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【アニメ紹介】ジーンシャフト

※基本的にネタバレはしないのでご安心を。


どんなアニメ?

23世紀の未来で、遺伝子調整された人類が宇宙からの脅威に立ち向かうハードSF傑作アニメ
ガニメデの遺跡から発掘された巨大人型兵器(通称シャフト)"リング"という未知の敵に対抗していく。

主な用語・設定

I.E.O.(イーオ)
地球統合機構。23世紀の地球に存在する統一政体。

人口管理局
遺伝子の管理と遺伝子操作された人類を産み出す機関。
ジーンシャフトの世界では男女が生殖行為を行い妊娠・出産するというプロセスは経ない。

レジスタ
人口管理局に属する女性で主に男性の行動を監視する役目を負う。
男女比が1:9になるように管理されている作中世界で、男性を補佐するため遺伝子操作により感情を極端に抑え、脳の副処理能力を強化している。
睡眠を必要としない。

シャフト
ガニメデの古代異星人の遺跡から発掘された巨大人型兵器。
異星人の言語によって記述されたソフトウェアによって稼働している。

リング
その名の通り直径約500kmの金色に輝く輪っか。変幻自在で神出鬼没。

オベラス
前述したリングはオベラスの端末である。太陽系の知的生命体の進化を監視してきた謎のシステム。

Sミッション
オベラスの位置と目的を解明するための極秘作戦。
主人公たちビルキスのクルーはこのミッションのために招集されている。

主な登場人物

ミカ・セイドウ
本作の主人公。遺伝子で運命づけられる世界の異端児。

ヒロト・アマギワ
戦艦ビルキスの艦長。第二の主人公といったポジション。

ベアトリーチェ・ラティオ
ヒロトの補佐を担っているレジスタ。

ソフィア・ガルガリン
ミカの友人。長い青髪の女性ではあるが背丈が異常に大きい。

マリオ・ムジカノーバ
ヒロトのバックアップでビルキスの乗艦する。男性だがレジスタがいない。

チキ・ムジカノーバ
マリオの妹。
どこか人間味に欠け、何を考えているか不明な登場人物が多い中で、見た目と行動が一致している分かりやすいキャラクター。

ドルチェ・サイトウ
人類最高のプログラマーでシャフトのOSをデバックしている。
いつも手にしている人形を介してでしかコミュニケーションを取れないやばい奴。

ここが面白い!

1.ありがちなディストピア

先に紹介した通り、23世紀の人類はI.E.O.という統一政体によって支配され、人口や男女比などは遺伝子操作によって完璧にコントロールされている管理社会なのである。面白いのが男女比は1:9が理想という設定になっているところ。
ありがちなディストピア要素をさらに補強する設定として、人類は受精段階でその人生が決まっているというコテコテなもの。
しかもこの世界の人類はライフサイクルといって、45歳を過ぎると身体能力が衰えて眠るように亡くなるのである。
ジーンシャフトの世界は我々が住まう現実世界からの地続き。
なぜ、思想信条の自由や個が尊ばれる21世紀からこのような管理社会へ変貌を遂げたのかは1話冒頭を見れば納得はせずとも分かるはず笑

2.シャフト

最初に少し触れた「シャフト」この描写がまた独特なのである。
異星人産とはいえ機械ではあるので制御するソフトウェアが存在するが、そのままでは使えないため、地球人の機械言語に翻訳されなんとか稼働している状態という未完兵器。前述したリングの襲来によって、シャフトの完成を待たずに実戦投入されているのである。
その弊害か、シャフトは戦闘中に起動すらままならなかったり、フリーズや強制停止などの数々の不具合に見舞われている。
そこでドルチェ・サイトウ率いるシャフトのOSをデバックする連中が出てくるのがだが、これが本筋とはあまり関わらないため全く必要性を感じない。
シャフトの兵器としての不完全性と完璧な23世紀の人類という意味では対比になっていて良いのだが、デバッガー軍団までわざわざ出す意味は疑問である笑
少し批判的になったが、この辺りの不必要なディティールこそハード傑作SFアニメには必要である。

3.第6話「過去からのホットライン」

いきなり6話の話をされてもと思う方のためにざっくりあらすじを。
ジーンシャフトという作品はシャフトを擁する戦艦ビルキスに乗って「Sミッション」という極秘作戦を遂行する道中を描くものである。
第6話はリングの影響で、21世紀の人類が乗ったスペースシャトルが23世紀の宇宙空間にタイムスリップしてくるところから始まる。
そして、21世紀の人類達はビルキスによって謎の漂流シャトルとして拿捕されてしまう。そう、過去と未来の人類が相まみえてしまうのである!
過去の人類はNASAのパイロットでラリィ、ジョージ、チャタの3名。
※ここで補足させて頂くと作中世界では21世紀の人類を「いたずらに資源を浪費し、環境を破壊し、さらには根拠のない主義・主張に踊らされ、闘い、殺し合って、ついに滅亡寸前まで追い込まれた」災厄の人類として忌み嫌っている。

そんな災厄の人類達をヒロト率いるビルキスのクルーは水や食料を届ける以外では接触を禁じ、隔離してしまった。
しかし、好奇心から主人公のミカとソフィアは禁じられた21世紀の人類と密かに交流を始めてしまうのである。
ラリィたち過去の人類にミカは23世紀の世界がどのようなものか打ち明ける。支配種として産み出された男性が強い権力を持っていることや、45歳を迎えるとライフサイクルによって死を迎える。そう説明するとラリィは呆れたような表情でミカの頭を軽く撫でた。

場面は変わり、シャトルの操縦席でソフィアがジョージをからかうように話しかける。操縦席に置いてあるタバコを箱から1本取り、ソフィアがそのまま咥えてみる。ジョージは「丈夫な子供が産めなくなるぞ」と一言。
しかしソフィアは「子供産む?何が?」と意外な反応。すかさずジョージが「女は子供を産むだろ」と投げかける。
「子供を作るのは政府の仕事で培養槽で産み出される」というソフィアの発言にジョージは驚愕する。その後、ジョージがソフィアにキスをしてみるも人工呼吸と勘違いする始末である。

ビジュアル的な派手さはないものの、ディストピアと化している未来の人類と我々と変わりない価値観を持つ21世紀の人物たちのギャップが巧みに描かれていて、1話で完結させるには非常に惜しいアイデアとなっている。
ジーンシャフトがハードSF傑作アニメたる所以が凝縮された回なのである。

まとめ

SFファンであれば非常に楽しめるアニメであると思う。
各話のサブタイトルも往年の名作SF小説からとられていたり、ファンであればさらに楽しめるものとなっている。SF的なお約束も交えつつ、シャフトの描写や過去と未来の人類の邂逅など、この作品にしかない魅力も多い。
まるでSF小説をそのままアニメにしたような作品であり、楽しむためにはある程度のSF的教養を求められる。おすすめというよりも一見の価値ありという作品。興味があればぜひ。



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