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デジタルプラットフォーム規制の在り方~DPF取引透明化法が成立しました~

世界ではGAFAが、国内ではリクルート、楽天、yahoo、GMOをはじめ様々な企業がデジタルプラットフォーム(DPF)を運営し様々な便利なオンラインサービスを提供しています。
他方で、昨年、食べログの評点はその飲食店がカカクコムにお金を会費を払っているか次第ではないかという疑惑が上がる等、DPFのシステムやルールが不透明であるという点が問題視されるようにもなってきました。
こうした流れの中で、2020年5月27日、いわゆるDPF取引透明化法という法律が成立することになりましたので、本記事ではそれを紹介いたします。
なお、施行は2021年春頃を予定しているようです。

1 DPF取引透明化法の適用対象

DPF取引透明化法で規制される対象は、①DPFであり②経済産業大臣が政令で指定したものとなります。なお外国事業者も対象となります。

(1)DPFとは

DPFは以下の3つの要件を満たすものを指すことになります。

・デジタル技術を用い、商品等提供利用者と一般利用者とをつなぐ場(多面市場)を提供すること
・インターネットを通じ提供していること
・ネットワーク効果(商品等提供利用者・一般利用者の増加が互いの便益を増進させ、双方の数がさらに増加する関係等)を利用したサービスであること
経産省令和2020年2月18日付プレスリリース資料より引用

ここでのポイントは一つ目の多面市場を提供するという点になります。当該プラットフォームが事業者と消費者の取引の場となることを想定しているものであり、この要件により、Googleやyahooのような検索エンジンやFacebookやTwitterといったSNSはDPF取引透明化法による規制の対象外となります。

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公正取引委員会委員長 杉本和行「デジタル・プラットフォーム企業による市場支配と競争政策」日経Biz Gateより引用

(2)経済産業大臣による指定

DPF取引透明化法制定の背景は、台頭するDPF事業者と利用者の関係において、当該プラットフォームにおけるルールやシステムの不透明さが、不公正な取引や優越的地位を濫用する温床となりかねないというものになります。すなわち、DPF取引透明化法は、新たに台頭してきたビジネスモデルにおいて独禁法を補完する役割を果たすことを期待された法であり、強者・弱者の関係を前提として規制をかけるものになります。
そのため、すべてのDPFでなく、経産省が指定する特定のDPFを対象とする規制となりました。
具体的な指定はこれからになりますが、その判断に当たっては下記のような事情が考慮されます。

・当該分野の国民生活および国民経済への影響の大きさ
・当該分野の一部のDPFへの利用の集中度合
・取引の実情等を踏まえた利用者保護の必要性
・他の規制や施策での対応の状況
・当該分野で売上高や利用者数等で一定の規模がある

デジタル市場競争会議 ワーキンググループの資料からすると、オンラインモールとアプリストアを中心に考えていると思われる。これらのトップランナーは当然対象になるのだろうが、同業ではセカンドランナー・サードランナーとどこまでが指定されるか注視しておく必要があるでしょう。また、例えば飲食店の予約プラットフォームといった上記以外のDPF運営事業者も自身の分野がどのように指定されるのかといった点を注視しておかなければならないでしょう。

2 規制の内容

規制対象となったDPFへの規律の内容は、大きく、開示規制、措置規制、監督規制になります。

(1)開示規制

DPF提供者への開示規制は、商品等提供利用者(事業者)に対するものと一般利用者(消費者)に対する開示で異なります。

ア 一般利用者への開示

DPF提供者は一般利用者に下記のような内容の開示義務を負います。
・ランキングを決定するにあたっての主要な事項
・利用者の履歴をDPF提供者が利用する場合の内容や条件等
特に一つ目においては、広告宣伝費の支払いが影響する場合はその旨を書かなければならなくなる点は、2019年の食べログの評点に関するニュースへの反響を考慮すると、影響させるかという点が重要なビジネス判断となるでしょう。なお、ランキングのロジックやアルゴリズム自体までは開示する必要はありません。

イ 商品等提供者への開示

商品等提供者への開示項目は以下のようなものになります。
・取引拒絶をする場合の判断基準
・他のサービスの利用を要請する場合、その内容や理由
・ランキングを決定するにあたっての主要な事項
・販売履歴等をDPF提供者が利用する場合の内容や条件等

加えて、契約変更や契約に無い作業要請等を行う場合や取引拒絶をする場合には、事前に通知する義務を負うことになるので特に注意が必要です。

なお、この規制への違反は、勧告・公表の対象となります。

(2)措置規制

DPF提供者は、規制対象となった場合、自主的に下記のような項目について手続・体制の整備するための必要な措置を講じる義務を負うことになります。
・商品等提供利用者に適切な対応をするための体制整備(国内管理人等の対応体制を含む)
・取引の公正さを確保するための手続や体制の整備
・紛争処理体制等の整備
具体的な内容に関しては、経済産業大臣が指針を定めますので、その発表を待つことになります。
なお、この規制への違反は、勧告・公表の対象となります。

(3)監督規制

DPF提供者は当該DPFが経済産業大臣の指定を受けた場合、毎年運用状況を報告しなければならなくなります。
報告書に記載すべき事項としては、事業概要 、情報開示の状況、運営における手続・体制の整備の状況 、紛争等の処理状況といった内容が挙げられていいます(※経産省令和2020年2月18日付プレスリリース資料)。

経済産業大臣は、この報告から運営状況を評価し、その評価結果を公表します。評価って、、、なんだかなあ。

(4)その他

経済産業大臣は、指定したDPF事業者が独禁法19条(不公正な取引方法)に違反すると認めるときは、公取委に措置請求ができることとなります。また不利益の程度等次第では措置請求が経済産業大臣の義務になります。

3 最後に

以上のとおり、大規模なオンラインモール運営事業者やアプリストア運営者は、来年以降DPF取引透明化法により、運営の透明化や公平性を実現するように情報開示や体制整備を一層強化しなければならないことになります。
なお、大規模事業者でない事業者にあっても、企業結合審査のガイドラインや個人情報の取扱いに関する資料が公取委から出されているところ、DPF取引透明化法案の対象だから安心ともいいきれず、情報開示や体制整備の努力は必要となるでしょう。


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