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みんなが蝶だ、羽ばたこう

2021年4月、生まれ変わった物学研究会のキックオフ。ゲストはTakramパートナーでコンテクストデザイナーの渡邉康太郎さん。テーマは「数字とものがたりのリバランス」

今回より毎月の例会後、モデレーターとしてテキストを残すことになった。レポートのようなコラムのような、僕自身のための勝手気ままなふりかえり。

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自身の思想、Takramでの作品、先人の引用が有機的に編み込まれた康太郎さんのお話。印象的だったことのひとつは「いまの普遍はかつての異端」で、そして「いまの普遍も、明日の異端」となり得ることをバタフライ・エフェクトのエピソードを交えて説いていた部分。

本来のバタフライ・エフェクトは、エドワード・ローレンツ氏による「予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」という問いで提起されたもの。わずかな初期値の違いがカオスにおいて大きな変化をもたらすことで、蝶は最初の1匹しかいない。だけども、康太郎さんのお話は、無数の蝶の羽ばたきが異端を普遍に/普遍を異端に変えてゆくということだったと思う。

この世の中で、蝶はどこにいるのだろう?
ぼくたちみんなが蝶ではないか?

無数の蝶で思い出すのは丸山直文さんの絵画作品。揺さぶられるスケールと時間の感覚、繰り返される具体と抽象の往復、絶え間なくつづく意味の認識と失認。ぼくが大好きな作家さん。丸山さんは蝶について「羽ばたき、不規則に動き、絵画に時間を生みだすもの」と語っていたはず。(2008年、目黒区美術館での建築家・青木淳さんとの対談の記憶より。)

凝り固まったように感じる様々な価値観も実はダイナミックに変化している。仲間の蝶たちが羽ばたく様子を見て、この世界が動的であることに気づける。ぼくたち一人ひとりが羽ばたきつづけ、カオスをさまようことで、価値観は確かに移り変わっていく。

慶応SFCの2つ上の偉大な先輩。康太郎さんに勇気をいただいた時間。
どうもありがとうございました。

物学研究会 モデレーター
黒川 彰

黒川 彰
建築家。1987年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2009年に卒業し、渡欧。OFFICE Kersten Geers David Van Severenでの勤務を経て、スイスイタリア語圏大学メンドリジオ建築アカデミーを修了。2014年にSho Kurokawa architectsを設立し、建築・家具・プロダクトのデザインや、事業のデザインコンサルティングをおこなう。2018年に日本とスイスの交流プラットフォームとして日瑞建築文化協会 (JSAA) を立ち上げ、展覧会や講演会などの企画運営をおこなう。2019年より慶應義塾大学非常勤講師。


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