【高額技命名師青木のコスパがすごすぎた件について】 逆噴射ボツ作品
この先の敵はより強力な技を駆使しないと苦しいだろうと思い、今までより給料の高い技命名師を雇った。支出の増加は苦しいところだが、より多く稼げるようになればこの出費も投資と呼べるようになる。
近郊の山で手頃なモンスターを相手に技を実践し、技命名師の青木が微調整しながら技名を整えていく。俺は目の前の巨大な食蟻獣に、剣を回転させてうねるように投げつけた。
「サンダーソード!」青木が技名を叫ぶものの、共鳴が足りないのか大した威力は出なかった。
「まあ悪くないけどもうちょっとカッコええのないん?こうさ、バシーっと剣が突き刺さっていくような技の名前叫んで決着つけたいやん?ほら、俺こう見えてもけっこうやる時はやるってキャラっていうかさ」
回転から生まれた振動が食蟻獣の化け物を震わせる。
「あ!あれ見てください!」青木が空を指差した。
「あれって何よ。どこ?」
「あれですよあれ!あの雲の横の!」
「曇ってどれよ。ほら、空って雲が沢山あるやん。人の夢の数だけ浮かぶらしいやん。ほら、俺ってこう見えてもけっこうロマンチックなとこ」
青木が遮る。
「あのおっきな雲の横!あれ黒龍ですよ!」
確かにそれはものすごい勢いで迫ってきていた。
「えーっ!ほんまやあれごっついヤツやがな!どないしよ!技の名前はよ決めな!ほら、俺ってこう見えても事前準備とか大事にするタイプやん?」
「あ、技名が降りてきました。今書きます」
青木が地面に木の棒で技名を綴った。
「アホか!こんな技名があるか!」
「勇者様!もう間に合いません!さあ早く例の技を!」
黒龍の爪が黒い炎を撒き散らしながら向かってきた。俺は剣を回転させ、まっすぐ黒龍に投げつけた。その剣は光を帯びて黒龍に突き刺さり、強く振動させながら空の雲を突き抜けていった。
「今です!技名を!技の効力が消えてしまいます!」
俺は覚悟を決めた。これが俺の伝説の始まりのきっかけとなるとも知らずに。
【続く】
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