命令

禁止改定後のバーン、アタルカレッドの可能性

 皆様お久し振りです。舞台照夫です。
 普段はニコニコ動画にMO動画を投稿をしているのですが、今回は記事での投稿になります。
 さて、この記事ではすでにモダンでバーンを使用しているプレイヤーの皆様向けに、新環境におけるナヤバーン、いわゆるアタルカレッドを提案させていただきます。

1 バーンを取り巻く環境の変化

・ラヴニカのギルド~灯争大戦
 この辺からモダンの環境が激変し続けている印象があります。何より大きいのはイゼットフェニックス、ドレッジの台頭でしょう。
 イゼットフェニックスは赤青のスペル系デッキで、ずっと相方を探していた氷の中の存在がついに弧光のフェニックスと出会うことで成立しました。
 ドレッジをトップメタに押し上げたのは間違いなく這いよる恐怖の収録でしょう。これによりマナを使わず理論上ライフ32対8の状態を作ることができます。
 トップメタとの相性で言えば、いわばじゃんけんのような形になっていました。イゼットフェニックスには大歓楽のおかげで比較的有利に立ち回れるのですが、ドレッジ相手には負けるほうが難しいといわれてしまう始末。
 マナコスト無視でライフドレインされてしまうので当然といえば当然です。
 バーンも一応批判家刺殺という4種類目の1マナ3点カードを得ているのですが、ドレッジに弱いという事実はトーナメントシーンからバーンを遠ざけていたといえるでしょう。

・モダンホライゾン
 モダンホライゾン、というか蘇る死滅都市、ホガークはモダン環境を蹂躙していきました。
 マナを支払わずに出てくる8/8トランプルは早期にブリッジヴァインに居場所を見つけ、2ターン目、3ターン目に出ないのはもはや事故といっていいほどの安定感と爆発力を見せます。
 で、バーンはというと色の合うキャノピーランド収録で大喜びしていましたが、真の恩恵はなんとホガークヴァインの台頭でした。
 あのデッキはモダンの墓地プレイヤーの人気を一身に集め、天敵のドレッジを間接的に駆逐しました。ホガーク自身との相性はどうかというと、メイン不利サイド互角~極々微有利とドレッジと比べればよほどましな相手でした。復讐蔦を墓地から出す都合上クリーチャーは唱えるので大歓楽がかなり刺さります。復習蔦とホガーク以外の生物は小粒でブロック不可も多く、ガイド速槍でも十分突破可能。這いよる恐怖に頼らなくても相手を殺しきれるということでゲイン手段というものが入っていませんでした。
 もちろん負けるときは負けますがあの環境は本当にホガークしかいなかったためサイドに6~8枚墓地対策を取る余裕があったのです。
 そんなこんなでホガーク環境でバーンが結果を残した、というのもそこまで違和感がありませんでしたね。

・ホガークと物あさり禁止、石鍛冶釈放
 そんなホガークが去ったことで天敵ドレッジが華々しく復活する・・・かと思いきやそんなことはなさそうで、やはり物あさり禁止の影響は大きかったのだなぁと。
 そして石鍛冶の神秘家解禁による殴打頭蓋セットの流行。サーチ可能な4/4絆魂警戒はなかなか迫力がありますが、正直私はそこまで脅威に感じていません。
 石鍛冶を出す、召喚酔いが醒める、2マナとタップ、そして細菌の召喚酔いを醒ます、といった手順がはっきりと見えているため、ドレッジなんかよりはよほど御しやすいです。石鍛冶本人は焼きやすいサイズなのも救いですね。
 そもそもバーンプレイヤーは3ターン目に6/6絆魂接死分裂機能持ちをたたきつけられるなんて慣れっこなのです。サイズ感に関してはいまさらですね。
 そうはいっても石鍛冶とのパッケージがどこからでも出てくるというのは悩みの種で、じゃあどうしようかと考えたときに今回のナヤバーンに行きつきました。

2 デッキリスト

アタルカの命令採用バーン
メインデッキ
 生物  12枚
 4ゴブリンの先達 4僧院の速槍 4大歓楽の幻霊
スペル  28枚
 4稲妻 4焼尽の猛火 4稲妻のらせん 4ボロスの魔除け
 4アタルカの命令 4溶岩の撃ち込み 4裂け目の稲妻
土地   20枚
 9赤フェッチ(赤ければ何でもいい)4灼陽大峡谷 2踏み鳴らされる地 2聖なる鋳造所 3 山

サイドボード 15枚
 3流刑への道 3灼熱の血 2渋面の溶岩使い 2極上の炎技
 2安らかなる眠り 3燃えがら蔦

・土地について
 土地は20枚。バーン最強の動きは4マナでの2マナ火力2連打なので一定数必用です。19枚論もありましたが、キャノピーランドでマナフラ受けが可能になったため20枚が主流のようです。

 廃墟の地はモダン頻出カードになっているので、1枚色土地を潰されただけで機能停止しないようフェッチから持ってこられるショックランドを2枚ずつ取りました。流刑への道、廃墟の地ともに頻出、両方採用も珍しくないので基本土地は3枚採用。キャノピーを最大限、フェッチを最小限にするためにこの配分となりました。
 個人的には白が出ないキャノピーはいらない派です。緑マナ確保のためのフェッチは一定数ほしいですしね。


・サイドボードの選択
 基本的なカードはさわりだけ。
 流刑への道     汎用除去 火力で除去できないデカブツを相手取るため非常に重要
 灼熱の血     追加の焼尽として
 渋面の溶岩使い  生物デッキへの抑止力に
 極上の炎技    依然として猛威を振るう青白コンへのとどめに
 安らかなる眠り  最低限の墓地対策

 さて、今回アタルカの命令と並んでナヤにする理由となった燃えがら蔦についてです。
 赤緑2マナのエンチャントで相手のインスタント・ソーサリーのキャストに反応して1点を本体に飛ばします。また、1マナとサクりで本体に2点飛ばしながらの置物破壊も可能と、様々な相手にサイドインできる優秀なカードです。詳しくは後述。

3 なぜバーンから白が抜けないのか


 ナヤバーンにした理由の前に、少しだけボロスバーンのおさらいをします。
 ボロスバーンに慣れている方は読み飛ばしていただいて結構です。

・ボロスの魔除け
 たとえば、先手の場合1マナ3点火力だけで20点のライフを削ることを考えると・・・

ターン数  ダメージ(計) 土地含む使用枚数(計) 使用可能数
1ターン目   3点          2枚 (2枚)                 7
2ターン目   3×2点(9点)      3枚(計5枚)     8
3ターン目   3×3点(18点)     4枚(計9枚)              9
4ターン目   3×1(21点)      5枚 (計10枚                10

  相手がライフを削っていれば3キルも可能ですがリソース的にかなりカツカツになりますね

 2マナ4点火力が2枚あると・・・

ターン数  ダメージ(計)   土地含む使用枚数(計)  使用可能数
1ターン目    3点     (2枚)              2枚 (2枚)               7
2ターン目    4点      (7点)   2枚(4枚)                   8
3ターン目            3×2点 (13点)       3枚(7枚)                      9
4ターン目            3+4点(20点)       2枚(9枚)                    10

 これは極端な例えすが、4点火力を引き込めば4ターンキルに必要な枚数が1枚減ります。
 超絶ざっくりいうと、2マナ4点火力が増えると4キル率が上がるのです。

・稲妻のらせん
 3点の回復は結構馬鹿になりません。パワー3というそこそこな生物の攻撃を一回無効化することに等しいわけですからね。
 そうしてライフを詰めつつ稼いだ1ターンで火力を引き込み、相手のブン回りによる4キル・5キルを阻止しながらの切り替えしを見据えることができます。生物に当てられるのもグッドです。

・豊富なサイドボード
 直接脅威を消す流刑への道のほか、墓地系への安らかなる眠りや親和等への石のような静寂といった特定の相手を機能不全にするカードが採用できます。

・灼陽大峡谷の存在
 通称キャノピーランドによってマナフラッド受けが容易になりました。また、それを採用することで自然に白をタッチできます。

4 なぜ今ナヤカラーなのか

・アタルカの命令
  石鍛冶の釈放、流行により殴打頭蓋が跋扈しています。そこで、多少大振りでも回復を禁止できるカードの需要が増加しています。
 ボロスバーンであれば、頭蓋割りというゲイン禁止カードを採用します。絆魂などに合わせることで延命を妨害することができるので、メインボードから回復されやすい環境では必須といえますね。
 しかし、頭蓋割りはそれ以外の場面では生物にも当たらない2マナ3点火力で、回復をしない相手に重ねて引くととても弱いのです。サイドに最低限の頭蓋割りを取ればいいという意見もありますが、白の豊富なサイドカードや燃えがら蔦を詰め込むとスペースがない、そもそも枚数とらないと引けないといった弊害もあります。
 そのほかのゲイン禁止は脆い生物であったりカードパワーの足りないPWだったりと、単体でダメージを稼ぎづらいものが多いのです。
 そこで、頭蓋割りの代替としてもつかえ、全体修整モードで攻撃にもつかえる札としてアタルカの命令を採用。スロットを節約しつつ爆発力を上げました。
 
 また、石鍛冶流行により盤面を作るデッキが増えることでしょう。結果、さらに一歩下がって手札、自分の場で完結するストームやコンボ系の隆盛が予想されます。
 その中の一つ、ドルイドコンボに広く採用される秋の騎士にゲイン禁止が刺さり、豊潤の声、シャライで機能停止しないこともアタルカの命令を採用する理由になりえます。
 ささやかではありますが、相手ターンにランドセットからのキャノピードローという小技が生まれたことも追い風といえますね。

 逆に頭蓋割りにしかできないこととして、軽減禁止によるプロテクション突破があります。
 しかし、そのような使い方はお世辞にも強いとは言えない緊急避難的なものですし、そんな相手には大体流刑が刺さるのでサイド後という前提ならそちらでいいでしょう。

・燃えがら蔦
  イゼットフェニックスの弱体化やホガークの禁止などにより、一度環境が低速化することはほぼ確定です。また、現環境一番怖い置物は血染めの月、虚空の盃、殴打頭蓋と即死につながるものではありません。そこで、特定の相手にクリティカルなカードではなく、より広く浅く見るサイドボードを取る余裕ができました。先ほど挙げたものは置きディッチャのほうが有効な場面も多いですしね。
  とはいえこの燃えがら蔦、広くはありますが浅いと断ずることはできない良カードです。コントロール気味の石鍛冶デッキを見たとき、粉々や破壊的な享楽をサイドインすると手札で腐る可能性がありますが、燃えがら蔦であればスペル主体の動きに対しダメージを飛ばすことができます。
  また前述の通り、私は自分の手札で完結するコンボが流行するとみています。その最右翼であるストームはインスタントソーサリーでカウントを稼ぐので、そこに燃えがら蔦を追加の大歓楽としてサイドインできるのです。

・なぜナカティルがいないのか
 野生のナカティルはナヤバーンの定番カードでした。モダン禁止も経験した強力なカードです。
 今回不採用となったのはキャノピーランド採用のため。キャノピーはアタルカの命令土地出しモードの数少ない利用手段になるほか、単純にマナフラッド受けに役立つ強力なカードです。モダン最強レベルの土地なのですが、ナカティルが要求する山・平地のカウントが減ってしまうため、ナカティルは今回不採用となります。

・なぜ批判家刺殺がないのか
 今まではホガーク、フェニックスと競走するために、素の性能に疑問が残り軽減が不安定な批判家刺殺を取ってでも1マナ3点を増やし、3キルを目指す姿勢が必要でした。
 これらが禁止改定で消滅、弱体化し、デッキ内に頭蓋割り枠を採用する余裕が出てきました。
 また、アタルカの命令は初動でもたつく相手に生物で押し来るプランを強力に補強します。単純に批判家刺殺よりアタルカの命令のほうができることが多いのです。
 前述の通り3ターンキルデッキが台頭する可能性もありますが、ストームに対しては大歓楽と燃えがら蔦が、ドルイドには各種火力がアンチカードとして機能するため十分間に合うと見ています。

5 主要マッチアップでのサイドボードプラン

・対バーン
 先手 in   燃えがら蔦3 灼熱の血3
    out 溶岩の撃ち込み4 ボロスの魔除け2
 後手 in    灼熱の血3 
     out ゴブリンの先達3
 大歓楽と焼尽の猛火、灼熱の血をめぐる戦いになります。
 燃えがら蔦は「大歓楽を焼ける大歓楽」のような働きをしますが、後手では間に合っていない上にショックインが痛いので後手なら入れなくていいです。
 また、後手で1マナ速攻生物を焼尽や灼熱の血で焼かれるとテンポ損がひどいので、いっそ減らしてしまいます。

・対石鍛冶(生物主体 バント石鍛冶など)
      in   流刑への道3 灼熱の血3 渋面の溶岩使い2
    out ゴブリンの先達4 溶岩の撃ち込み4
 いかに石鍛冶を焼くかの勝負になります。
 パワー2ではほとんど地上を突破できないため先達を、生物を焼けない火力の価値が下がるため溶岩の撃ち込みを抜きます。
 
・対石鍛冶(スペル主体 青白石鍛冶など)
    先手 in   極上の炎技2 燃えがら蔦3
     out 稲妻のらせん4 焼尽の猛火1
  後手 in   極上の炎技2 燃えがら蔦3
     out 裂け目の稲妻4 焼尽の猛火1
 こちらは殴打頭蓋側を処理するゲームを目指します。
 ライフゲインが意味をなさないのでらせんは抜く候補ですが、後手では時をほぐすもの、テフェリーが間に合う可能性があるので裂け目の稲妻を抜きます。焼尽は的があるので少しだけ残します。
 
・対ストーム
       in   燃えがら蔦3 安らかなる眠り2 
    out 焼尽の猛火4 稲妻のらせん1
 一般的に有利と言われていますが、それは大歓楽をキープ、維持できた場合に限ります。
 追加の大歓楽になる燃えがら蔦を入れます。

・対ドルイドコンボ
          in    流刑への道3 灼熱の血3 渋面の溶岩使い2
     out ボロスの魔除け4 溶岩の撃ち込み4
 コンボパーツだけ潰しておけばクロックで勝てます。採用される生物も突破は容易な部類です。
 ただし、ゲイン手段や豊潤の声、シャライをシルバーバレットできるので、アタルカの命令や流刑への道はデッキ内に用意しておきましょう。

・対緑トロン
    in    流刑への道3
    out 稲妻のらせん3
 怖いのはワームとぐろエンジンだけです。突っ走りましょう。
 スラーグ牙にはしっかりアタルカの命令を当てたいところですが、アタルカの命令があるなら殴り切っていることも多いでしょう。

・対エルドラージトロン
    in    流刑への道3 燃えがら蔦3
    out 溶岩の撃ち込み4 アタルカの命令2
 現環境最大手の虚空の盃デッキです。燃えがら蔦で最低限の抵抗はしましょう。
 また、難題の予見者くらいならコンバットからボロスの魔除け二段攻撃モード、焼尽の追撃で焼けたりするので勝負を投げるのはやめましょう。

・対人間
    先手   in    流刑への道3 灼熱の血3 渋面の溶岩使い2
            out ボロスの魔除け4 溶岩の撃ち込み4
    後手   in    流刑への道3 灼熱の血3 渋面の溶岩使い2
              out  ゴブリンの先達4 溶岩の撃ち込み4
 教区の勇者、サリアの副官、カマキリの乗り手の打点要員をしっかり焼きましょう。後手では地上を越えられないことが多いので先達は抜きます。
 また、オーリオックのチャンピオンにはアタルカの命令より頭蓋割りのほう効果的ですが、流刑への道でいいと割り切りましょう。

・対GB系
       in 流刑への道3 安らかなる眠り2
    out 稲妻のらせん4 焼尽の猛火1
 重要な打点であるタルモゴイフ、回復手段も兼ねる漁る軟泥を機能停止させるための安らかなる眠りです。
 あとはハンデスが大量に飛んでくるのでテンポよく火力を投げつけることを意識しましょう。

・対ソプター
       in   燃えがら蔦3 流刑への道3 安らかなる眠り2
    out 焼尽の猛火4 稲妻のらせん4
 安らかなる眠りでソプターコンボは停止するほか、大歓楽や燃えがら蔦が強烈なアンチカードとなります。
 流刑への道は最高工匠卿、ウルザや構築物トークンピンポイントですが、生き残らせると死ぬので何が何でも除去しましょう。

・対ヴァラクート (追記)
       in   流刑への道3 
    out 焼尽の猛火3
 相手が原初のタイタンを出す前に終わらせましょう。こちらの残ライフを調節することは構成上不可能なので、攻撃あるのみです。
 相手が4マナに到達したらまず間違いなく強情なベイロスで回復を図るので、しっかりアタルカの命令を当てたいところ。


6 終わりに

  さて、ここまで長々だらだらと語ってしまいましたが、このリストは結構自信作です。MOのリーグに潜っていますが、9/1現在赤字は発生しておりません。

 皆様にもぜひアタルカの命令、燃えがら蔦を試していただければと思います。

また、質問やご意見、叱責などありましたらお気軽にお声がけください。

それではここまでありがとうございました。機会がありましたらまた記事や動画でお会いしましょう。それでは。

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