虎になる

「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」
いつぞやの国語の教科書で読んだ言葉が最近ちらつくようになった。
恋敵を潰すための悪意のある一言が僕にもちくりと刺さってなかなか外れない。
果たして、僕は向上しているとは言えるのだろうか。
20回没にした動画の残骸は、まるで賽の河原の積み石だ。
どうせ21回目も自分で崩すんだろうなと思いつつも対して脳に負荷がかからない背景切り抜きをしている。
もっと他にやるべきことがあるだろ、脚本とか、セリフとか。

でもさぁ、しょうがないじゃないか、演出と脚本はそれぞれ担当する脳の分野が違う。
ふんわりとした脳内現象はメモ帳には現れてくれなくてそのことを見たくなくてまた切り抜きに戻るしかない、ないのだ。

積み上げてきた石が崩れていく音が聞こえる、いっそのこと鬼でもやってきて僕の一歳合切すべてをぶち壊してほしい。
全てをレモン型爆弾でぶっ飛ばして仕舞えば僕の醜い生の足掻きと共に何もかも終わる。

一度お遊びで劇場じゃない動画を出した。
そしたらコメントが5もついた、内容はそんなことやってないで劇場作れとかできないなら誰かに頼れとかそんな内容が厳しい口調で……
「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」
先生の言葉が聞こえた気がした。

ああ、でもどうすればいいんだよ、クラスでは冴えない隠キャで勉強もできない、親も貧しくてわがままは言えない。
これしか、ないんだ、僕の正解ルートは。
仮に劇場が跳ねて大物投稿者になって、現実は変わらないかもしれない、でも僕の中では変わる。
人生で一度くらいステージの真ん中に立っていたいと望んでもいいじゃないか。
目指すは初投稿からの成功、それしかない。
それだけの妄執だ。いつまで続くかわからないけど、石を崩すことになってもそれは僕だけのものなんだ。

虎になる

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