ナイツ・テイル in シンフォニックコンサート レポ

注)このレポでは主に堂本光一さん、井上芳雄さんについて言及します

ナイツ・テイル in シンフォニックコンサート

◆キャスト◆
堂本光一(アーサイト), 井上芳雄(パラモン)
音月桂(エミーリア), 上白石萌音(牢番の娘), 岸祐二(シーシアス), 大澄賢也(ジェロルド), 島田歌穂(ヒポリタ)
※(メインキャストのみ)(敬称略)

◆演奏◆
東京フィルハーモニー交響楽団、和楽器奏者の皆様、バンド(Dr, Gr, Bs, Key)の皆様
指揮 : 若林裕治(敬称略)

◆日付◆
2020年8月21日(金) 13:00~ 千秋楽前日 マチネ

◆会場◆
東京オペラシティ コンサートホール


ホール内には舞台上部に大きなスクリーン、映像投影部分は横長の六角形。
その下、高さが二階席くらいの位置に一列、3人の妹たちとコーラス。
舞台奥に和楽器(太鼓、三味線、尺八など)、その手前中央あたりに"The アーサイツ"(バンド紹介時の光一さんによる)。
そして東フィルさん、指揮者の若林さん。
コーラス・演奏者の皆様の前には透明な飛沫拡散防止のシート有。
東フィルさん最前列と舞台面の間のスペースにはメインキャストの皆様のイスがそれぞれ用意されており、自分の出演しないシーンでは着席。登場するシーンでは一歩前に出て歌ったりちょっと踊ったり。
席はソーシャルディスタンスをとって上手からクリオン、シーシアス、エミーリア、アーサイト、パラモン、牢番の娘、ジェロルド。クリオンとジェロルドに関しては同じ大澄さんだけど場所が変わる。
会場換気のためか少しだけ暑く感じ、演者の皆様もそれぞれのハンカチ(確認できたのは光一さんと芳雄さん)とイスの後ろにドリンクを準備していた。
衣装は、男性陣がスーツで女性陣がドレス(萌音ちゃんはワンピースに近い)。ヒポリタが赤いドレス、ジェロルドが植物の胸飾りなど2018年時の衣装や役柄からのイメージが伝わってきて嬉しい。
ex)
https://twitter.com/tanakadaisuke18/status/1293190119369789442?s=20
https://twitter.com/Licca_28/status/1293140134028693504?s=20


下手袖から登場後、剣を構え背中合わせのパラモンとアーサイトのポーズで停止。感動的だったのはカメラワークによりスクリーン上で合わせた背中がゼロ距離だったこと。
スクリーンには2018年の初演時の映像や写真が映し出された。今回ばかりは役者同士が密に触れ合うフリや演出ができないので、例えば殺陣のシーン、集まるダンスのシーンなどは当時の映像と共に理解する。各々役のまま説明や台詞が入りストーリーに忠実にセトリが組まれているので、初見でもきっと分かる。2018年に観劇されていた人は「このシーンあったな」と思い出しながら楽しむことができた。例の手枷のところとか、ジェロルド・フィロストレイトのダンスとか、踊り狂うフラヴィーナとか、映像とリンクしてその場でダンスする場面も観られた。

光一さん曰く、このコンサートは
「(2018年の本公演当時は)こんな裏話もありました。ではこの曲どうぞ〜〜〜っ!って感じ(口頭で説明してあまり演技はしない)だと思ってたけど、結構セリフ多い」
(ちなみにセトリはプログラムにあるそう。私はまだ手に入れられてません)


演者の皆様もおっしゃっていたが、東フィルさんの音が豪華。和楽器奏者の皆様も。コンサートホールなので音響設備が大変に良いこともあって、心地よさも、時には興奮も押し寄せてくる音だった。

私は光一さん、芳雄さんのご出演された舞台やコンサートに何度か入ってきた。それでも今日はいつもに増して声が通り、歌が映えていたと思う。もちろん舞台よりも歌唱中の振りが少ないから歌に集中できるというのはあるだろうが、それを差し引いても上手い。
光一さんは出したい音がパーンと当たっていた。これは私の主観だが、彼はよく険しい表情で命振り絞って体の限り歌っている感じがして、情熱が技術よりも先行して伝わってくる。言い換えれば胸を打つ、という印象。しかし此度は音の正確さや声の表現力が普段のそれより広く深く、技術も情熱も同時に届いて来てまさに“心に響く歌声”だと感じた。
芳雄さんは歌が上手いしどんな曲も器用に歌い上げるとずっと前から知っていたけれど、ナイツ・テイルの曲は彼の声や歌い方に合っていると個人的に思う。その理由は多分音域とハモり加減で、きっと私はナイツ・テイルの劇中によく出てくる、彼が高音で伸ばしたり思い切りよく突き抜けるような張り方の声を出したりする様が好きなのだ。
二人の声に関して述べれば、彼らはハモったり呼応したりするときパラモンが高音、アーサイトが低音の印象が強い。オープニングナンバー『騎士物語』の「アーサイト」「パラモン」の部分が良い例だ。深くて芯のある光一さんの低音と男声だから掠れがちかと思いきや突き抜けてくる芳雄さんの高音のバランスが気持ち良い。ユニゾン伸ばしの音程がばっちり合ったときはすがすがしかった。個々が際立って自立していてこそのハーモニーだった。


以下、覚えている限りの8/21マチネ 光一さんと芳雄さんについて雑多レポ。

【光一さん/アーサイト/フィロストレイト】
☆全体を通して光一さんの立ち姿が綺麗。舞台に立っているときの映える居方・立ち方がわかってらっしゃる。ダンスでもそうだが、指先まで使うとか胸を張り背筋は伸ばすとかそういった一つ一つが自然にできてしまうように体得済みなのだろう。

☆エミーリアに首ったけの新曲、とても良い。知的でいつもキリッとしたアーサイトの歌と言われると一瞬ピンと来ないくらい、心からの愛がダダ漏れていてアーサイト新しい一面を知ることができる。きっとパラモンの前では彼への対抗心がエミーリアへの愛同時に心の中に存在するため、あまりにもな愛おしさをさらけ出さないから一人で想う時に溢れたんだろうな…と邪推する。弱さを見せないアーサイトの印象を、良い意味で裏切ってくる一曲だった。

☆エミーリアお誕生日会で彼女を見ようとちらちら伺うフィロストレイト。様子に気づいてその前に立ちはだかり、邪魔するシーシアス。体をひねってなんとか見ようと粘るフィロストレイト、以下繰り返し。

☆エミーリアが“だってアーサイトはハンサムなんだもの!”と歌う中でハンサムという単語に反応し照れる仕草で頭をかく光一さん。

☆ステージ上の皆様(コーラスの方々や東フィルさんたち)を芳雄さんと交互に紹介される時、客席から見やすいように光一さん跪いて片膝ついた姿勢がかっこよかった。拍手を向けていたため私が気づいたときにはもうその体勢だったけれど、紹介中はアーサイト(役)じゃなくて光一さん(素)なのにめっちゃ王子やんけ…と、つい思ってしまうほど。


【芳雄さん/パラモン】
☆岸さんと戯れる芳雄さん。
鹿狩りのシーンで音に合わせてエアドラム(芳雄さん)とエアギター(岸さん)。
最後の曲(新曲)ではメインキャストが男女に分かれて(上手男性陣、下手女性陣)一列に並ぶ。そこでノリに任せ手を左右にぱたぱたさせる、恐らく即興の振り付けを一緒に楽し気にやる。ドリフターズの全員集合が分かる方は、“ばばんばばんばんばん”の振り付けをイメージしてください。

☆萌音ちゃんメイン曲の中で最初の曲(セトリが手元になく、曲名忘れちゃってすみません…)のとき、アップになった萌音ちゃん越しの芳雄さんが大層イケメンで、あわや声が出るかというほどに驚いた。普段舞台に立って演じられている顔はよく知っているけれど、同じ座組の仲間が歌う姿を座って見ている顔は知らず、真剣だけどパラモンなので脳内で密かに混乱した。私は普段オペラグラスが苦手で使わないため、こういうふとしたときの表情を見逃してしまう。普段よく見るミュージカルの舞台ではあまりスクリーンは使わないので、今回偶然見かけられてよかった。

☆パラモンの新曲、自身の行いへの後悔が溢れる一曲。物語では騎士が故に誠実さを見えないところで期待されているが、それを本人が知るでもないのにしっかり“あの(自分の)行動は誠実でない”と後悔するあたりがとても誠実さに溢れていて観客の心を掴む。芳雄さんは弾けるような明るい曲もそうだが、気持ちを押し殺しながらも心中では大きな想いが渦巻いているような少し重めの曲も上手なので、新曲はきっと多くの観客の心に残ったことだろう。かく言う私もその絞った声とアップで映し出された苦しそうな表情が頭から離れない一人である。

☆ステージ上の皆様を光一さんと交互に紹介される際、大変高身長で存在が目立ってしまうけど心優しい芳雄さんは身をかがめてその方々を全力アピール。ただそのかがめ方が“伸脚の深く(体操やストレッチ)”の体勢で、ちょっと新鮮だった。ステージ上で最大限体を縮めてくださってる…という印象。


【光一さん・芳雄さん/アーサイト・パラモン】
☆自分以外の方が出番の際はイスに座っているのだが、足は広げているか右足を上に組むアーサイト。広げもするがどちらの足でも組むパラモン。個性。

☆ストーリーの間に入るMCの始まりは2018年の初演では幕間だった(と思う)くらいのタイミング、ぬるっと入る。
アーサイトとパラモンが睨み合うところからMCにだんだん切り替わって、光一さんと芳雄さんの会話が始まる。曰く、「普段は憎み合ってないからね笑」
MCでは「(今アーサイトじゃないです)素です」と宣う光一さん。

☆森の中で逃げるパラモンに
芳雄さん「たーいへんなんだあのシーン、食べながら喋らなきゃいけなくて」
光一さん「大変なんだ、」
芳雄さん「いや!光一くんは大変じゃないよだって食べてないじゃん!」
光一さん「てへ。(低音)」&ポーズ(※)
芳雄さん「かわいい。」
~その後3回左右の足を変えて光一さんのポーズの真似を繰り返す芳雄さん。
※ちょっとおどけた印象で、友人の言葉を借りるなら大変“おしゃま”な可愛らしいポーズです。

☆MC終わりかけの頃、
光一さん「(萌音ちゃんへ)今日なんか乗ってたね、」
萌音ちゃん「乗ってました!」
光一さん「あれ、芳雄くんの案でしょ?」
萌音ちゃん「そうです笑」
芳雄さん「あっちょ、いや…」
補足すると、アドリブで何か(恐らく馬)に乗る仕草をした萌音ちゃんへ、萌音ちゃんの行動が芳雄さんから仕込みだとめざとく見抜いた光一さんが楽しそうに追及した、という話。

☆上記の会話で萌音ちゃんへ光一さんが話している時、彼のMCが長く(共犯者は芳雄さん)次のきっかけになかなか入れないとアピールする指揮者の若林さん。ジャンプして両足を指揮台にばんばん。それをみとめ、尚面白がって萌音ちゃんに振る光一さん。再度ばんばん。この繰り返しに舞台上、客席共ににこにこ。

☆アーサイトってホント馬鹿!と歌われている間、「コイツ言われてるぜ」と言わんばかりに左手親指を立てて光一さんを指す芳雄さん。それを受けちょっとだけ肩を竦め居心地悪そうにする光一さん。透けて見える主演二人の仲の良さが眼福です。

☆パラモン「(エミーリアを)俺が先に見た」
アーサイト「そんなの関係ない!」
…のくだりは有名だが、それが見事な伏線になっており、物語終盤のフラグ回収時「フラヴィーナだ!!」と言われたときのフラヴィーナのにっこにこ笑顔は国宝級である。

☆編曲とオーケストレーションをしてくださったブラッドさんの話。
初演時、まだ歌もメロはあってもアンダースコアができておらず出演者もセリフなどが完全には入っていなかった頃。稽古のため来日してピアノを使って指導してくださったそうだが、キャストが歌詞が飛んでしまったときに日本語が分からないためひたすらきっかけ(となる、最後のセリフ)を待ち続けていた、と教えてくれた。それによる緊張でまたセリフが思い出せないんだよね、と芳雄さんが笑いを誘っていた。
とても情熱的にピアノを弾くため、帝劇稽古場のピアノの弦を一本切ってしまい、それでもなお一音出ないまま弾き続けたという伝説を残す。今回も本当は来日してくださる予定だったが、コロナの関係で断念、それでもzoomで指導してくださったらしい。「(オンラインでも稽古)できるもんだね!」と光一さんは言うが結構的確に細かく歌唱指導するため、「本当にきこえたのか?笑」と芳雄さんがニヤニヤ疑う場面も。
最後のMCでは、「来年本公演ができる、できたらいいね。その時はブラッドにまた弦を切ってもらおう、今度は2本くらい。」と言い添え、明るく希望を持たせてくれた。


☆最後の曲前振り
芳雄さん「サプライズがありまして、もう一曲。新曲は計3曲で、僕ら(アーサイトとパラモン)一曲ずつとこの後の曲。これが、来年歌われるか……というところまで含めて、サプライズ!」
光一さん「せっかく覚えたのに!ってならないように笑」
芳雄「皆さん(観客)はそろそろ覚えてね!」※最後の曲はスクリーンに字幕
光一「いや、結構、(今日)初めて(観劇)の方が多いと思うけど笑」


~おまけ~
この物語の主役は自分だと主張しないのはエミーリアだけ。曰く、「あっ、私は自分が主役だとか言い出さないから安心して!?笑」
ちなみに牢番の娘、ヒポリタまでも主張する由々しき事態。
印象的なのは岸さん(シーシアス)。理由は「"きし"物語だからな!!」と高らかに宣言。
「それもう一度言ってもらってもいいですか?」と蒸し返す芳雄さん。「いやだから、きし……いいんだよ!もう!」と二度目は照れる岸さん、笑って見守る光一さん他キャストの皆さん、素敵な座組でした!


最後に。
この公演はコロナウイルスによって様々な困難や変更点があっただろう。観客側として分かることだけでも通常の1/2の席数、入場時の検温、至る所にある消毒液、演者同士が近づけない演出など沢山あった。
来年予定されている本公演がどうなるか分からないこの状況は、正直つらい。きっと明言できない作り手側もつらい。
でもジェロルドはその役に言葉を添え、‟制御できない大いなる自然の力には津波・地震などや疫病があること、それらを一度立ち止まって見つめることは決して悪いことではない”と伝えてくれた。
光一さんは、演劇が少しずつ再開しており「できているのは、本当にたくさんの方々のおかげ」とおっしゃっていた。

2018年のナイツ・テイル初演で最後に歌われた騎士物語のフレーズ「また来て できるなら」、この言葉はずっと忘れられなかった。そして私は此度見事にナイツ・テイルとの再会を果たし、この伏線回収に涙したわけである。
これだけでは終わらない。このシンフォニックコンサートの最後の曲(新曲)のドラスト衝撃の歌詞。『続編が、多分あるかも』
明言されなくてもそれで十分。希望を持って、コロナウイルスの収束を願って待ってるよ。

来年、本公演で観客席に座っていられますように。