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令和元年改正会社法の概要~取締役の報酬に関する規律の見直し~

昨年12月に公布されました改正会社法の概要について、今回は役員報酬を扱おうと思います。法務に加え、経営企画、IR,人事等役員報酬に関する部署は業務上の影響が出ますので押さえておかれるとよいでしょう。

1 改正の概要と背景

(1)改正の背景

現行法上、株式会社の役員報酬に関する規律は、いわゆるお手盛りを防止する目的で、株式会社は指名委員会等設置会社以外、取締役の報酬等の額等について定款または株主総会の決議で定めることとされています(現行法361Ⅰ)。もちろんお手盛り防止も重要なのですが、近年、取締役の報酬について、適切な職務執行のインセンティブとして重要な機能があるとしてこの点への注目が高まってきました。

(2)改正の概要

そこで、改正会社法では、取締役の報酬について以下の4点の見直しを行いました。

①上場会社等において取締役の個人別の報酬の内容が株主総会で決定されない場合には、取締役会は、その決定方針を定めその概要等を開示しなければならないものとする。
②取締役の報酬として株式等を付与する場合の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等を加える。
③上場会社が取締役の報酬として株式を発行する場合には、出資の履行を要しないものとする。
④事業報告による情報開示を充実させる。

以下では、影響範囲が広い①について説明をします。

2 取締役の報酬等の決定方針の決定の義務化

(1)これまで報酬等の決定方針の決定については、指名委員会等設置会社の報酬委員会にのみ義務付けられていました。しかし、改正会社法では、下記の会社においても義務付けることとしその範囲を拡張しました。(改正会社法361Ⅶ)。

・監査役会設置会社(公開大会社に限る。)で、金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行株式について有価証券報告書の提出義務を負うもの。
・監査等委員会設置会社

(2)報酬等の決定方針の詳細は、法務省令で定められます。法制審議会の資料からしますと、下記のような内容が含まれることになるでしょう。

・取締役の個人別の報酬等についての報酬等の種類ごとの比率に係る決定の方針
・業績連動報酬等の有無及びその内容に係る決定の方針
・取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の方法(代表取締役に決定を再一任するかどうか等を含む。)の方針等

(3) 上記に該当する株式会社が、株主総会で報酬議案を扱うのであれば、報酬等の決定方針について少なくとも概要は説明しなければならないものとなるでしょう。
なぜならば、改正会社法第361条第4項では、確定額報酬、不確定額報酬または非金銭報酬のいずれについても議案の内容を定めもしくは改定する場合に、「相当とする理由」の説明を求めています。
そして、報酬議案において、報酬等の決定方針がその決定の基礎になるところ、「相当とする理由」を説明するに当たり報酬等の決定方針に触れないわけにはいかないためです。






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