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改正個人情報保護法案の説明(仮名加工情報の新設)

2020年3月に改正個人情報保護法案が閣議決定され、国会の審議を待っております。そして個人情報保護委員会はそのウェブサイトで法案の概要をまとめております。ここでは、法案の概要をベースに仮名加工情報制度の概要とそれに伴う事業者の対応をまとめようと思います。

◆法案の概要 

法案の概要ではデータ利活用を促進するというアクセルの観点からデータ利活用に関する施策の在り方の一つとして
「イノベーションを促進する観点から、氏名等を削除した「仮名加工情報」を創設し、内部分析に限定する等を条件に、開示・利用停止請求への対応等の義務を緩和する。」
と記載しています。

◆法案概要の説明

(1) 仮名加工情報の定義
 改正法案では、仮名加工情報を以下の措置を講じて、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報と定義付けられました(改正法案2条9項)。
 ①個人情報に含まれる記述等の一部を削除又は置換
 ②個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除又は置換
 
 そしてもう一点大事な点として、仮名加工情報には個人情報である場合(改正法案35条の2)と個人情報でない場合(改正法案35条の3)があり、いずれであるかによって規律が違うということです。それぞれの規律の概要について説明いたします。

(2) 個人情報である仮名加工情報
 個人情報である仮名加工情報に関する規制は下記になります。個人情報になりますので、発想としては基本的には個人情報と同様の規制に服するものの一部緩和されていると考えると理解しやすいでしょう。
利用目的規制はあり、利用目的の特定・公表が必要となります。他方、利用目的の変更の規制については対象外とされています(※)。
第三者提供は不可となります。
安全管理措置は必要となります。「削除情報等」の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、削除情報等の安全管理のための措置を講じなければなりません。
漏えい時の報告、開示請求・利用停止請求等に対して対応する義務を負居ません。この点が事業者側のメリットの一つです。
本人識別のための他の情報との照合が禁止されます。
連絡をとるために当該仮名加工情報に含まれる連絡先その他の情報の利用が禁止されます(ダイレクトマーケティング利用の禁止)。

※ 個人情報である仮名加工情報の利用において利用目的の変更の規制を対象外(改正法案35条の2第9項)とすることの解釈について、利用目的を変更しての利用を不可と解するのか、利用目的の変更は関連性が合理的に認められる範囲に限定されるところ(法15条2項)関連性がなくても公表により変更できるようになったと解されるのか意見が分かれています。
 後者であれば、過去に収集して社内に蓄積されている個人データについて従前の利用目的にとらわれずに様々な分析に活用できるようになると考えられます。そのため、データの利活用によるイノベーションを促進するという仮名加工情報制度の新設の趣旨からしても後者の解釈が妥当と考えております。影島弁護士は後者の見解を採っておられます(※※)。

※※ 影島広泰「第9回 個人情報保護法改正の動向と、企業の実務に与える影響に注目を - 情報・セキュリティ分野(前編) 」
https://www.businesslawyers.jp/articles/723

(3)個人情報でない仮名加工情報
 個人情報でない仮名加工情報に関する規制は下記になります。個人情報でないので、発想としては原則個人情報の規制に服さないものの照合すれば個人情報となりかねないことから一部規制されていると考えると理解しやすいでしょう。
利用目的の制限はありません。
第三者提供は不可となります。
安全管理措置も必要となります。「削除情報等」の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、削除情報等の安全管理のための措置を講じなければなりません。
漏えい時の報告、開示請求・利用停止請求等に対して対応する義務を負居ません。
本人識別のための他の情報との照合は禁止されます。
連絡をとるために当該仮名加工情報に含まれる連絡先その他の情報の利用が禁止されます(ダイレクトマーケティング利用の禁止)。

◆改正法案概要に対する事業者の対応ポイント・注意点

(1) 新しく創設された制度であり、利用しなければならないというものではありませんので、これにより新たに何かをしなければならないということはありません。ビッグデータの利活用を一層進めたいと考えている事業者においては、その方法として仮名加工情報の活用が検討の対象の一つになるでしょう。

(2) 仮名加工情報には個人情報に該当するものと該当しないものがあり、それぞれ規制が異なります。もっとも、匿名加工情報が普及しなかった背景として個人情報に該当するか否かの判断が難しいという点があげられ、この点は仮名加工情報においても個人情報に該当するものとしないものがある以上、解決されておりません。後付けで違法と評価されるリスクを下げるため、悩ましいものについては個人情報に該当する仮名加工情報の利用であることを前提にした制度設計をしておくのがよいでしょう。
 また、明らかに個人情報でない仮名加工情報と判断できる場合であっても、第三者提供の禁止や安全管理措置を講じる義務は負っているので、個人情報でない仮名加工情報であるからといって管理等の負担が極端に軽減できるものではない点に注意が必要です。

【5月15日追記】
個人情報保護委員会の改正法案概要の項目ごとに説明をする電子書籍を出版しました。Kindle Unlimitedの会員は無料で読めますのでご興味のある方はぜひお試しください。


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