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もう一度マンガを描くために

漫画家のヒロユキです。
代表作は新しい順に「アホガール」「マンガ家さんとアシスタントさんと」「ドージンワーク」
この3作はすべてTVアニメ化されました。

僕がアホガールの連載を終えた2017年末、
初連載の2004年から13年間ほぼ休みなし、連載の途切れ無しでずっとマンガを描き続ける生活を続けて、そりゃーもう疲れに疲れ切っていた。

僕は割と義務感でマンガを描くことができるほうで、
稼げるうちに稼がなきゃ!っていうモチベーションで、ガンガン仕事をしてた。
無駄にプライドも高いので、つまらない回なんて一回も作ってやるものか、っていう
プライドで、毎回それはもうクオリティには妥協しないように必死に描いてた。
でもここ数年、だんだんとモチベーションを上げるのが難しくなっていて、
集中するのが難しくなっていた。
マンガを一話一話完成させていくことに対する達成感みたいな物もどんどん無くなっていて、
マンガを一本描き上げても、今回もちゃんと締め切りに間に合わせられたという
安心感しかほぼ感じてなかった。

10年以上マンガが中心で、それ以外のことはおまけみたいな生活をしていたせいで、
最終回を描いてるときなんてなんて、これを描き終わった後に、
自由な生活が待っているなんて信じられなくて、
終わったタイミングでなんか突然死とかになるんじゃないかとか思うくらい、
マンガを描かなくてもいい生活に対するリアリティが無くなってた。

とはいえ、もちろん突然死なんてせず、無事連載は完結できた。
2018年の頭から、ニートヒロユキが誕生。
もう疲れ切っていて、全くマンガなんて描きたくなかった。


そもそもなんでそんなに疲れてんのかっていうところに関しては、
まずなにより休日をもうけるのが滅茶苦茶下手だったので、(休むと、締切に間に合わなくなると恐怖、クオリティが落ちる恐怖に勝てなかった)
とにかく年中ずーっと原稿をすることが当たり前になってた。アホガールを月刊に移してからは多少休日は取っていたけど、それでもアニメが決まった後はまたずーっと働いてた。
結果的にはこれがとにかく良くなかった。

マンガを連載する=休めない
これが完全にすり込まれてて、自由になってからは、マンガをまた連載することへの恐怖心すらあった。
今も全くないとは言わないけども。

で、13年もマンガを書き続け3本もアニメ化し、コミックスもそれなりに売れると、やっぱり結構お金は入ってくる。
僕は趣味もなかったし、酒もたばこもやらない。
休みがないので、使う時間も無い。
結果、貯金はできる。もちろん貯めようとして貯めてたんだけど。死ぬまで飯を食うために。
なんにせよ溜まった。

働かないと食っていけないかどうかという問題も、僕はこれまでに30冊のコミックスを出していて、それの電子書籍の印税や、アニメなどの版権料というのが今後も定期的に入ってくるし、同人誌という収入源もある。こういうところで嘘をつくのが嫌いなので正直に言えば、本格的な連載はしなくても、倹約して変なお金の使い方をしなければ、たまにちょいちょい働いてれば恐らく死ぬまで飯は食える算段がついていた。
(一応誤解の無いように言うと、ファンボックスに関しては、生活費を稼ぐためにやってるわけではないです。単純に僕は経済活動が好きなんです。)

で。

ここで自分がそもそもなんのためにマンガ家を目指したかってところを振り返ると、
■家で漫画描いてれば良いなんてめちゃ楽そう、っていうのと、
■お金がたくさんもらえるらしい、
って言うのが多分大きかった。
■あとは自己顕示欲的なもの。
もちろんマンガが好きってのは前提で。

で、そう考えると、
お金は手に入った。
アニメ化も3本もしてもらい、一定以上の自己顕示欲は満たされた。
で、仕事的には休めて無くて、楽ではなかった。(個人事業という点では上司もいないし気楽だけど)

欲しかったお金と自己顕示欲が満たされた時に、でも忙しくて休めない、となると、ここで「じゃあなんのために俺はこんな
しんどい思いをしてるのか」ってなった。
これはなかなかしんどかった。

実をいうとアホガールの週刊連載を辞めた理由は、当時は体力の限界と言っていたけど、
実際はこんな精神状態になっていて、ハイペースでマンガを描き続けることが苦痛でしかなかったから。
(このときはまだアホガールはアニメをやってなかったけど、マガジン内でも一定以上の結果は残せたというのもあり)

この気持ちは以降ずっと大なり小なり引きずっていた。

もちろんマンガは好きだし、たくさんの人に面白いって言ってもらえるのは楽しいけど、それのため「だけ」に、己の命や精神を削ってまで描こうとか、そういう気持ちは正直持って無くて。
(実際問題そこまでできるひとはほとんどいないと思うけど)

でもありがたいことで、次の連載、特に週刊連載を編集さんからお願いされることもあって、それに答えたい気持ちもあった。

でも、週刊連載はやっぱり体力的にも精神的にもハードなので、
それを乗り越えてまで「やりたい」という理由が絶対に必要になる。
「なんでこんなしんどいことやるんだ」では絶対に続かない。

でも僕以上にはるかに売れてる人の中には、ずっとマンガを描き続けている人たちがいる。僕はその人たちが不思議で仕方なかった。

だから、そんな風に連載を続ける人たちに、なぜそんなに売れてるのに、いまだにずっとマンガを大量に描き続けるのか、を聞いたりした。
答えはほぼ「漫画描くのが一番楽しい」だった。

正直意味不明だった。
いやだってそうは言っても疲れるししんどいでしょ、って。
いくらでもお金あるんだしバカンスとか遊んだりしないのかって思うし。
でも、「1週間も休むとやること無くなる」って言われて、
いやあるでしょ!
と思いつつ、そういうもんかーと。

僕の場合は、アホガールの連載が終わって、1週間どころか、一ヶ月二カ月経っても、
「いくらでも休んでいられるわ…」という感じで。
この辺が真のマンガ家の人との差なのかなーとか思ったりもした。

やっぱお金とか不純な目的ではじめるとこういうところで差が出るのかなーみたいな。

とか思いつつも、色んな人に話を聞いてると、
実は長くマンガを続けてる人は、結構定期的に(というか、基本毎週)
休日を取っていることがわかった。

週に一日二日休むのは、なんか重要そうな気がしたので、もし次連載することがあったら、
週休二日は絶対条件にしようと思った。
それができる体制づくりが目標になった。

とはいえ、じゃあそもそもなんのためにマンガを描くのか。
お金と自己顕示欲はある程度満たされた。
いくら週休二日でも、描く必要が無ければ描けない。


連載をしてないと、自然と飲み会とかに行く機会も増えた。
で、飲み会に行くと、当然だけど僕の知り合いはほぼマンガ家なので、マンガ家の人に会うことになる。
彼らは連載をしている。
僕はしていない。

連載を終わって半年くらいは特に何も思わなかった。
次いつ連載するんですか?って聞かれても、いやいやもうちょい休みますよーって感じ。
でも一年近く経ってくると、段々気まずくなってきた。
そ…そろそろ描きますんで! みたいなことも言い始める。

この気まずさはなんだろうと考えてみると
単純に周りからの評価を気にしてるのかなーという感じ。
こいつもうマンガ描かずに毎日だらだらしたいんだな、とか思われると、失望されて距離取られるのかなーとか。
それは結構イヤだなぁ。
マガジンで週刊連載をしてたとき、後半になればなるほど、とにかく孤独感が強くなっていって、当時はあんまりマガジン内にも知り合いがいなくて、とてもきつかったので、
せっかく長年マンガ頑張ってきてできたマンガ家仲間的な人たちとは、できれば今後も仲良くしたい。
彼らと並ぶにはマンガを描いてないといけない。(実際にその人たちがどう思ってるかは置いといて、自分的に描いてないのに同業者面してるのがなんかイヤなので)

じゃあ描こう。

そんな感じで1個描く理由はできた。

でも描く理由はもっと欲しい。
多い方が頑張りやすい。


その頃、ちょいちょいユーチューブを見てたら、HIKAKINがめちゃ高い腕時計をしていることを知った。
ロレックスのプラチナ製のデイトナ(という名前の時計)、お値段800万円。
まじか。

時計…。
そういえば僕も腕時計はちょっと好きで、ちょい高いくらいの時計は2つ持ってたけど、
ロレックスはザ・高級時計というイメージで、買おうと思ったことなかった。

あ。

………お金がマンガを描く理由の一つだったのなら、お金を使えば良いのでは?


正確には、お金を使うとどんな気持ちになるのか知って、それが楽しいなら、お金を使うこともモチベーションになり得るかもしれない。
当然、使うためには稼がないといけないので。
(それまでは、お金を貯めることをモチベーションにしていたから仕事関係以外の個人的な買い物なんてほとんどしなかったし、貯金そのものには何か楽しさがあるわけでは無く、老後への義務感のみでやっていた)


そう思ったのが約1年前。
早速実行してみた。

今まで必死に働いてきたお金を使うのはめちゃくちゃ勇気が必要だったけど、
頑張って使ってみた。

はじめてハワイにも行ってみたりした。
使ったら満足感が高そうな物にはお金を使ってみるようにしてみた。
ロレックスも買ってみた。カッコ良かった。

結果。

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は…働かないと!!!!!
新連載頑張ります!!!!!!!!


そんな感じで、人生色々ありますね。
最後どうしてもオチを付けたくなってしまうのが良くない気もしますが、書いてあることは本当です。
時計沼がヤバイのも本当です。

とはいえお金使うことをモチベーションの一つにすると、どっかでまた壁はありそうですが、その時はその時でまた考えればいいかな、というところもありますが、
一応もう一つ、マンガを描くことそのものを楽しめるようになることも一つ目標としているので、そのあたりも頑張ってクリアできたらな、と思ってます。(案はある)

あと、多分僕は短期的な楽しさを感じる能力がめちゃくちゃ低いんだろうなって思いますね。
いつも中長期的な目標ばっかりたててるんで、そんなの年に1回も達成できないことばっかで。
だからお酒飲んで楽しそうにしてる人とか見るとめちゃくちゃ羨ましい(笑
飯にもそこまで興味ないし!
そういうのがあればもっとやりやすかったのになーってよく思う。
毎日働いたあとになんか良いことあるとか。
その辺も色々考えていきたいですね。


また面白いマンガを描けるように頑張ろうと思います。


というわけで、僕が漫画描きたくない状態から、もう一度連載しよう、と思うまでの話でした。


Twitterで短文でかいつまんで文章書くと、なんか雑な感じになって
結果として誰も得しない感じになってるような気がしたので、
若林君https://note.mu/wakabayashi_noteの真似をしてダラダラと書いてみました。

最後まで読んでくださった方ありがとうございます!

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コメント (6)
これをアニメ化して下さいw超絶リアルで人間味が溢れ過ぎてて面白いですw
いや、もしかしたら「マンガ家さんとアシスタントさんと」の主人公の追い詰められ具合と、壊れ具合はご自身の体験談・・・・つまりパンティーを・・・!?!?w
ドージンワークのなじみもお金目的だったなあと思い出しました(笑)。マイペースで無理せず描いてくださいね。そういえばかねるちゃんはメジャーデビューできたのかなあ…(笑)
金あまってたらボクに投資してくださいよー笑
すごい・・・これだけ売れて、漫画家としてプロの域にいっても、書きたくなくなることあるんですね。私も似たようなものですが(一瞬しかプロやってませんが)
お金を稼ぎたいのは、ひとつのモチベだと思います。が、いずれ社会福祉や貢献、大変な人にお金を少し使って助けてあげる活動などしはじめたら、自分がお金を稼ぐ意味を感じるかも知れません。漫画家さん全員が、漫画超好きで死ぬまで描かなくてもいいと思いますよ。お金を使って別の業界に投資したり、行ってもいいだろうし。
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