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令和元年改正会社法と株主総会参考書類記載事項

改正会社法が一昨年に公布され、その施行規則が昨年公布され改正会社法の内容に具体的にどのように対応するべきかようやくクリアになってきました。本年の株主総会に瑕疵なく対応できるように整理中のところ、その内容を記事にすることにいたしました。今回は、取締役選任議案を中心に株主総会参考書類の記載事項を扱います。

1 候補者との間の補償契約・役員賠償責任に関する事項

(1)補償契約に関する事項の記載

(ア) 改正会社法において、会社と役員の補償契約に関する規律が新たに設けられました(法430条の2)。概要を記載しますと、会社と役員間で補償契約を締結する場合には株主総会の決議(取締役会設置会社では取締役会決議)によらなければならない、補償契約に基づく補償がされた場合にはその重要な事実を取締役会に報告しなければならないといった内容になります。これに伴い、改正会社法施行規則では、株主総会における役員選任議案において、補償契約に関する事項を記載事項とすることにしました(規則74条1項5号等)。

(イ) 施行規則では締結しているまたは締結を予定している補償契約についてその内容の概要を記載することを求めています。明文上は、内容の概要を記載せよというものにとどまっております。具体的に何を記載するかは、各企業に委ねられていますが、株主が当該契約の内容のうち重要な点を理解するにあたり必要な事項を記載することが求められており、補償の対象の範囲や期間、更新の有無等は記載しなければならないでしょう(パブコメ)。

(2) 役員等賠償責任保険に関する事項の記載

役員等賠償責任保険についても、補償契約と同様に、改正会社法でその規律が新設されたことに伴い、改正会社法施行規則において、株主総会における役員選任議案では補償契約に関する内容が記載事項とされました(規則74条1項6号等)。こちらも明文上は、その内容の概要を記載すべきとすることにとどめられていますが、補償契約同様に株主目線に立ち、保険における填補の対象範囲や契約期間、更新の有無やその時期といった記載をすることになるでしょう。

2 候補者と親会社等との関係に関する事項

yahooとアスクルの対立をきっかけに上場子会社における少数株主保護の議論が活性化したこと等を受け、会社法施行規則において役員候補者と親会社等との関係に関する記載事項について拡充されました。
会社は、当該候補者が親会社等の業務執行者であったことを知っている場合に過去5年間分の当該候補者の当該親会社での地位・担当について書かなければならなかったところ、これが過去10年間分まで広げられました(規則74条3項3号、74条4項7号等)。なお5年から10年に拡充されたのは、社外役員についてでもあること注意が必要です。

3 社外取締役の候補者に期待される役割に関する事項

(1)社外取締役選任議案における記載事項の追加

(ア) 会社の業務執行者から独立した客観的立場から会社経営の監督を行い、経営陣・支配株主と少数株主との利益相反の状況への監督を行う役割を期待し、改正会社法では、公開会社でかつ大会社である監査役会設置会社のうち有価証件報告書の提出義務を負う会社には、社外取締役の設置を義務付けました。こうした社外取締役がその役割を果たすことへの要請が高まる中で、役員選任議案において従前の情報提供では不十分であるとして、改正施行規則では、社外取締役候補者について「選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」も記載しなければならないこととなりました。なお、社外取締役を選任する場合に上記の記載をしなければならないのは、上場会社等だけではない点、注意が必要です。

(イ) 記載内容としては、上記したような一般的な社外取締役の期待役割(会社の業務執行者から独立した客観的立場から会社経営の監督を行い、経営陣・支配株主と少数株主との利益相反の状況への監督を行う)がまず考えられます。また、現実には、上記を上位概念として、任意の指名委員会の委員や報酬委員会の委員を務めたり、特定分野のアドバイザーを務めたりといった具体的な役割を果たしてもらうことになるところ、当該内容も記載することになると考えられます。

(2) 社外取締役を置いていない場合等の特則

上記しましたように上場会社等においては、社外取締役の選任が義務付けられたので、社外取締役を選任しない場合に「社外取締役を置くことが相当でない理由」(規則74条の2)が記載事項から削除されました。
社外役員の候補者の確保が課題となっておりますが、この傾向は引き続き継続しそうですね。

4 株式交付計画の承認に関する議案

改正会社法で株式交付制度が新設されました(下記に概要まとめております)が、これを受けて他の組織再編同様に株式交付を行う場合に株主総会参考書類に以下の内容を記載しなければならないこととなりました。
・株式交付を行う理由
・株式交付計画の内容の概要
・株式交付親会社の事前開示事項の概要

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