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真実味のあるエコロジカル・システム

6月13日の物学研究会のクロストークのモデレーション後記。デザインストラテジストの太刀川英輔さんとランドスケープデザイナーの三島由樹さんをお招きし、物学の代表の黒川雅之さんと3人のセッション。「『反近代』或いは『脱近代』」という黒川雅之さんの問題提起から始まった新イベントは、僕を含めてよくわかり合う4人だからこそのダイナミックでディープなディスカッションとなった。(YouTubeの物学研究会チャンネルにてアーカイブを是非ご覧ください。)

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印象的だったことは、3人から何度も発せられた「生態系」という言葉に心地よい納得感があったことだった。エコシステムという言葉、とても流行っている。僕もよく使う。ヒト・モノ・カネを留まらせずに偏らせずに循環させると、そのシステム内の諸要素に成長や幸福が行き渡るという意味だと思う。運搬網やデジタル・テクノロジーにより複雑性と効率性を担保することで、人間が大きなエコシステムを作れると考えるようになった。たとえば、ジェフ・ベゾス氏がAmazon創業前に描いたビジネスモデルのスケッチは秀逸な人工エコシステム図といえるし、NFTはアートの新しいエコシステムなんていわれている。

本当にそれらはエコシステムだろうか?
富の偏りが増してはいないか?需要と供給のバランスは好ましいのか?
エコロジカル・システムとエコノミカル・システムを混同していないか?

クロストークで語られた生態系は、真実味のあるエコロジカル・システムだった。自由市場経済の翻訳(としてのエコノミカル・システム)でも懐古主義的な縄文生活でもない現代なりのエコシステムの解釈。諸要素が相互に学び合い、変化を繰り返す生態系的社会について、また考える機会を作れればと思う。

物学研究会 モデレーター
黒川 彰

黒川 彰
建築家。1987年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2009年に卒業し、渡欧。OFFICE Kersten Geers David Van Severenでの勤務を経て、スイスイタリア語圏大学メンドリジオ建築アカデミーを修了。2014年にSho Kurokawa architectsを設立し、建築・家具・プロダクトのデザインや、事業のデザインコンサルティングをおこなう。2018年に日本とスイスの交流プラットフォームとして日瑞建築文化協会 (JSAA) を立ち上げ、展覧会や講演会などの企画運営をおこなう。2019年より慶應義塾大学非常勤講師。

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