蜘蛛の糸

蜘蛛を助けた覚えはないのだけれど。

誰かに笑われているという強迫観念的な思考が、僕の頭の上を黒い雲となって覆っている。

いや、ネットの話だ たまに僕のポストにつく鍵アカウントからの引用RTの話。
ほら、君だって馬鹿にしたろ?
スマホに表示される動画編集ソフトの中のNYNとにゃんころね(どちらも僕オリジナルの特別な苗字にしているが)の目と口が曲がったお札のように歪んでいくのが見えた、気がした。
それから、いやもっと前だな あの忌々しいDMからなんだろう全てが狂っていくのは。

「最近の傲岸不遜な言動があまりにも痛痛しく目に余るのでフォロー外させていただきます
短い間でしたがありがとうございました」

ちょっとサーバ(もう爆破したけど)に入ってただけの癖して僕に一丁前に口を叩く。
初めて見た時は意味がわからなかったがすぐそれは憎悪に変わった、しかしなにぶん投稿者歴としてはあっちの方が上だ。
この界隈はそういうふうにきっとできているのだ、多分。
だからちょっとポストでお気持ちするだけに留めといた、それだけのこと。
僕が大物投稿者になった暁には思いっきりDM内容と名前を晒してやる。
空想の糸の上では僕が一番偉くって、強くって、賢い。
全部燃やしてやるよ。
そんな想像で溜飲を下げる、確かにこれは目に余るくらいは痛いかな?
にゃんころねはクスクスと答えない。

僕の作品に失敗は許されない、だからちょっとカッコつけた台詞回しやプロット以外の本筋のストーリーも妥協で終わることはあってはならない。
重たい石を背負っているようだ、ここが賽の河原ならそれが僕が積んでいく石なんだろう。

こんなことに意味はあるのか?
「知らない」
僕のこの作品はいつ完成するんだ?
「知らない」
……僕は大物投稿者になれるかな?
「まず大物投稿者って何?」

ほら、あの、なんなんだろう?
いかに大物投稿者といえど私生活で犯罪やそれに近いことをやっていれば無名より叩かれる。

でも、ほら 僕が初めて捜査官SZを見た時の興奮。
あんなすごいものを僕も作りたかったんだ、信じておくれよ!

結局それだけなのだ、僕がイキる理由は。
笑われている気がするなら笑われてもいい。

いつか見返してやるから。
お前らなんてみんな消してやるよ。

そうしてカフェイン錠剤の頭痛と戦いながら僕は背景を切り抜く作業に勤しむのであった。

いつまで? いつまでも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?