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令和元年改正会社法の概要~会社補償契約に関する規律~

株主総会シーズン真っ只中ですね。今年はコロナの影響で例年と異なる様相を呈しています。来年は、コロナは収束しているかもしれませんが、施行の時機次第では、改正会社法の反映の対応で昨年までと異なる対応を迫られているかもしれませんね。キャッチアップが求められます。

本日は、改正会社法の会社補償に関する規律の整備についてまとめました。

1 改正の背景

会社にとって、役員等として優秀な人材を確保し、その人材が活躍してくれることが重要になります。この点において、役員等がその職務の執行に伴う損害賠償責任を過度に怖れることによりその職務の執行が委縮することがないようにしなければなりません。

そのために、役員等が第三者等から責任追及を受けた場合に適切な防御活動をできるようにその費用を会社が負担をすることが有用で、かつ会社の損害拡大の抑止に資すると指摘されています。
そのため、改正会社法では、会社補償(※)が適切に運用されるよう会社補償に関する規定を新設しました(改正会社法430の2)。

※ 取締役等が職務執行に関して法令の規定への違反が疑われ、または責任追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用のうち通常要する費用や、第三者に生じた損害賠償責任を負う場合に、善意無重過失であるときの一定の損失について、その全部または一部を会社が補償すること

2 会社補償の範囲

補償契約の締結が認められる範囲は、防御費用(法令違反が疑われ、または責任追及に係る請求を受けたことに対処するために要する費用)の補償と第三者に対する損害賠償責任を負うことにより生じた損失(損害賠償金、和解金)の2つになります。

前者については、防御費用として通常要する費用の額を超える部分は補償されないものの、補償を受けるにあたり役員等の善意無重過失は要件とされません。

後者の損失の補償については、より要件が厳格になっており、役員等の善意無重過失が要件とされ、かつ株主代表訴訟及び会社からの請求並びに罰金や課徴金が補償の対象に入らないものとされました。

3 会社補償の手続き

改正会社法では、会社補償契約の内容の決定について取締役会決議(取締役会非設置会社では株主総会決議)が必要とされ、かつ実際に会社補償が行われた場合には遅滞なく取締役会に報告を必要とすることとしました。これは、会社補償が構造的に利益相反的であるとして利益相反取引に準ずるものと位置付けたためになります。なお、任務懈怠の推定等利益相反の規制を全て適用すると、厳格に過ぎ却って補償契約の締結を委縮させかねないとして利益相反取引に関する規律自体は適用対象外とされました。

加えて、公開会社においては、補償契約が株主にとって重要な情報であるとして、補償契約を締結しているときはこれに関する事項を事業報告に含めて開示しなければならないものとされました。内容の詳細は、法務省令に委ねられましたが、以下のような内容の開示が想定されています。
・当該役員の氏名
・補償契約の内容の概要
・役員に費用や損失を補償した場合にはその旨
・損失の補償金額等

【補足】

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