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【オレンジの渡り鳥】 ポエム

「行くの?」

風が吹いている。ほんの二週間前まで青々としていた街路樹から葉が落ちる気配を感じ始めた頃の雨。その雨の降るたびの季節の変化に手を伸ばして鳥たちにキスをする。

魔法なんてなかったしあるとも思ってなかったけどあなたは当然の如く何も残さないままこの場所から違うどこかを眺めていて、それは私にも行ける場所、でも私の行くことはできない場所。

気球に乗る。気球に乗れればいい。

気球に乗って渡り鳥に手を振るの。

ピーナッツ・バター。塗った場所のトースト。へこんで繊維がほつれて焼けた小麦の香りが香ばしい。ピーナッツの脂が熱で溶けて世界の朝はオレンジ色に、オレンジ色に吐き出された蒸気が空を風を染めていく。

そんな朝に手紙を書いた。わたしはわたしの手で気球に結ぶ紐を結って。

気球に乗って渡り鳥に手を振るの。まだ明日の空の色なんて見てないからわからないの。



本日も【スナック・クリオネ】にお越しいただいき、ありがとうございます。 席料、乾き物、氷、水道水、全て有料でございます(うふふッ) またのご来店、お待ちしております。