物を書いたりすることがめっきり減ってしまった。
時の流れが早く感じるようになってしまった。
夕方五時のチャイムが怖くなくなってしまった。
匂いを忘れてしまった。

皆、もう少し人類について考えてみないか。考えさせてくれやしないか。
事実、人間に向かって話したこと、群れの中で起こした行動、他の個体に対して与えた影響、人間でなくてもいい、誤って踏み潰してしまったオオイヌノフグリでも、それだけが真実なのだ。
生命を持った他の個体に認知されるまでは、それは真実でない。
廃校の教壇裏に刀で彫った爆破予告は、なんの意味も持たない。

では何故僕は夢をみるのだろうか。
事実に注視できぬほど、囚われるのだろうか。
何故言葉を交わしてもいない、只目と目が合っただけで、遠い昔に逢ったことがある気がする瞬間があるのだろうか。
僕の眼球は、事実だけを捉えているのではないのか。
否であるとしたら、僕は何を認知していたのだろうか。
あれは誰の記憶であったのか。
孤独なはずなに、何故、得体の知れぬ一体感を。多幸感を。

僕は、自分の骨を未だみたことがない。

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