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『ぼっち・ざ・ろっく』はリアリティがあったか

間違いなく2022年の素晴らしいアニメだった『ぼっち・ざ・ろっく』(以下『ぼざろ』)

「陰キャならロックをやれ」をスローガンに後藤ひとりちゃんを主人公に進んでいくバンドものアニメなわけですが…
ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜よかった!!!
まーよかったんですよ。
これは分析せざるを得ない。というわけで、バンドマンでギタリストの私目線でなにがよかったか、どんなポイントが良いのか解説できればと思います。

現実のバンドを匂わせ

そもそも主人公のバンド「結束バンド」が
後藤ひとり(ギター)
伊地知虹夏(ドラム)
山田リョウ(ベース)
喜多郁代(ギター&ボーカル)
という4人…そう!アジカンの美少女化オマージュなのです!「ぼっち」って多分「ごっち」のアレだしな。
その他、アジカンで言えば「君の街まで」のMVに出てくるザリガニ御一行が出てきたり…
そもそも、各話のタイトルがアジカンの曲のタイトルだったり…いいか!全員聞けよ!タイトルの曲!(特に僕は「飛べない魚」がアジカンで一番好きな曲なので嬉しかったです)
みたいなことが多かったり。

ほかにびっくりしたネタとしては
廣井の登場ですね。廣井と聞くと僕はもう大好きなので、「マーガレット廣井」が。廣井きくりが登場したことにより「え!??!?!?八十八ヶ所巡礼大好きなんだが!?!?!???!」と沸き立ったわけです。

ベースボーカルで酒豪、となってまさか…と思ったけど八十八ヶ所巡礼をアニメ化するとは思いませんでした。
だってキワモノすぎるかなって…好きだけど…

他にも缶バッチでクリープハイプが出てきたりポスターでガリレオガリレイが匂わせられたり…
現実のバンドを匂わせるパロディが多いのでバンドを追ってる人もニヤニヤして見れるってワケですわ。

そんで、アニメは良かったけど普段バンドを追わないって人は絶対元ネタ調べて聞いて、見て、してな。絶対に。

「陰キャならロックをやれ」

コミック展開の時点ですろスローガンとして掲げていた「陰キャならロックをやれ」というメッセージ。
これとても大事なことでして。

バンドがどちらかというと陽キャの嗜みと思っている人もいるんですよね。てか思ってる友人がいました。
ノンノン。バンドって、スポーツや勉強で輝けなかったやつが輝く場所なんですよ。普通の陽キャはJ-POPで感動できるんです。でも精神が捻くれている者がロックに救いを求めるんですよ。故に楽器を始める、そして続けている人はある種病んでいると言ってもいいと思う場面が多いのです。
僕自身、25歳になるまでJ-POP聞けなかったし。"普通"の人はJ-POPで満足できるんですよね。僕らは感性がとがっているのではなく歪んでいるだけなんです。

と、僕個人としては思っているのですが。
それをちゃんと理解しているかのようなこのキャッチコピーはめちゃめちゃ腑に落ちたんですよね。
これは『けいおん!』にはなかったメッセージで。(バンドリは見てないです)
『けいおん!』は「みんなで楽しい!」が全面だったのでバンドを楽しんでるもんだと思われますが、バンドマンは葛藤し不安を持ち、それをぶつけて音にしている…
『ぼざろ』はもうちょいマイルドでしたが、ぼっちちゃんのような不安をもっとシリアスに抱えながらバンドしている人もいるでしょう。

僕は、この精神性をバンドアニメで再現してくれたことをとても嬉しく思いますし、リアルでとても優れていると感じます。

楽曲の尖り

"アニソンとして"とがってる作品はたくさんありました。例えばヒャダインがやるやつとか。
あと僕が好きだったのは、『あそびあそばせ』のエンディングですね。

中学生が遊んでいるアニメなのに急なメタルコアでアニメのカオスさを増幅していて…

まあそれはさておき。
『ぼざろ』はアニメソングではあったけど楽曲としてはバンドの楽曲として成立しているところに良さがあります。

まず作曲家、現実のバンドマンが作曲しているものが数点あり、その楽曲はたしかに「アニソン臭さ」が薄れています。

特に「カラカラ」は変拍子で知られるtricotが、tricotのまんま(褒めてます)提供しているのが素敵です。変拍子もあるし、メロディもtricotやんけ。(上記は本人たちのコピーです)

さらに楽曲のミックスもなかなかに良い。
ギターが左右に強めに振られているので「二人のギタリスト」が立っている感が強く、さらにギターの音圧が他のアニソンより強めに設定されています。
これは『けいおん!』にはなかったことで、『けいおん!』はシンセもいるしもうちょっとギターの音圧がマイルドだったんだけど、『ぼざろ』はギターギャンギャン。
さらに主人公がギタリストなので、否が応でもギターを意識せざるを得ない。これは普段ギターに注目してないリスナーでもギターを意識しやすい構成になっていてギタリストとしてもニッコリです。

アルバムの良さ

楽曲がもちろん良いっていうのは前述の通り。

さらにアルバムの構成に僕は感激していまして。
特に「フラッシュバッカー」って曲に感激。

暗ェ!!
歌詞のテーマがド暗いわけではないがアニソン発バンドとしては異例の暗さ。これってすごくリアルじゃないですか?
アーティストとして考えたときに、作曲者として考えたときに、「アニメのOPになり得る曲」だけで構成されたアルバムを作る、ということはあまりないと思っています。

「アニメのOPっぽい曲」は単発として存在はしてもそれを連発するとなると結構嘘っぽいなって思っちゃって。
多分、それはバンドの曲を書いている人って「人」だから、落ち込んでいるときも楽しいときもあるから「全部明るい」みたいなことは起こりづらいはずなんですよね。

なので結束バンドが存在したときにこういう曲があるのはすごく自然で、もし曲調がすべてウケるような曲だけで構成されてたら途端に嘘っぽくなってたはずなんですよね。
そういう意味でも「フラッシュバッカー」は名曲だと思います。
(そして僕はこの曲が一番好きです)

ただひとつ言いたいのは

ここまで僕は
『ぼざろ』はバンドものとしてリアリティがほかのバンドアニメよりも深く、音楽が好きな者として楽しめるため良い
という論を展開していたわけですが、一つマジでリアリティがないことがあります。

こんなギターうまい女子高生がいてたまるか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

これはバンドリも、けいおんも、すべてにおいて言えること。
こんな弾けね〜〜!!!!!!!!!!

それだけは念頭に置いて、改めてアニメをお楽しみください。


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