寺行きのコミュニティバスに乗るべく、西鉄「五条駅」へ。地元の人に混じって意気揚々とバスに飛び乗りました。

到着した「観世音寺」。

煙るような雨の中にたたずむ姿は、まさに「古刹」らしい厳粛さにあふれていました。ここで、遥か昔には大勢の僧たちが仏様と向き合い、己と向き合いながら厳しい修行に励んでいたのでしょう。

しばし感慨にふけっていると、雨足がかなり強くなってきました。

帰りの時間に余裕があるわけではないので、講堂と金堂を拝観したあとは、急ぎ仏像などが安置されている「収蔵庫」へ向かいました。

「でかい…」

いやいや失礼しました。

大きさはもちろん資料集などで知っていましたが、お目当ての馬頭観音様だけではなく、とにかくこちらの仏様たちは「大きい」のです。

いくつかご紹介すると、
「十一面観音立像」(檜の寄木造)498cm、「不空羂索観世音立像」(楠の寄木造)517cm、「聖観世音坐像」(楠の寄木造)321cm。

そして、「馬頭観世音立像」は檜の寄木造で、503cm。四面八臂の堂々たるお姿です。

これほど大きな仏像たちなので、それほど低くはない収蔵庫が窮屈に感じられるほどです。

さて、改めて「馬頭観世音立像」と向き合いました。一番前の手で、この仏独自の「馬口印」を結び、残りの六つの手には宝剣のほか法輪や数珠を持ち、闘うだけではなく仏法をしっかりと伝える役割を持っていらっしゃることがよく分かります。

そして、こちらの仏様は正面の「憤怒相」が幾分穏やか。「怒り」というよりは、「説き伏せる」という感じの表情です。

お写真は著作権等の関係上ここでご紹介できないのですが💦、気になる方は「馬頭観音 観世音寺」と検索すると、たくさんそのお姿がでてきます。ぜひご覧ください!

他の仏様たちは幾分駆け足気味に拝見。

今日はスケジュール変更で急ぎ足の来訪になってしまいましたが、今度は、この仏様たちにしっかり会いに来なくては。そう決意し、観世音寺を後にしました。

ところで、この「観世音寺」には、京都「妙心寺」、奈良「当麻寺」のものと同じく日本最古といわれる国宝の「梵鐘」があります。しかも妙心寺のものとは同じ型で鋳造された「兄弟の鐘」であるとして知られています。この旅では雨も降っていたのでしっかり観ることができなかったので、またぜひ訪ねたいと思います✨


5、偶然への感謝

「阿修羅展」をちょっと(笑)観て帰るくらいの気持ちでいましたが、まさかの「観世音寺」に行くことができ、逆にご満悦で帰路に就いた私。

ご縁が引き寄せてくれたのかもしれません。

偶然の出会いに心から感謝!の仏旅でした。

さて、お土産コーナーですけれども…あまりの弾丸ツアーだったので、実は何も購入できず💧

しかし、大宰府といえば「太宰府天満宮」。そして「梅が枝餅」。

お土産でいただくときはビニールなどで包まれているものが多いと思いますが、参道にはたくさんのお店が立ち並び、焼き立てを味わうことができます♪

中には平安時代創業と伝わるお店や、天満宮境内での商売も許されていたという老舗もありますので、太宰府市に行かれる際には、ぜひ観世音寺とともに太宰府天満宮へ。

太宰府天満宮は、西鉄「太宰府駅」から歩いて10分はかからないくらいです。順路もわかりやすく整備されているので、参道の景色を楽しみながらご参拝できます。

観世音寺は西鉄「太宰府駅」から1.5kmくらいありますので、私も利用した西鉄「五条駅」から出ているコミュニティバスがおすすめです。コミュニティバスはほかの駅からも出ていますので、ご自身が一番使いやすい駅から行かれるのも良いと思います✨


それでは、今回はこのあたりで。


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