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仏像と私~私の好きな仏像・番外~

こんばんは。

全国各地で大雨による被害が続いています。

子どものころから、台風や大雨で必ずと言っていいほど浸水被害に遭う地域に住んでいた私は、水の恐ろしさをよく知っています。

感染拡大の懸念もありますが、周囲の状況から避難所に退避する方が安全という方は、移動が可能であれば避難を。移動が難しい状況であれば、「垂直避難」など、災害弱者の方々を守りながら、とにかく命を守る行動を。

この災害が一日も早く終息することを願い、災厄から守ってくれる仏様たちをご紹介したいという思いから、この回を「番外」としました。

ご紹介しますのは、「五大明王」。

ぜひ観ていただきた仏像をいくつかご紹介しますが、今回は、「五大明王」自体を知っていただきたいと思っております。

それでは、まずは「五大明王」とはどんな仏様なのか。

※トップの画像は「jillpapa」さんによる写真ACからの写真です

1、「五大明王」とは
2、不動明王
3、降三世明王
4、軍荼利明王
5、金剛夜叉明王
6の①、大威徳明王
6の②、烏枢沙摩明王
7、「五大明王」おすすめの仏像


1、「五大明王」とは

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※それぞれの作例のお写真は出せないので、イラストにて…。(©sakuzaemonさん)

「明王」は、仏教の中でも密教特有の尊格(仏)です。如来の化身とも言われていて、仏の教えに従わない悪魔(仏教に帰依しない人々、とも)を力によってねじ伏せ、教え導く側面を担っていることから「教令輪身」とも呼ばれます。五体の尊格それぞれがまた別の役割を持っていますが、総じて衆生に降りかかる災厄をはらう力を持つというご利益から広く信仰されています。

もともとはインドの神々(ヒンドゥー教やバラモン教)で、仏教に取り込まれ、形を変えた仏様がほとんどです。

その中でも、特に中心的な役割を持つ五体の仏を組み合わせたものが「五大明王」です。

その五体は、それぞれが特定の如来の教令輪身であり、特定の方角を司っています。

不動明王(中央)→大日如来の教令輪身
降三世明王(東方)→阿閦如来の教令輪身
軍荼利明王(南方)→宝生如来の教令輪身
大威徳明王 (西方)→阿弥陀如来の教令輪身
金剛夜叉明王(北方)→不空成就如来の教令輪身

※北方の明王は、真言宗(東密)では金剛夜叉明王ですが、天台宗では(台密)烏枢沙摩明王が入ります

明王は一般的に憤怒(ふんぬ)相(怒っているような、迫力のある顔ですね)、で火炎光背、怒りによって逆立った髪で表されます。俊敏な動きが必要とされるため、装飾品などは極力身に付けず、法衣は片袖や裾を破って動き易くし、武器類を手に持っています。※孔雀明王など例外もあります

それぞれの明王の特徴は次の項にて。


2、不動明王

大日如来の教令輪身であり、五尊の中では中心的な存在です。衆生の煩悩を断ち切り、仏の世界に導きます。

見分け方は、不動明王のみ髪を片方に結んで下げています(弁髪といいます)。明王は多面多臂(顔や手足がたくさんあること)として表現されることが多いのですが、不動明王は基本的には一面二臂です。持物は降魔の三鈷剣と羂索(悪魔や煩悩から抜け出せない人々を縛り、救い出すための縄状のもの)です。

「お不動さん」の愛称で、明王の中でも最もよく知られ、信仰されています。


3、降三世明王

阿閦如来の教令輪身であり、東方に配置される明王。煩悩をのぞき、怒りをおさえて悪魔をはらう仏様です。

四面八臂のお姿。前に組む二本の手でこの仏特有の「降三世印」を結び、残りの手は弓矢や矛などの武器などを持っています。最も特徴的なのは、両足で大自在天(有名なシヴァ神です)と妻烏摩妃(その妃・パールバティ―です)を地面の上に踏みつけているところです(踏まれているのが、異教のとはいえ神様だなんて、普通は思いませんよね!)。


4、軍荼利明王

宝生如来の教令輪身であり、南方に配置される明王。さまざまな障害や息災をのぞく仏様です。

一面八臂で、前の二本の手で「三鈷印」を結び、他の腕には武器や斧を持っています。三ツ目でとぐろを巻く蛇を身に纏った姿が特徴です。「軍荼利(クンダリ)」は古代インドの言葉で「とぐろを巻くもの」という意味があり、ヘビの毒によって煩悩を払うという意味があるそうです。


5、大威徳明王

阿弥陀如来と文殊菩薩という二尊の教令輪身であり、西方に配置される明王。勝負ごとのご利益があるとされています。

六面六臂六脚という、これまた独特なお姿をしていて、水牛に跨っています。六つの顔は視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚、霊感(全六識といいます)、六本の腕は厳しい修行(六波羅蜜業)を達成したことを、六本の脚は六道を表します。前日本の腕で「檀茶印(だんだいん)」という大威徳明王特有の印を結び、そのほかは、ほかの明王と同じく武器などを持ちます。

もう一つ、阿弥陀如来の教令輪身であることから、頭の上に阿弥陀如来の顔がある、というのも珍しい特徴です。


6の①、金剛夜叉明王

不空成就如来の教令輪身であり、北方に配置される明王。相手に打ち勝つ、というご利益から、災厄をはらう、病魔退散や健康にもご利益があるとされています。

三面六臂のお姿ですが、その最も大きな特徴は、中心の顔に五つの目があることです。この多くの目で煩悩の象徴=邪鬼を見張っているのです。六本の腕にはそれぞれ武器を持っています。

6の②、烏枢沙摩明王

天台宗の教えでは、金剛夜叉明王の位置に入るのが「烏枢沙摩明王」です。日々の生活のあらゆる不浄を清める、というご利益があるとされています。

お姿は、ほかの明王よりは定まっておらず、一面六臂や三面八臂などさまざま。右足を大きく上げて片足で立つ、または蓮華の上に半跏趺坐の形を取るなどの作例があります。


7、「五大明王」おすすめの仏像

五大明王はいずれも現世利益的な側面が強いことから広く信仰されていたようで、国宝クラスから文化財指定を受けていないものまで、数多くあります。

地元で愛されてきた仏像などもかなりあるのだろうと思いますが、おすすめは超有名ではありますが、やはりこちら。

「東寺(京都)の立体曼荼羅における五大明王」です。

東寺といえば、やはり空海(弘法大師)が密教の教えを視覚化した「立体曼荼羅」。講堂に展開されています。この中の帝釈天や梵天がイケメン仏像として有名になり、一時期は随分若い女性の参拝者が増えましたね。

この中に五大明王も含まれていまして、講堂が建立された当初の作(平安前期)で、密教彫像としては最古のものとも言われています。

この五尊の中で私が特徴的だと思うのは、不動明王のお顔が、ほかの作例よりも優しげな風貌を持っているという点です。

じっと眼前で見つめていると、怒りや焦りのような感情が沈静化されていくような、そんな不思議な感覚を覚えます。ほかの四尊の躍動感と相まって、密教の懐の深さみたいなものを体現しているような気がします。

私は東寺が大好きで、京都に行くと必ず立ち寄る時間を作ります。

もちろん、立体曼荼羅が目当てというわけではないのですが…。

空海がこの世のあらゆる衆生を救わんと、分かりやすく教義を示した「立体曼荼羅」および東寺のすばらしさについては、ぜひまた別の機会にもご紹介したいと思っております。

お姿を見てみたいという方に、東寺の公式ホームページを。


それでは、今回はこの辺で。

五大明王のご利益で、一日も早く、全国で被災された皆さまが日常を取り戻されますように。



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