なぜバーンに石鍛冶は入らないのか――モダンにおけるバーンの優位性について

 皆様お久し振りです。舞台照夫です。
皆様は、石鍛冶の神秘家というカードをご存知ですか?
 白2マナで1/2、出たとき装備品をサーチして白2マナの起動能力で手札から装備品をタダ出しできます。モダンでは長らく禁止されてきましたが、つい最近の改定で解禁されました。引っ張ってくる装備品はもっぱら殴打頭蓋です。実質4/4絆魂警戒のサーチと踏み倒しですね。いやあ強い。

 溶岩の撃ち込みというカードをご存知ですか?
 赤1マナで本体へ3点。盤面には何も触れませんし、このカードだけで勝とうと思えば7枚もの撃ち込みが必要です。弱いですね。
 
 ところで、モダンで溶岩の撃ち込みが4枚採用されているデッキがあるらしいんですよ。バーンっていうんですけどね。これを全部石鍛冶にすればいいんじゃないですか!?色も会いますしね!装備品の枠も無理やり作って!絶対強いですよこれ!やったー!
 
 とはならないんですね。はい。当然といえば当然なのですが、その当然を突き詰めて考えたとき、バーンというデッキのすばらしさを再確認できたのです。

1 安定感が強い!

 さて、気軽に安定感なんて言ってしまいましたが、「安定感」っていったい何なんでしょう?おそらく答えは無数にあります。様々な相手に互角に戦えることもそうでしょうし、アドバンテージを得やすいこともそうかもしれません。
 バーンの求める安定感は、ずばり「再現性」です。バーンは金太郎飴デッキという話は聞いたことがあると思います。とにかく本体に当たる火力を強い順に、といった組み方がされています。
 結果、試合ごとに展開が大きく変わることもなく、直線的に相手のライフを狙うゲームが可能なのです。少なくともメイン戦で勝利するのであればほとんど同じ展開になることでしょう。
 しかし、たとえ1000000000000000000000回同じ動きが繰り返せたとしても、勝てなければ意味はありません(あくまで勝利の身を目指した場合)。そこで、次の話になります。

2 勝利プランが強い!


 MTGの勝利条件は複数ありますが、最もメジャーな結果はどちらかのライフが0になることではないでしょうか。
 バーンはそのライフ0を愚直に目指すデッキです。簡単ですね。相手が動く前、具体的には3~5ターンでの勝利を目指します
 モダンは非常にライフが粗末にされます。フェッチランドで1点払いショックランドで2点払いキャノピーランドで1点払いととにかく土地でダメージを受けます。バーンとしては20点というゴールがわざわざ近づいてきてくれることになりますから、願ったりかなったりなのです。
 「ライフを0にする」は大きなプランで、実際には「速い生物で殴りながら火力で本体を焼く」「盤面を無視して相手を焼ききる」の大きく分けて二つの小さなプランがあります。
 さて、ここで溶岩の撃ち込みと石鍛冶を比べてみましょう。
 溶岩の撃ちは本体を焼くだけです。しかし、前者のプランでも後者のプランでも安定して役割を果たすことができます。
 石鍛冶は4/4絆魂警戒をサーチして場に出すことができますが、それには2マナで場に出し召喚酔いが明けるのを待ち・・・ととても遅いのです。また、盤面を固めることはできますが相手のライフに直接干渉する術を持ちません。キルターンという点で見ると、ゲームを長引かせるためのカードである石鍛冶はデッキにふさわしくないといえます。
 石鍛冶は確かに強いカードですが、バーンの勝利プランによりマッチしているのは溶岩の撃ち込みということです。


3 対策のし辛さが強い!


 デッキには目標があり、それを押し通せば勝ちです。しかし、相手もそれを目指しています。それだけではより速いデッキ、突き詰めれば先行が勝つゲームになってしまいます。そうなっていないのは、デッキに相手を妨害手段する手段をとり、相手のプランを減速させることで自分が先に勝利条件に到達することを目指しています。
 バーンはそのプランが妨害しづらいのです。生物を並べようがそれを無視して本体を焼けます。コントロールし続けようが火力を引き続ければ勝てます。もちろんMTGはそんなに簡単なゲームではありませんが、常に最短距離の勝ち筋がのこるということは大きなアドバンテージです。
 また、メインボードから明確な対策が積まれることはほとんどありません。モダンにおいて妨害といえば生物除去がメジャーですが、そもそも勝ち筋を生物に依存しておらず、数を絞っているので相手の除去が腐ることも多いのです。バーンが最もされて嫌なことはライフゲインです。3点回復されれば稲妻1枚分の損ですからね。しかし、MTGというゲームにおいてライフゲインは効率的な勝利手段ではないのです。もちろんソウルシスターズというデッキは存在しますが、逆に言えばそこまで特化しなければ戦略として機能しないとも言えます。
 ここで再び石鍛冶に目を向けてみましょう。石鍛冶はアドバンテージを稼ぎますが、本人は耐性もない1/2です。また、バターだって回収能力があるとはいえただの生物。アーティファクト破壊にも当たってしまいます。手札で相手に腐っている除去が当たることもイメージしやすいです。
 対して溶岩の撃ち込みは、1マナで相手のライフを3点削ります。除去では対処できないので、より妨害しづらいといえるでしょう。バーンはそのようなカードの集合体なので、妨害しづらいといえるのです。


4 わかりやすい!


 バーンは難しい、あるいは簡単という話を聞いたことがあるかもしれません。その答えは私の中で出ていませんが、一つだけ言えることがあります。「バーンはわかりやすいデッキである」といことです。 
 前述の通り、バーンは金太郎飴デッキです。それはどういうことかというと、デッキの中のカードがすべて同じ方向を向いているということです。本体を焼くという一つの目標に向かって60枚のカードが一丸となっているといえるでしょう。なので、プレイの難しさはさておき、非常にプレイ方針はわかりやすくなります。
 このわかりやすさがいつ強みを発揮するかというと、時間的なロングゲームです。例えば、MOのリーグはBO3を5回戦うことになります。モダンチャレンジに参加すると8回戦とかはザラです。さらに大きな大会では複数実にわたって戦うこともあります。そんな中で、悩むことなく一直線に突き進むプランは非常にわかりやすく、思考による疲労を軽減してくれます。また、疲労がたまり切った状態でも手さえ動いていれば100点満点中60点の動きはできるのです。誰が見ても難しいデッキで疲れ切って30点のプレイをするよりはいいのではないでしょうか。
 石鍛冶を見ると、このカードは選べることが多いのです。召喚のタイミング、サーチするカード、起動のタイミング・・・などなど。それ自体は非常にいいことなのですが、石鍛冶を引くたびに思考にノイズが入るのは、ストレスと言えるかもしれません。
 対して溶岩の撃ち込みは、1マナ3点。非常にわかりやすいカードです。できることが限られている分、引いてもプランが変わることはほぼないでしょう。何も考えずに撃っても3点分の働きはしてくれるのです。

終わりに


 ここまでさんざん石鍛冶をこき下ろしてしまいましたが、石鍛冶自体はとても強いカードです。それは間違いなく言えます。不快に思った方は申し訳ありません。
 しかし、石鍛冶は明確にバーンには合わないということ、そしてモダンにおいてバーンが持つ独特の強みをご理解いただけたかと思います。
 この点はどうなんだ、これは間違っているといった感想がありましたら、お気軽にお声がけください。
 ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。それでは。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?