光圓寺 大津分院 釈迦如来坐像

 元は、紀伊山地の中にある簾村(すだれむら)の仏様でした。村人の心の拠り所として長い間大切にお祀りされてきた仏様だそうです。10年ほど前、本に取り上げられて有名になり、盗難の心配が出てきたそうです。ですが、仏様をお守りする村のお宅が2軒しかないので、村の方がご寄付を集められ、御住職のお住まい改築し、仏様をこちらへ移されたのだそうです。

 お寺に伺ったと云う感じではなく、何処かのお宅にお邪魔したような感じでした。二階が本堂になっていて、釈迦如来様は、本堂の隣りのお部屋にいらっしゃいました。


 まっ黒なお顔ですが、まぶたのところの金箔だけが残っていて、遠くからだと目立って見えますが、近付いてよくみると切れ長で涼しげな目をされています。何百年も居られた村を離れられ、仏様は今、何を考えていらっしゃるのかなと気になりました。しかし、少しだけ笑っておられる、ほんのり紅い口元を見ていると、案外新しい今の境遇を楽しんでおられるようにも思えました。
 長い時間、先代の御住職からいろいろなお話しを伺いました。500年も前に書かれた巻物を見せて頂きながら、「神田」と云う御住職の姓が、元は東京の神田明神の神職であった今から十七代前の住職に由来することや、もともと禅宗の寺院だったが、途中から浄土真宗に変わった経緯などを伺いました。更には、蓮如上人の御真筆の六字名号を見せて頂きながら、蓮如上人のお話も伺いました。私の様な真宗の信者でもない者が、こんな貴重な物を、ましてやこんな近くで拝見して良いのかなと思い、緊張しました。また、「仏様のお写真も宜しければお撮りください。」と言って下さいました。
 様々な物を見せて頂くうちに、御住職はお寺の宝物を大切にされているけど、執着されてはいない気がしました。最後になってやっと、御住職自らが、物や考えに執着してはいけないと云う、お釈迦様の教えを体現されておられるのだと分かりました。