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【レイズ旋風】万年最下位軍団の大逆襲①

【08年】[順位:1位]97勝65敗 .599
[監督]J.マドン
【PS成績】
 ALDS(対CWS)3-1○
 ALCS(対BOS)4-3 ○
WS(対PHI)1-4 ●
※創設11年目で初の地区優勝&リーグ優勝
🏆
※前年度最下位からのリーグ優勝はAL史上初

新生「タンパベイ・レイズ」始動

「Devil(悪魔)」から「Ray(光線)」を取り込んで心機一転。新生「タンパベイ・レイズ」として再出発することになった08年。ユニフォームやキャップ、チームのロゴマークやイメージカラーも[ネイビーグリーン]から[ネイビーブルー]に変わるなど、何から何まで前年とは全て変わった。当時地獄の10年を一番知るチーム最古参のクロフォードも言っていたが、自分も新学期の今年から新しい学校に登校するような清々しい気持ちになり、何か本当に生まれ変わったような感覚になったのを今でも鮮明に覚えている。

球団史上初の「OP戦首位」が旋風の「前兆」

【OP戦成績】18勝8敗 .692 [順位]1位

しかしそんな夢心地も束の間。いざ現実に戻るとチームの戦力自体は昨年と大差ない。今年も基本若手の底上げ頼みのシーズンで、過去10年みたく非常に厳しい状況に立たされる覚悟はしていた。

もちろん、今年は何とか上位進出を願ってはいたが、そこは強豪ひしめく大激戦区のAL東。現実はそんなに甘くはない。前年までも数字上は3年連続最下位の上に、何せ過去10年で最下位9回で一度も勝ち越した年すらもない万年最下位の負け犬チーム。そんな状態で球団名が変わったぐらいで、ましていきなり地区優勝やリーグ優勝をぶちまけるなんてヘソが茶を沸かすような話。マンガではあるまいし、「夢物語」もいいところだ。

「現実的」に考える開幕前の個人的な評価では、前年からチームの中で若くて力のある投打の軸が徐々に出来つつある手応えは感じていた。今年は投手陣がそれなりに頑張ってくれれば、球団史上初の勝ち越しもあるかもしれないと思ってはいた。OP戦の戦いを見ても、昨年までとは違ってしっかり投げて打って走って守る。つまらないミスが大幅に減り、「凡時徹底」が徐々に浸透し始めているのは感じられた。実際にOP戦の成績は18勝8敗でGPLではリーグ首位。MLB全体でもトップの勝率をマークした。これは球団史上初の出来事(珍事⁉︎)。

とはいえ、OP戦は所詮シーズン前の練習試合みたいなもので、要するにまるっきり当てにならない時期の数字。OP戦の数字がそのままシーズンに反映されることがほぼない事は過去の歴史が証明している。ただ過去の10年間はOP戦からシーズン中みたく負けが先行する年がほとんど。それだけに、今までの10年間勝ちに飢え続けて餓死寸前の負け犬チームにとっては、たとえOP戦でも「勝ちグセ」をつけて少しでも自信をつけてシーズンに入ることはメンタリティの面で一番大事な事だとは思っていた。前年までが前年までだけに、自分も強がって無理矢理そう思っていた。

それがまさかこのOP戦の成績がシーズン開幕後アメリカ全土を席巻する全ての[前兆]だったとは、当時はこの球団を知る人は世界中の誰一人として考えてもいなかったと思う…。何はともあれ、新生「タンパベイ・レイズ」として最初のシーズンがいよいよ開幕‼️

「春の珍事」から懐疑的だった快進撃(前半戦)

【前半戦成績】55勝39敗 .585 [順位]2位(首位BOSと0.5G差)

まずはこのチームの素性を知る世界中の誰もが予想すらしたこともなかったであろう、「春の珍事」と言われて始まった快進撃の前半戦を月ごとで振り返ることにする。

[3&4月]15勝12敗 .556 
【通算成績】15勝12敗 .556 [順位]1位(2位BOSと0.5G差)

開幕シリーズは敵地でBAL(2連戦)&NYY(4連戦)という同地区対決で始まった。開幕戦はキャリア初の開幕投手に抜擢されたシールズ。昨年まではカズミアーが2年連続で務めたが、キャンプから左肩を痛めた影響で今年は開幕ロースターからも漏れたことで大役が回ってきた。試合は初回に2失点もその後は見事に立ち直り、結果的に7回2失点の好投。打線も3回に逆転後は終始試合の主導権を握り「6-2」で勝利。シールズは初の大役を見事初勝利で飾った。

その後は打線は機能するも、投手陣が前年同様まだ不安定で、4月20日時点では「8勝11敗」と負けが先行。しかし、22日からのホームでのTOR(3連戦)&BOS(3連戦)をなんと連続スイープで6連勝を飾り、今年初の「首位」(BOSと同率の)に浮上。4月終わりには(もちろん?)球団史上初の「単独首位」に立った。とはいえまだ4月の話。昨年までの事もあって他球団やファンからも「春の珍事」と呼ばれた。自分も100%そう思ったし、思わない人の方が珍しいと思う(笑)

ちなみに、4月終盤の6連勝辺りから従来の大味な試合展開から僅差のリードを安定した投手陣+堅実な守備陣で守り抜く「DF型」のチームカラーがこの頃から完全に定着した。

[5月]19勝10敗 .655
【通算成績】34勝22敗 .607 [順位]1位(2位BOSと1G差)

月初の敵地での対BOS戦ではスイープを食らうなど、敵地では6勝7敗と5割前後で推移する。しかし、DF型のチームカラーに変貌を遂げたチームはホームで無類の強さを発揮。何と5カード連続勝ち越しの13勝3敗と圧倒的な数字で着実に勝ち越しを増やした。5月終了時で2ケタ以上の勝ち越しは球団史上初‼️

一番は5月4日に左肩痛で出遅れていた左のエース・カズミアーが先発ローテに復帰した事が大きい。実際にこの1ヶ月で5勝(1敗)をマーク。彼の復帰で先発の陣容がより強固になった事で、従来のように先発が序盤からゲームを壊して3回辺りでもう試合終了の様な惨敗が格段に減った。

それに呼応するかの如く、リリーフ陣も先発から今季序盤よりリリーフに転向して好投していたハウエルや、ベテランのウィーラーやミラー、今季より加入のパーシバルがクローザーで完全に定着し、この5月にみるみる良化。結果的に5月は2点差以内で勝利した試合が19試合中13試合、1点差試合では6勝3敗と従来からは考えられないほど接戦をモノにし始めていった。

それでもまだ周囲も「勢いだけ」・「いつか落ちる」など冷やかな反応が相変わらず多く、自分も懐疑的な面が依然強かった。何せ昨年までは過去10年間で最下位9回の万年最下位チーム。長年染み付いた「負けグセ」&「負け犬根性」はそう簡単には払拭できない(笑)

[6月]16勝10敗 .615
【通算成績】50勝32敗 .610 [順位]1位(2位BOSと1.5G差)

月初の敵地での対BOS戦ではまたもスイープを食らって一時2位に陥落。その6月3日のBOS戦では、2回裏に先発のシールズが前日にクリスプが盗塁を試みて2Bベースカバーに入った際、6回はSSのバートレット、8回には2Bの岩村に2度も故障しそうな程の激しいスライディングをした彼に腹いせの如く死球を与えた事に端を発して大乱闘が勃発。結果的に当事者同士のシールズ&クリスプをはじめ、暴力行為を働いたゴームスやクロフォードそして岩村なども加わり、両チームで出場停止8人の大騒動に発展した。
(言葉だけでは説明しにくいのでLinkを貼付してます⬆️)

この乱闘事件を岩村は後にこの年のオフにNHKBSで組まれた特番の中で「乱闘を肯定する訳ではないが、あれはチームの為にやった事。この乱闘でのみんなの行動で今年のチームの結束力の強さを感じたし、これ以降さらに団結力が強まったと思います。」と語っている。

確かに自分もそう思う。この試合で出場停止処分を食らった選手が複数出て戦力が一時的にかなりダウンしたにも関わらず、この日以降は15勝7敗と着実に勝ち星を増やしてまたも首位を奪還。勢いをさらに加速させた。

その象徴的な試合として、個人的には⬇️のCHCとの3連戦が長年染みついた「負け犬根性」がチームもイチファンの自分も一気に払拭されて「自信」をつけるきっかけになったと思っている。

当時のCHCは07年からピネラ前TB監督が指揮。PコーチにはTB初代監督のロスチャイルドが務めているという浅からぬ因縁があった。再建を託された名将ピネラ監督は就任初年度からさすがの手腕を発揮。CHCは着実に力をつけて前年も地区優勝し、この年もこの3連戦前で「45-25」でNL中地区の首位を独走して今季MLB最高勝率を記録する程「強豪」チームに変貌していた。その強豪CHC相手に最初の2試合は一進一退の1点差を何とかモノにし、最後の3戦目は7回に逆転された直後にクロフォードが逆転満塁弾を放って大逆転。結果的にNL中地区首位&今季MLB最高勝率のCHC相手に何とスイープを食らわせた。

試合後の会見でピネラ前監督はまさかあのTBにスイープを食らって気分が悪いハズ。なのに何やらサバサバした表情で「私がいた時とは全く違うチームだ。強くなったなぁ…。」と、どこか遠い目をしてコメントをしていた表情が今でも忘れられない。地獄を見た当時とあまりのチームの変貌ぶりに本当に嬉しかったんではないだろうか。初代監督のロスチャイルドもおそらく同じ気持ちだったと思う。

自分もこの3連戦を終えた辺りから、今年はもしかすると「ある程度」まで行けるかもしれない…。この日以降そんな気持ちが強まり、地獄の前年までなんか微塵も忘れてどんどん「その気」になっていくキッカケに間違いなくなった一ヶ月だった。

[7月]5勝7敗 .417(前半戦終了まで)

「春の珍事」から始まって誰もが懐疑的だった今シーズン。そんな声をあざ笑うかの快進撃を続けてついに7月に突入。しかし勢いは全く衰えず、月初の対BOSとの首位攻防戦スイープするなど6月30日から7月6日までは7連勝を記録する。球団史上初のシーズン勝ち越しどころか、あの万年最下位の負け犬チームが何と激戦のAL東で「前半戦首位ターン」を決めそうな所まで来てしまった。

春先は懐疑的でいつもの如く閑古鳥が鳴いていたTropがチームの快進撃に呼応して月を追うごとに観客数がうなぎ登り(同時期の対前年比40%増)。月初のBOSとの首位攻防3連戦では全てチケット完売。満員のレイズファンで3連戦全て埋め尽くされる光景が広がり、今までのTropでは考えられない「熱」&「圧力」があった。その光景を思い出す度に今でも涙が出そうになる。

球団史上初の「前半戦首位ターン」。夢にまで見た話が現実になりかけたチームに野球の神様から最初の「試練」が訪れる。8連勝をかけた対KCとの4連戦の最終日を延長まで行きながら、拙守&拙攻で連勝がストップしたのがケチのつき始め。その負け方が昨年までよく見た「光景」だったから、当時自分は嫌な予感がしていたのを今でも覚えている。「この負け方はちょっと…。これを勝率が元々悪い敵地に乗り込んで引きずらなければ良いが…。」と思っていたが、まさにその不安的中。あれだけ勢いがあったチームの歯車が一気に狂って、前半戦終了まで次の様になった⬇️

7日 vs KC  「4-7」●
8日 vs NYY「0-5」●
9日   vs NYY「1-2x」●
10日 vs CLE「2-13」●
11日 vs CLE「0-5」●
12日 vs CLE「4-8」●
13日 vs CLE「2-5」●

直前の7連勝で2位に最大5.5G差までつけたのがウソの様に今季ワーストとなる泥沼の7連敗で一気に首位から転落。しかも負け方が投壊•貧打•拙攻•拙守のオンパレードで、昨年までのデビルレイズを彷彿とさせる見事な負けっぷり。この直前まではどのチームと対戦しても「負ける気がしない」状態だったが、逆にこの当時は「勝てる気がしない」惨状だった。

他球団も「遂に化けの皮が剥がれて本性を出したか。TBもここまでだな。」と思っていたそうだが、自分も同感だった。万年最下位の負け犬チームが今季ここまでの大快進撃は称賛に値するが、これが「現実」。まだまだ簡単に上に立てるチームの器ではないということ。野球の神様から調子に乗ってついその気になってるチーム全てを「地獄」に叩き落とす出来事だった。

ところが、ここで「地獄」につき落とした野球の神様からのよもやの「プレゼント」があった。それはこのタイミングでオールスターブレークの休みに入ったのだ。あのまま試合を続けていたらおそらく10連敗ぐらいは軽く喫したであろう、このタイミングでの数日間の休養。これは本当に助かった。

ここからはオールスターブレーク後の後半戦の戦いに入ります。まだまだ長くなりますので、一旦ここで筆を置きます。長々とお読み頂きまして誠にありがとうございました。

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